毛髪科学
日本における薄毛や抜け毛で悩んでいる人は約800万人、その中で育毛剤を使用している人は約560万人程度と言われていますが、一般的に見られる男性型脱毛や女性の薄毛の発症要因はいまだ不明な部分が多くあります。
毛の組織では、毛母細胞が盛んに分裂を繰り返すことにより毛幹を生成していますが、その増殖活性を制御しているのが毛乳頭です。
そこで花王は、生体の毛組織から毛母細胞と毛乳頭を取り出し、両者を共存培養する手法を確立しました。多くの天然物からのスクリーニングから、毛母細胞の増殖を高めて毛成長を促進させる効果のある西洋オトギリ草エキスを見いだしました。
さらに、西洋オトギリ草エキス中の有効成分であるアスチルビンを単離・同定し、その成分をリード化合物として、新しい育毛有効成分「t‐フラバノン」を開発しました。これは、毛髪を太く長くし、抜けにくくすることにより、男性型脱毛のみならず女性の薄毛に対しても高い有効性が示されました。
最近では、毛包組織を構成する細胞分化の制御機構を研究するため、iPS細胞を用いています。これら研究は、公的に定められた運用基準に則り実施され、決して胚性幹細胞は用いていません。
このように、基礎的研究から見いだされた作用機序をより明確にすることによって、新たな育毛メカニズムや美髪理論を提案していきます。
今後も、この分野での研究を深化させ、より効果の高い育毛剤開発やグローバルに通じる美髪剤開発へと結実させていきます。
西洋オトギリ草エキス中の有効成分アスチルビンからの育毛有効成分「t‐フラバノン」の開発