技術FAQ

ウェブアクセシビリティの実践における技術的なポイントをまとめたFAQです。デザイン、開発、コンテンツ制作における実装のヒントや具体的な手法などを解説します。

Q.

視覚の障害に対するウェブアクセシビリティでは、具体的にはどのようなことを考慮しなければならないのでしょうか?

A.

視覚障害へのウェブアクセシビリティ確保・向上を考える際、コントラスト比や色に依存した表現になっていないかといった視覚情報の問題への配慮に加え、音声読み上げデバイスの利用や、ポインターが見えない・見えづらいためマウスを使用できない場合の操作方法など、視覚情報以外の側面にも注意を払うことも必要です。

問題と対応方法の一例

視覚情報の問題

色覚や視力の特性によっては見えない・見えづらいユーザーもいるため、コントラストが不十分な文字や画像、色に依存した表現を用いないようにする。

[視覚情報以外の問題]

音声読み上げの問題

音声読み上げを通じて聴覚から情報を取得するユーザーもいるため、画像だけではなく、ボタンやフォーム入力要素などにもラベルや代替テキストを提供する。

キーボード操作の問題

キーボードだけでウェブページを操作するユーザーもいるため、マウスのみでできる操作などがなく、キーボードでも操作できるようにする。また、ボタンやフォーム入力要素などへのラベルの提供や、フォーカス順序を利用者にとって自然な順序にするなどキーボード操作に考慮する。

画面サイズの問題

スマホなど画面サイズが小さい場合や視力の特性によっては見えない・見えづらいユーザーもいるため、ユーザーによる画面の拡大操作を妨げないようにする。

Q.

掲載予定のコンテンツに、アクセシビリティ上の問題がある場合は、どうしたらよいですか? ウェブサイトと同時に展開する広告の画像を使う予定ですが、画像内の文字のコントラストが不足しています。

A.

問題が明らかになったコンテンツに対して、アクセシビリティを確保できる代替手段を検討してください。代替の提供が難しい場合、該当画像を変更することも検討ください。
どちらも困難な場合は、アクセシビリティが損なわれることで、ユーザーがどのように困る可能性があるかを理解した上で、できる範囲のアクセシビリティは確保できるよう、制作を進めてください。

Q.

ウェブサイトにナレーションが入っていない動画を掲載する場合、どのような代替手段を提示すべきですか?

A.

ナレーションのない、製品の使い方を説明する動画などをウェブサイトに掲載する際は、テキストで内容を補完することが適当です。
以下に代替テキストの掲載方法の例を示しますので、参考にしながら、動画の内容やテキストの長さに応じて適切な掲載方法を検討してください。

動画内容を代替するテキストの掲載方法

  1. 動画と同一ページ内に掲載する
    • 動画の近くにテキストを掲載します。テキストが長くなってしまう場合は次のような見せ方も考えられます。
      • アコーディオンの中に代替テキストを掲載し、アコーディオンは閉じておく。
      • タブUI で動画タブと代替テキストタブを提示する。
  2. 動画と別ページに掲載する
    • 別ページにテキストを掲載し、動画の近くに代替内容ページへのリンクを設置します。

なお、動画内容を代替するテキストでは、下記の一例などを参照に動画の内容を簡潔にテキストで説明するようにしましょう。
例:「この動画は、化粧水の使用方法を説明しています。はじめにポンプ3プッシュ分の化粧水を手に取ります」

音声のない動画で内容を伝達したい場合、クローズドキャプションによって内容を明示することもできます。ただし、下記のような懸念点も存在するため、掲載方法には検討が必要です。

  • クローズドキャプションは動画プラットフォームに依存する機能であり、ユーザーがアクセスしづらい場合がある。
  • 動画の表示時間に対しクローズドキャプションの長さが長いとスクリーンリーダーでの読み上げが途中で途切れることとなる。
Q.

ウェブサイトの日英翻訳を進める中で、代替テキストの取り扱いについて具体的に教えてください。

A.

