ウェブアクセシビリティの実践における技術的なポイントをまとめたFAQです。デザイン、開発、コンテンツ制作における実装のヒントや具体的な手法などを解説します。
視覚障害へのウェブアクセシビリティ確保・向上を考える際、コントラスト比や色に依存した表現になっていないかといった視覚情報の問題への配慮に加え、音声読み上げデバイスの利用や、ポインターが見えない・見えづらいためマウスを使用できない場合の操作方法など、視覚情報以外の側面にも注意を払うことも必要です。
色覚や視力の特性によっては見えない・見えづらいユーザーもいるため、コントラストが不十分な文字や画像、色に依存した表現を用いないようにする。
[視覚情報以外の問題]
音声読み上げを通じて聴覚から情報を取得するユーザーもいるため、画像だけではなく、ボタンやフォーム入力要素などにもラベルや代替テキストを提供する。
キーボードだけでウェブページを操作するユーザーもいるため、マウスのみでできる操作などがなく、キーボードでも操作できるようにする。また、ボタンやフォーム入力要素などへのラベルの提供や、フォーカス順序を利用者にとって自然な順序にするなどキーボード操作に考慮する。
スマホなど画面サイズが小さい場合や視力の特性によっては見えない・見えづらいユーザーもいるため、ユーザーによる画面の拡大操作を妨げないようにする。
問題が明らかになったコンテンツに対して、アクセシビリティを確保できる代替手段を検討してください。代替の提供が難しい場合、該当画像を変更することも検討ください。
どちらも困難な場合は、アクセシビリティが損なわれることで、ユーザーがどのように困る可能性があるかを理解した上で、できる範囲のアクセシビリティは確保できるよう、制作を進めてください。
ナレーションのない、製品の使い方を説明する動画などをウェブサイトに掲載する際は、テキストで内容を補完することが適当です。
以下に代替テキストの掲載方法の例を示しますので、参考にしながら、動画の内容やテキストの長さに応じて適切な掲載方法を検討してください。
なお、動画内容を代替するテキストでは、下記の一例などを参照に動画の内容を簡潔にテキストで説明するようにしましょう。
例:「この動画は、化粧水の使用方法を説明しています。はじめにポンプ3プッシュ分の化粧水を手に取ります」
音声のない動画で内容を伝達したい場合、クローズドキャプションによって内容を明示することもできます。ただし、下記のような懸念点も存在するため、掲載方法には検討が必要です。
代替テキストの翻訳は、ウェブサイトのアクセシビリティ向上に不可欠な要素です。コンテンツ画像だけでなく、可視ラベルのないUI要素なども翻訳の対象になります。代替テキストを忘れないようにしましょう。
翻訳作業を進める際には、代替テキストの存在とその重要性を常に意識し、高いアクセシビリティを持ったウェブサイトを目指してください。
例:可視ラベルのないUIにも翻訳を反映する
意味のある画像には内容を伝える「代替テキスト」を設定するように、音声や映像、または音声・映像の両方を含むコンテンツに対して、音声を聞くことができない、または映像を見ることができない状況でも、内容がわかる代替が必要です。
音声情報に対しては「キャプション(字幕)」、映像情報に対しては「トランスクリプト」や「音声解説」が代替コンテンツとなります。
また、動画では、上記のような代替コンテンツの他に、短いテキストでコンテンツを識別するための「ラベル」も準備しましょう。
動画の音声情報には、字幕(キャプション)が必要です。音声情報とは、音声によって伝える情報のことを指します。BGMも音声情報となるため字幕が必要です。
聴覚障害があるユーザーや、音声を利用できない、音声が聞き取りにくい環境のユーザーも、音声で表現された内容を理解できるように字幕を提供しましょう。
どのような楽曲が流れているのかを字幕で説明することで、BGMによってどのような印象を持ってほしいのかを伝えられます。
発話がない状態で BGM だけ流れてるような場合に、字幕を提供することで「字幕が何かのトラブルで表示されてないのかも?」などの不安を解消することができます。
字幕の例:
BGMだけが流れている時の字幕の例
ウェブアクセシビリティに配慮することは、画像を使わないことではなく、画像(視覚情報)だけに頼った表現にしないことが重要です。さまざまな状況にあるユーザーが利用しやすいデザインを検討していってください。
文字を含む画像に「代替テキストを設定」しただけでは、アクセシビリティの問題が解消できたとは限りません。画像に含まれる文字のコントラストを確保する必要もあります。
画像に対する代替テキストは、視覚的に画像情報を獲得できない状況や状態に対して、テキストで画像情報を提供します。一方で、画像内の文字のコントラストを確保することは、主に見える状況や状態に対して、「画像をより見やすくする」対応です。
どちらも画像の情報をより多くの人に伝えるための対応ですが、それぞれ異なる状況・状態に対する改善方法のため、画像が文字を含む場合、代替テキストの設定に加え、文字のコントラストを確保する必要があります。
アイコンの画像が表示されないとユーザーに機能を伝えることができない場合は、代替テキストを用意しましょう。
また、アイコンの代替テキストで注意が必要なのは、代替テキストがアイコンの見た目の説明のみで、機能の説明となっていない場合です。例えば設定用のアイコンとしてよく利用される「歯車」のアイコンに対し、見た目のままに「歯車」という代替テキストを用意しても、機能の説明としては不十分となります。
検索エンジンのクローラーが画像に関する情報を得ることができるようになります。適切なキーワードを使用し、またページのコンテンツの内容に沿った役に立つ内容にすることによって、SEO上の評価が上がる可能性があります。
画像の代わりとなる代替テキストを適切に設定することで、ウェブサイトのパフォーマンスには、次のような影響があります。
キャプションで提供する情報は、動画内の音声情報です。原則として、発話内容だけでなく、音で伝える情報の全てが対象となります。背景音や効果音といった発話以外の音が、動画の内容を理解するのに必要な情報を伝えている場合は、音に関する情報もキャプションに含めます。「この動画で一番伝えたい情報は何か?」を判断基準として、内容を検討してください。
また、キャプション作成時には、繰り返し出てくる表現の表記を統一するなど、キャプションの書き方ルールについても検討すると、より伝わりやすいものとなります。CM動画のキャプションはテレビ放送の字幕をYouTube用に編集しているため、テレビ放送の字幕ルールに則った内容になっています。
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