持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献に悪影響を与えるリスクとして、特に重要な14の「主要リスク*1 」を、リスク・危機管理委員会で検討し、経営会議で決定しています。また、少なくとも半期に一度、その時の事業環境の変化を踏まえた主要リスクの見直し(追加等の検討)を行っています。
「主要リスク」は、主管部門が対策方針を策定し、進捗管理を行っています。なお、主要リスクの詳細は、有価証券報告書に開示しています。
中期経営計画「K27」の達成を阻害する重要リスク並びに対応上の課題を、現場視点の「リスク調査」、経営視点の「経営幹部ヒアリング」、および「外部環境の分析」から把握・評価しています。主要リスクの中で、経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクを「コーポレートリスク」としてテーマを決めて取り組んでいます。コーポレートリスクは、年1回、社内リスク調査の結果分析、外部環境の分析、経営幹部ヒアリングをもとに、リスク・危機管理委員会で検討を行い、経営会議でリスクテーマとリスクオーナー(各リスクテーマの責任者:執行役員)を決定しています。リスクオーナーは対策チームを立ち上げて、対応計画の策定、リスクのモニタリング、ならびにリスク顕在化時の対応を実施しています。
リスク・危機管理委員会で対応策の実効性の審議と進捗管理を行い、毎年、経営会議でテーマの見直しを行っています。新しいコーポレートリスクの検討や、重点的に取り組むべき内容の変更も行い、継続的に対応を強化しています。対応が一定の成果を上げたコーポレートリスクについては、主管部門などによる日常的な管理体制へと移行します。

“リスク調査”
日本の各部門と子会社並びにアジア・欧米の子会社を対象に『花王グループ中期経営計画(K27)の達成を阻害するリスク』に関する「リスク調査」を実施し、現場の視点から、重要リスクとその対応上の課題を抽出しています。リスク調査で上がってくるリスク数は数百に及びますが、内容を分析・評価し、現場で対応できているものなどは現場対応とし、組織横断的なリスクなど全社で対応すべきリスクについては、主管部門と連携した対応の強化を推進しています。
“外部環境の分析”
国際情勢、事業環境、社会課題など変化が激しく、複雑化・多様化するリスクに対して、社内外の専門家と連携しながら、継続的に分析しています。また、世界のシンクタンクのリスクに関するレポートも参考に分析を進めています。
“経営幹部ヒアリング”
“リスク調査・結果分析”と“外部環境の分析”をもとに、経営会議メンバーなどに対してヒアリングを実施し、経営の視点から花王グループにとっての重要リスクや、対応を強化すべきリスクについて議論を深めています。現場で抽出されたリスクや課題に対して、経営としての優先順位や戦略的な視点を加えた議論を行うことで、現場と経営のリスク認識をすり合わせています。
このように「現場」と「経営」が一体となってERMを進めています。
| テーマ | リスク内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 大地震・自然災害・BCP対応 |
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| サイバー攻撃対応 |
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| 人財確保対応 |
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| 地政学リスク対応 |
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| レピュテーションリスク対応 |
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| パンデミック対応 |
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| 重大品質問題対応 |
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花王では、新しいリスク、意思決定に必要な情報や知識が不足しているリスクであり、将来的に経営へ大きな影響を与える可能性があるリスクを「エマージングリスク」と定義しています。
このようなエマージングリスクを早期に把握し対応するため、毎年、エマージングリスクの洗い出しを行っています。
エマージングリスクの早期の洗い出しと対応には、リスクインテリジェンス*4 の強化が欠かせません。リスクインテリジェンスの強化に向けて、リスクへの洞察力(経験だけに頼らず、変化の兆しを捉えて先を読む力)を高めるために、多様な社外専門家との連携を進めるとともに、シナリオプランニング(将来の不確実な状況を想定し、対応を考える思考プロセス)の強化を進めています。

また、大地震・自然災害や地政学リスクなどのコーポレートリスクに対しては、実際の緊急事態対応を踏まえたBCM(事業継続マネジメント)を実行するとともに、長期供給停止を想定したシミュレーションと訓練によりシナリオプランニングを強化し、より具体的な備えと迅速な対応の強化を図っています。

