易リサイクルを実現する温度応答水溶性ポリマーの開発

高分子・リサイクル

大量生産・大量消費により、多くの人々が豊かな暮らせる社会となりました。その一方で、大量の廃棄物による地球規模での環境問題が生じており、リサイクルによる循環型社会への移行が提唱されています。
プラスチック包装容器は、印刷により彩られ、製品を守るためにさまざまな異種素材から成る多層構造をとっています。プラスチック包装容器をそのままリサイクルすると、インク成分やその熱分解物あるいは多種素材の混在により、リサイクル材の強度低下や安全性に課題が生じてしまいます。

花王では、多種の素材を分離し、容易にリサイクルを可能とする1つのアプローチとして温度応答水溶性ポリマーの開発を行っています。温度応答水溶性ポリマーは、親疎水の制御により、常温水には溶けずに温水にのみ溶ける設計になっています。このポリマーをインクあるいは多層構造の層間に導入することで、使用時には水や湿度の影響なく製品を使え、リサイクル時には温水でインクや多層構造を容易に分離できると考えています。
私たちは、この温度応答水溶性ポリマーを用いた易リサイクル技術の社会実装に挑戦しています。

市販品の水溶性ポリマーと開発品の温度応答水溶性ポリマーにおける各水温によるポリマー溶解速度を比較。市販品の水溶性ポリマーは水温30℃でも徐々に溶解するのに対し、開発品の温度応答水溶性ポリマーは水温30℃では溶解せず、50℃付近から徐々に溶解し、60℃を超えると急速に溶解する挙動を示す。

水温による溶解挙動の比較

温度応答水溶性ポリマーによる応用事例

次の動画には音声がありません。動画の映像情報を書き起こしたテキストを用意しています。

動画のテキスト版はこちら

この動画は、温度応答水溶性ポリマーを使用した印刷サンプルを水に浸漬し、30℃水と70℃水における印刷インクの脱離の様子について比較しています。

PETフィルム上に温度応答水溶性ポリマー、さらにその上からインクが印刷されているサンプルフィルムの構成図が映し出されている。

左右にガラス瓶に入った水がそれぞれ映し出されており、左は30℃、右は70℃の水となっている。左右それぞれの水に、サンプルフィルムを同時に浸漬させる。

00:04
右70℃水では、浸漬直後にフィルムから印刷インクがすばやく脱離。

00:09
左30℃水では、浸漬10分後でも印刷インクに変化なし。

00:24
左右のサンプルを水から取り出し、それぞれのサンプルの印刷が映し出されている。
左の30℃水に浸漬後では印刷が維持されたフィルムが、右の70℃水に浸漬後では印刷のない透明なフィルムが映し出されている。

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