デジタル用印字材料
レーザープリンターでは、トナーを熱や圧力によってとかし、用紙に定着させることで印刷を行います。
トナーの定着にはエネルギーの消費が大きく、環境負荷低減の観点から低温での定着化技術が求められていました。しかし、低温定着が可能なトナーは輸送・保管時の熱でトナー同士が凝集・融着してしまうため、耐熱保存性を維持することが困難でした。
花王はこれまで、熱応答性の高い結晶性材料を独自開発し、トナー中に10~100nm程度で微分散させることにより、印刷時のCO2排出量を低減できる“低温定着トナー”を開発しました(図1)。
図1
さらに、低温定着トナーの技術に、独自の界面制御技術を組み合わせることで、100℃以下という大幅な低温定着化*1 が可能な、カプセル型のトナー『LUNATONETM』を開発しました(図2)。
図2
LUNATONETMでは、印刷時に使用するトナー由来のCO2排出量を従来に比べて40%削減*2 し、これまで印刷が困難だったラベルやパッケージなどの熱に弱いフィルムへの印刷も可能となりました(図3)。
図3
また、通常のトナーよりも熱応答速度が速いため、瞬時にぬれ広がって印刷面を覆うことで、少ないトナー量でも従来と同濃度の印刷ができ、トナー使用量を大幅に低減できます。
花王は高分子技術および界面制御技術を深化させることで、環境への負荷低減と機能性を両立する商品づくりを進めていきます。
なお、本研究内容に関しては、一般社団法人日本化学工業協会第53回(2020年度)日化協技術賞「環境技術賞」を受賞しました。