新型コロナウイルスの基礎情報

新型コロナウイルスの特徴

新型コロナウイルスに関する構造や特徴、
ヒトに感染するコロナウイルスの種類などの情報をまとめています。

新型コロナウイルスの構造と特徴

現在、世界中で流行が拡大している新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019: COVID-19)。その原因となるのが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)です。SARS-CoV-2を含むコロナウイルスは、外側を脂質膜(エンベロープ)で覆っているエンベロープウイルスです。ウイルスのゲノムはRNAで、約3万塩基を有し、RNAのゲノムを持つウイルスの中でも最長です。ウイルス粒子は直径約100-200nmで、S(スパイク)、M(マトリックス)、E(エンベロープ)という3つの要素とRNAで構成されています(fig.1)(ref.1,2)。

fig.1:新型コロナウイルス(SARSーCoV-2)

図1 新型コロナウイルス(サーズコブツー)の模式図。 ウイルスの球体と断面の模式図。ウイルスの構造を示すための、スパイク、マトリックス、エンベロープを模式的に表示

エンベロープにある突起が王冠(ギリシア語でコロナ)のように見える。
SARSの病原体(SARS-CoV-1)と同様にACE2を受容体としてヒト細胞に侵入する。環境表面での感染能保持時間は、SARS-CoV-1や既知のヒトコロナウイルスとほぼ同等である(ref.3)。

ウイルスは人の細胞の受容体から侵入

ウイルスは、相手に感染しようとするとき、その相手の細胞のとっかかりのようなもの(受容体)を見つけて、結合してから細胞に入り込みます。ウイルスの側で、その受容体と結合するのはSタンパク質です。Sタンパク質が鍵ならば、細胞の受容体が鍵穴になります。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、一般的な風邪を引き起こすヒトコロナウイルス229E、OC43、NL63、HKU-1の4種類と、2002年に中国・広東省を起点とし8,000人以上に重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたSARSコロナウイルス、2012年にサウジアラビアを起点として2,000人以上に中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こしたMERSコロナウイルスの2種類が知られていました。今回見つかったSARS-CoV-2は、ゲノムの相同性が約80%とSARSコロナウイルスに近く、SARSコロナウイルスと同じ受容体(ACE2)を使ってヒトの細胞に吸着・侵入することが最近の研究で報告されました(ref.1, 2, 5, 6, 7)。

ヒト以外にも感染するコロナウイルス

ヒト以外にもイヌやネコ、ブタなどに感染するコロナウイルスも存在します。
2002年のSARSはもともとコウモリを宿主としていたコロナウイルスがハクビシンを介してヒトに感染し、SARSコロナウイルスとしてヒト-ヒト感染を引き起こしたと考えられています。また、2012年のMERSはヒトコブラクダを宿主としていたからコロナウイルスがヒトに感染することによって引き起こされたとされています。2019年の新型コロナウイルスも同様に、元々ヒト以外の動物を宿主としていたと考えられています。

SARS-CoV-2は動物由来

SARS-CoV-2は、SARSやMERSの病原体と同じβコロナウイルスに分類されます。自然宿主の動物種はまだ確定していないものの、他のコロナウイルスと同様にコウモリを起源として他の哺乳動物を介してヒトに伝播したものと考えられています(fig.2)。現在はヒト-ヒト感染によって流行が世界的に広がっている状況です。SARS-CoV-2による感染症はCOVID-19(感染症法では新型コロナウイルス感染症)と呼ばれています(ref.1, 2, 3)。

自然宿主としてのコウモリ

コロナウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、など人獣共通感染症として知られる多くのウイルスは、コウモリが宿主であることが知られています。コウモリはヒトと同じ哺乳動物であり、寿命が5-50年と長く、ウイルスが存続するのに適していると報告されています。
コウモリは集団で生活するため、ウイルスは集団内で伝播しやすく、また1日に20kmも飛び回るため、ウイルスの運び屋になります。飛翔時には高い基礎代謝を発揮するため、コウモリは哺乳動物のなかでも疾患耐性が高いと考えられ、そのためウイルスに感染していても発症しにくく、多種多様なウイルスの自然宿主となっているのです(ref.2)。

fig.2:人獣共通感染症としてのコロナウイルス

INTERNATIONAL JOURNAL OF Molecular medicine 45: 1631-1643, 2020

Reference

  • 1)
    日本ウイルス学会「新型コロナウイルス感染症について」http://jsv.umin.jp/news/news200210.html
  • 2)
    横畑綾治,石田悠記,西尾正也,山本哲司,森卓也,鈴木不律,蓮見基充,岡野哲也,森本拓也,藤井健吉(2020)接触感染経路のリスク制御に向けた新型ウイルス除染機序の科学的基盤~コロナウイルス,インフルエンザウイルスを不活性化する化学物質群のシステマティックレビュー~,リスク学研究 30(1): 1–24
  • 3)
    Cui, J., Li, F., Shi, Z.L. Origin and evolution of pathogenic coronaviruses. Nat. Rev. Microbiol. 2019. 17181-192
  • 4)
    Doremalen VN, et al. Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med 2020.
  • 5)
    Jian S, et al. Nature. 2020 Mar 30. 581:221-224
  • 6)
    Wang Q, et al. Cell. 2020 Apr 9. 181:894-904.e9
  • 7)
    Yan R, et al. Science. 2020 Mar 4, 367:1444-1448
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