リスク管理活動

主要リスクへの対応

持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献に悪影響を与えるとして、特に重要な14項目を「主要リスク*1 」としてリスク・危機管理委員会で検討し、経営会議で決定しています。また、少なくとも半期に一度、その時の事業環境の変化を踏まえた主要リスクの見直し(追加等の検討)を行っています。
「主要リスク」は、主管部門が対策方針を策定し、進捗管理を行っています。なお、主要リスクの詳細は、有価証券報告書に開示しています。

コーポレートリスクへの取り組み

中期経営計画「K27」の達成を阻害する重要リスク並びに対応上の課題を、現場視点の「リスク調査」、経営視点の「経営幹部ヒアリング」、および「外部環境の分析」から把握・評価しています。なかでも、特に経営への影響が大きく、対応強化すべき重要リスクを「コーポレートリスク」と定めています。これらのリスクについては、リスク・危機管理委員会でテーマを検討し、経営会議においてリスクテーマとリスクオーナー(責任者である執行役員)を決定しています。その後、対策チームを立ち上げ取り組んでいます。
リスク・危機管理委員会で対応策の実効性の審議と進捗管理を行い、毎年、経営会議でテーマの見直しを行っています。新しいコーポレートリスクの検討や、重点的に取り組むべき内容の変更も行い、継続的に対応を強化しています。対応が一定の成果を上げたコーポレートリスクについては、主管部門などによる日常的な管理体制へと移行します。

年間を通じて3段階で実施している、コーポレートリスクの取り組みプロセスを示した図。1月から8月にはリスク調査や外部環境の分析を実施し、9月から10月には経営幹部ヒアリングを経た重要リスクと対応課題の評価を実施。11月から12月にはコーポレートリスクの検討と決定、年次報告によるテーマの見直しを実施している。

“リスク調査”
日本の各部門と子会社並びにアジア・欧米の子会社を対象に『花王グループ中期経営計画(K27)の達成を阻害するリスク』に関する「リスク調査」を実施し、現場の視点から、重要リスクとその対応上の課題を抽出しています。リスク調査で上がってくるリスク数は数百に及びますが、内容を分析・評価し、現場で対応できているものなどは現場対応とし、組織横断的なリスクなど全社で対応すべきリスクについては、主管部門と連携した対応の強化を推進しています。

“外部環境の分析”
国際情勢、事業環境、社会課題など変化が激しく、複雑化・多様化するリスクに対して、社内外の専門家と連携しながら、継続的に分析しています。また、世界のシンクタンクのリスクに関するレポートも参考に分析を進めています。

“経営幹部ヒアリング”
“リスク調査・結果分析”と“外部環境の分析”をもとに、経営会議メンバーなどに対してヒアリングを実施し、経営の視点から花王グループにとっての重要リスクや、対応を強化すべきリスクについて議論を深めています。現場で抽出されたリスクや課題に対して、経営としての優先順位や戦略的な視点を加えた議論を行うことで、現場と経営のリスク認識をすり合わせています。

このように「現場」と「経営」が一体となってERMを進めています。

コーポレートリスクの主なテーマと対応

テーマ リスク内容 対応
大地震・自然災害・BCP対応
  • 大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害により、社員、設備、サプライチェーン等の被害で、市場への製品供給に大きな支障をきたすリスク
  • 各拠点の水害リスク調査に基づいたハード・ソフト面の対策を強化すると共に社員とその家族を守るための防災教育の実施
  • 日本における長期操業停止を想定したBCP策定や海外拠点のBCP強化の検討
地政学リスク対応
  • 政治的・社会的情勢の不安定化、外交関係の緊迫化、紛争等により、人的被害の発生、サプライチェーンの寸断による操業の一時停止、生活者の購買行動が変化するリスク
  • リスクシナリオの作成と対応体制の整備、政治的・社会的状況のモニタリング
  • 社員の安全確保に関するガイドラインの策定
  • 原材料調達などのサプライチェーンネットワークの強化
サイバー攻撃対応
  • 工場生産設備や取引先へのサイバー攻撃により、サプライチェーンなどの事業活動が一時的に中断するリスク
  • セキュリティ対策の強化とインシデント発生時の対応体制の強化
社会課題への対応
  • 社会課題への取り組みが目標に対して不十分、あるいは不十分とみなされるリスク
  • KLPでコミットメントしたKPIの進捗状況を十分に示せない「グリーンウォッシュ*2 」や、グリーンウォッシュの恐れから情報開示を控えて「グリーンハッシング*3 」と捉えられるリスク