代替テキストの翻訳は、ウェブサイトのアクセシビリティ向上に不可欠な要素です。コンテンツ画像だけでなく、可視ラベルのないUI要素なども翻訳の対象になります。代替テキストを忘れないようにしましょう。
翻訳作業を進める際には、代替テキストの存在とその重要性を常に意識し、高いアクセシビリティを持ったウェブサイトを目指してください。

  • 代替テキスト翻訳時のポイント
    1. 文化や慣習に合わせた翻訳を心掛けること。また、元の代替テキストの意図や機能を損なわないよう正確に翻訳することが重要です。
    2. 翻訳の漏れている箇所がないか確認すること(可視ラベルのないUIなど)。

      例:可視ラベルのないUIにも翻訳を反映する

      可視ラベルのないUIにも翻訳を反映するのビジュアルイメージ。

      可視ラベルのないUIにも翻訳を反映するのビジュアルイメージ。

      可視ラベルのないUIにも翻訳を反映するのビジュアルイメージ。

    3. 翻訳された代替テキストがデザインやUIのスペースに収まるようにすること。
    4. 翻訳後のテキストが拡大時にコンテンツを見切れさせないかなど、正確に機能するかテストを行い必要に応じて調整すること。
Q.

動画にはどのような代替コンテンツが必要ですか?

A.

意味のある画像には内容を伝える「代替テキスト」を設定するように、音声や映像、または音声・映像の両方を含むコンテンツに対して、音声を聞くことができない、または映像を見ることができない状況でも、内容がわかる代替が必要です。
音声情報に対しては「キャプション(字幕)」、映像情報に対しては「トランスクリプト」や「音声解説」が代替コンテンツとなります。
また、動画では、上記のような代替コンテンツの他に、短いテキストでコンテンツを識別するための「ラベル」も準備しましょう。

代替コンテンツ

  • 内容を伝える
    • 画像→代替テキスト(img 要素の alt 属性)
    • 動画→トランスクリプト、キャプション、音声解説

代替コンテンツで「内容を伝えるもの」を説明している図。画像の代替テキストと、動画のキャプチャ内で「音声解説」「トランスクリプト」「キャプション」がどれにあたるかを説明している。

  • 認知(識別)させる
    • 動画→ラベル(iframe 要素の title 属性)

動画の代替コンテンツで「認知(識別)させるもの」を説明している図。動画のキャプチャ内で「ラベル」がどれにあたるかを説明している。

Q.

映像とBGMだけの動画に、字幕は必要ですか?

A.

動画の音声情報には、字幕(キャプション)が必要です。音声情報とは、音声によって伝える情報のことを指します。BGMも音声情報となるため字幕が必要です。
聴覚障害があるユーザーや、音声を利用できない、音声が聞き取りにくい環境のユーザーも、音声で表現された内容を理解できるように字幕を提供しましょう。


BGMを通じて表現している動画コンテンツの雰囲気を伝える。

どのような楽曲が流れているのかを字幕で説明することで、BGMによってどのような印象を持ってほしいのかを伝えられます。

  • 字幕の例:
    • ♪遅いテンポの落ち着いたメロディ♪ 
    • ♪軽快なピアノの登場曲♪ 

BGMだけが流れる状態に対する情報を提供する。

発話がない状態で BGM だけ流れてるような場合に、字幕を提供することで「字幕が何かのトラブルで表示されてないのかも?」などの不安を解消することができます。

字幕の例:

  • ♪[音楽]♪
  • ♪BGM♪

「♪音楽♪」という字幕が書かれている動画のキャプチャ画像

BGMだけが流れている時の字幕の例

Q.

ウェブアクセシビリティに配慮したウェブサイトを作るには、画像は極力使わず、テキストをメインにした方がいいのでしょうか。

A.

ウェブアクセシビリティに配慮することは、画像を使わないことではなく、画像(視覚情報)だけに頼った表現にしないことが重要です。さまざまな状況にあるユーザーが利用しやすいデザインを検討していってください。

  • 例:テキストを用いることのメリット
    • ユーザーがブラウザの設定を変更して、テキストの文字サイズを自身が見やすい大きさ・書体・色にすることができる。
    • ページのテキストをコピー&ペーストできる。
    • ユーザーが自動翻訳エンジンを利用して、好きな言語で閲覧することが可能になる。
Q.