花王は、パーム由来原料や紙・パルプなどの自然由来資源をグローバルに調達しており、これらは多段階のサプライチェーンを通じて供給されています。近年、これらの原材料調達に関しては、人権や環境への配慮に関する要求に加え、それらを取り巻く制度や規制環境が急速に変化しています。
特に、原材料調達に関する規制や要求事項は、国・地域ごとに異なる形で導入や改訂が進んでおり、その適用範囲や解釈、運用の具体像については継続的に更新される傾向にあります。このような状況においては、企業が対応すべき基準や要件の全体像を事前に確定することが難しく、適合の判断や対応の優先順位付けに不確実性が伴います。
さらに、制度やガイドラインの更新に伴い、調達オペレーションの複雑性やコストの増加、供給網の制約などを通じて、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
このような状況から、規制環境の変動性および不確実性の高まりをエマージングリスクとして認識し、以下の主な取り組みを通じて推進しています。
近年、AIなどを活用したサイバー攻撃が多様化・巧妙化し、ランサムウェアによる事業停止が数カ月に及ぶ深刻な被害事例が確認されています。サプライチェーンの複雑化に伴い、対策が手薄な海外拠点やお取引先を経由した攻撃が増加しており、個社だけでは防ぎきれない構造的なリスクとなっています。また、工場や物流拠点においても制御系ネットワークのデジタル化や外部接続が進み、新たな侵入経路が生まれています。
サイバー攻撃による工場の操業停止やお取引先のシステム障害は、製品供給の滞りや事業活動の中断を招き、業績や事業継続性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。多層的な防御策を講じたうえで、被害を受けた際にいかに早く事業を復旧できるかを重視し、万一の侵入に備えた迅速な復旧体制の構築にも注力しています。
こうした背景のもと、本リスクをエマージングリスクとして認識し、以下の主な取り組みを通じて推進しています。
なお、サイバー攻撃リスクへの対応は、コーポレートリスクとして取り組んでいます。
花王が事業展開している欧州や東アジアにおいて、地政学リスクの高い状態が続いています。また、原材料を調達している国・地域においても、今後リスクが高まる可能性があります。
政治的・社会的情勢の不安定化や外交関係の緊迫化などにより、事業を取り巻く環境が悪化し、人的被害の発生、サプライチェーンの寸断による操業の一時停止、生活者の購買行動の変化が発生した場合、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。
このような状況から、地政学リスクをエマージングリスクとして認識し、地政学リスクが高まっている国・地域を対象にリスクシナリオを作成し、必要に応じた対応体制の整備、政治的・社会的状況をモニタリングしています。社員の安全確保に関するガイドラインを策定すると共に、サプライチェーンネットワークの強化に取り組んでいます。なお、地政学リスクへの対応は、コーポレートリスクとして取り組んでいます。
これらの取り組みにより、グローバルな視点で早期のリスク特定と対応をめざしています。
生成AIおよびAI検索の浸透により、生活者と企業・ブランドとのデジタルコミュニケーションは大きな転換期を迎えています。
従来、花王は自社のWebサイトやSNSなどを通じて、製品・サービスへの理解促進や生活者体験の向上、価値共創に取り組んできました。これらは、「よきモノづくり」によって生み出した価値を正しく届ける基盤として機能しています。
一方で、AI検索や生成AIによる回答が主要な情報接点となる中、生活者の意思決定プロセスは変化しています。この環境下において、花王の情報やブランド価値がAIに適切に認識・参照されない場合、生活者に正確な情報が届かない、価値が十分に伝わらない、あるいは誤った文脈で理解されるリスクがあり、事業価値の毀損につながる可能性があります。また、AIが生成・流通させる情報におけるプライバシーの侵害や、いわゆる「ディープフェイク」に代表される虚偽情報のリスクについても、重要な課題として認識しています。
一方、この変化は同時に競争優位を高める機会でもあります。花王が蓄積してきた科学的知見、製品技術、品質・安全性情報、生活者研究、相談対応やブランドコンテンツなどの情報資産を、生活者およびAI双方にとって理解しやすい形へ整備することが、差別化の源泉となります。
これらの認識に基づき、本リスクをエマージングリスクに位置づけ、下記の対応を進めています。
生成AIが生活者に浸透する時代においても、信頼性の高い情報資産と生活者理解を基盤に、選ばれ続けるブランドづくりを推進していきます。