  • *
    2 グリーンウォッシュ:企業が、製品やサービスについて、環境およびサステナビリティに関する特徴を誇張もしくは大げさに主張したり、それらに関する活動について十分な根拠なく訴求すること。
  • *
    3 グリーンハッシング:企業が、グリーンウォッシュを恐れ、自社の環境に関する取り組みや気候変動対策についての開示や発信を控えること。
    • 社会課題への取り組みに対するステークホルダーなどの評価・要請をグローバルで把握・対応することで、レピュテーションリスクを低減
    重大品質問題対応
    • 重大な品質問題が発生し、社会的信用が失墜するリスク
    • 重大な品質問題の発生防止に向けた社内啓発の強化
    • 品質問題により重篤な被害が生じた場合の全社対応の強化
    レピュテーション対応
    • 取り組みに対してネガティブな評判や誤解などがSNSなどを通じて拡散され、ブランド価値や社会的信用が低下するリスク
    • 事象発生時の緊急対応体制の強化
    • 国内外におけるSNSなどのモニタリング体制の強化
    • リスク顕在化時には正しい情報や企業姿勢を公表
    パンデミック対応
    • パンデミックにより、操業が一時中断するリスク
    • パンデミックにより、購買行動が変化し化粧品市場などが縮小するリスク
    • 新型コロナウイルス感染症時の経験を踏まえ、ガイドラインを改訂し、各国行動計画の策定や備蓄品などの見直し

    エマージングリスクへの早期対応

    花王では、新しいリスク、データが不十分なリスク、意思決定に必要な情報や知識が不足しているリスクを「エマージングリスク」と定義しています。「エマージングリスク」は、長い時間軸で経営への影響が大きくなる可能性があります。そのため、毎年の主要リスクの見直しの中で、エマージングリスクの洗い出しも行っています。
    エマージングリスクの早期の洗い出しと対応には、リスクインテリジェンス*4 の強化が欠かせません。リスクインテリジェンスの強化に向けて、リスクへの洞察力(経験だけに頼らず、変化の兆しを捉えて先を読む力)を高めるために、多様な社外専門家との連携を進めるとともに、シナリオプランニング(将来の不確実な状況を想定し、対応を考える思考プロセス)の強化を進めています。

    • * 4 リスクの兆しをいち早く察知し、影響を分析し、対応する力

    花王が多様な社外専門家と連携している様子を示した図。リスクインテリジェンスの強化に向けて、会社を取り巻く様々なリスクごとに、専門家、関係省庁、NGOなどと連携し、リスクへの洞察力を高めている。

    また、大地震・自然災害や地政学リスクなどのコーポレートリスクに対しては、実際の緊急事態対応を踏まえたBCM(事業継続マネジメント)を実行するとともに、長期供給停止を想定したシミュレーションと訓練によりシナリオプランニングを強化し、より具体的な備えと迅速な対応の強化を図っています。

    コーポレートリスク「大地震・自然災害・BCP対応」「地政学リスク」への対応強化を示した図。左は、緊急事態対応を振り返り、対応訓練、改善・検討を経て、BCPを見直す、PDCAによる継続的な改善を示した図。右は、南海トラフ地震や地政学などをテーマに、年度毎に計画したシナリオプランニングの強化を示している。BCMのPDCAに、シナリオプランニングを連動させることで、エマージングリスクへの備えと対応を強化する取り組みをあらわしている。

    Page Top