文字を含む画像は「代替テキストがあれば問題ない」と判断されますでしょうか?

A.

文字を含む画像に「代替テキストを設定」しただけでは、アクセシビリティの問題が解消できたとは限りません。画像に含まれる文字のコントラストを確保する必要もあります。
画像に対する代替テキストは、視覚的に画像情報を獲得できない状況や状態に対して、テキストで画像情報を提供します。一方で、画像内の文字のコントラストを確保することは、主に見える状況や状態に対して、「画像をより見やすくする」対応です。
どちらも画像の情報をより多くの人に伝えるための対応ですが、それぞれ異なる状況・状態に対する改善方法のため、画像が文字を含む場合、代替テキストの設定に加え、文字のコントラストを確保する必要があります。

Q.

アイコンにも代替テキストは必要ですか?

A.

アイコンの画像が表示されないとユーザーに機能を伝えることができない場合は、代替テキストを用意しましょう。

  • 例:代替テキストが必要な場合
    • 新製品に対するアイコン「New」
    • オンラインショップへのリンクボタンアイコン
  • 例:代替テキストがなくても問題ない場合
    • 隣接してテキストが用意されているアイコン
      ※画像が無くても周囲のテキストから同じ情報を得られるため、代替テキストは必要ありません。altは「空」に設定します。

また、アイコンの代替テキストで注意が必要なのは、代替テキストがアイコンの見た目の説明のみで、機能の説明となっていない場合です。例えば設定用のアイコンとしてよく利用される「歯車」のアイコンに対し、見た目のままに「歯車」という代替テキストを用意しても、機能の説明としては不十分となります。

代替テキストが必要となる例、代替テキストがなくても問題ない例、注意が必要な例、それぞれのビジュアルイメージ

代替テキストが必要となる例、代替テキストがなくても問題ない例、注意が必要な例、それぞれのビジュアルイメージ

代替テキストが必要となる例、代替テキストがなくても問題ない例、注意が必要な例、それぞれのビジュアルイメージ

Q.

画像の代わりとなる代替テキストは、SEOにどのような効果がありますか?

A.

検索エンジンのクローラーが画像に関する情報を得ることができるようになります。適切なキーワードを使用し、またページのコンテンツの内容に沿った役に立つ内容にすることによって、SEO上の評価が上がる可能性があります。

Q.

画像の代わりとなる代替テキストを設定することで、ウェブサイトのパフォーマンスにどのような影響がありますか?

A.

画像の代わりとなる代替テキストを適切に設定することで、ウェブサイトのパフォーマンスには、次のような影響があります。

  • 画像から視覚的に情報を得ることが難しいユーザーに対し、画像と同等の情報を提供することができる。
  • 検索エンジンのページへの理解が深まり、SEOに寄与する。
  • Googleが提供している「PageSpeed Insights」のようなウェブサイトの表示速度を測定・評価するツールで分析した際に、画像が読み込まれる前にテキスト情報が読み込まれるため、ページの読み込み速度が向上することが期待される。
Q.

CM動画のキャプション(字幕)にはBGMマークや、登場人物が複数名いる場合は誰が話しているか識別できるような工夫がありますが、どこまでキャプションに入れるべきか分かりません。

A.

キャプションで提供する情報は、動画内の音声情報です。原則として、発話内容だけでなく、音で伝える情報の全てが対象となります。背景音や効果音といった発話以外の音が、動画の内容を理解するのに必要な情報を伝えている場合は、音に関する情報もキャプションに含めます。「この動画で一番伝えたい情報は何か?」を判断基準として、内容を検討してください。

また、キャプション作成時には、繰り返し出てくる表現の表記を統一するなど、キャプションの書き方ルールについても検討すると、より伝わりやすいものとなります。CM動画のキャプションはテレビ放送の字幕をYouTube用に編集しているため、テレビ放送の字幕ルールに則った内容になっています。

表記について

花王株式会社のウェブサイトでは、「障害」の表記として、一部のコンテンツで「障がい」を使用しておりますが、本ガイドラインにおいては、スクリーンリーダーでのテキストの読み上げを考慮し、漢字表記としております。

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