第10回コンテスト(2019年) 審査風景・審査員総評・表彰式

審査風景

10回目の節目を迎えた今年は、イタリア、ノルウェー、ベルギー、モンゴル、セーシェルからも初めて作品が寄せられ、過去最大の16,552点(国内446点、海外16,106点)の応募がありました。

審査の基準となったのは、「地球環境に対する改善への願いや発想が感じられるか」「世界の環境問題を考えるうえで新鮮な視点を与えてくれるか」など。まず花王のデザイナー13名が1万点を超える全作品を審査し、その中から選ばれた396点について最終審査を実施。張り詰めた緊張感に包まれた審査会場で、芸術や環境分野に携わる審査員7名が細部まで丹念に眺めながら厳正に審査を進めていきました。

「“いっしょにeco”地球大賞」(1点)に選出されたのは、タイ在住の男の子(10歳)の作品です。益田文和委員長が「自然と社会との共存を願う気持ちを素直に描いた力作。新しいステージへ飛び越えていくというメッセージが強く心に残った」と講評。このほか、「“いっしょにeco”花王賞」8点、「優秀賞」23点(うち審査員推薦7点)を決定しました。

予備審査の様子

予備審査の様子

本審査の様子

本審査の様子

審査員の総評

【益田 文和 先生】
(審査委員長、元 東京造形大学 教授)

本コンテストがスタートして、今年で10年目。大きな節目を迎え、より鋭くユニークな視点の作品が増えてきていると実感した。キャンペーンやスローガンを絵で表現するという発想から、自分自身の本音をストレートに伝えたいという思いを込めた作品づくりへ。メッセージ性の強い作風が目立つ中で、子どもたちの切なる訴えに、大人はどう答えていくのか。彼らの気持ちを正面から受け取って、大人たちがしっかりと行動に移していく必要があるのではないだろうか。本コンテストも、大きな転換期を迎えていると感じた。

【大久保 澄子 先生】
(美術家)

例年以上に考えさせられる審査会だった。自然や動物という類似したモチーフが多く使われる中、「このパターンに当てはまらない作品も選出したい」という気持ちもあった。しかし、台風、洪水のほか、環境汚染による野生動物の絶滅危惧といった現実を目の当たりにし、子どもたちが地球の自然に危機を持つのは当然である。「何とかしないと、手遅れになるよ」「大人たち、何をしているんだ」という子どもたちの声をしっかり受け止め、未来に向けて変化していかなければ。コンテストがその足掛かりになることを、大いに期待している。

【松下 計 先生】
(東京藝術大学 教授)

「時代の流れを映し出すのは、大人よりも、子どものほうが得意なのではないか」と、うならされた。前回までを振り返ると、多様な要素を稠密に描くことで、生活を取り巻く何らかの“力”を表現していた作品が目立っていた。それに対し今回は、動物、自然、人間を対等に描く傾向が顕著だ。自然界を人間がコントロールしているのではなく、「人間は、自然と一緒に生きている」とい力強いメッセージだ。地球の環境問題を自分自身で考えて答えを導くという次なるステージの到来を予期させる、実りある審査会であった。

【オヤマダ ヨウコ 先生】
(美術家、イラストレーター)

今回も、子どもたちの作品から多くのことを学ばせていただいた。各地域それぞれ、大人がつくった環境がバックグラウンドにある中で、子どもたちの絵はその地域の今の姿をリアルに映し出してくれている。中には、「日本にもこういった風景があったなぁ」と思わせる、ある種の懐かしさを感じる絵もあった。そして、受賞作品のみならず、すべての作品から、「みんなの願いはひとつにつながっている」のだと思い知らされた。いずれも、地域や時代、言葉を超え、見る人がいる限り永遠にメッセージを発し続けることのできるすばらしい作品ばかりだった。

【アンドレアス・シュナイダー 先生】
(デザイナー)

応募地域が増えて充実したコンテストとなり、改めて審査の難しさを痛感している。審査員として、絵の美しさを評価するという役目をまっとうしたが、同時に受賞作品を絞り込むという苦しさもあった。審査中に着目したのは、子どもたちがどんな思いを込めてその作品を描いたのか。応募票のメッセージも参照しながら読み解く中で、子どもたちはさまざまな不安を抱えながらも、しばしば楽観的で、かつとても実用的な提案をしてくれているのだと感じた。惜しくも賞を逃した作品を含め、応募してくれたすべての子どもたちを称えたい。

【デイブ・マンツ】
(花王株式会社 執行役員 ESG部門統括)

今回初めて審査に参加し、たくさんのすばらしい作品に出合えたことに感謝している。最も驚いたのは、どの作品からも子どもたちの鋭い視線が感じられることだ。表現しようとしたさまざまな事象について、その背景を含め、現実に起こっている問題から目をそらさずにしっかりと向き合っている。そしてさらには、緊急性の高い危機が迫っている現実に、作品を通して警笛を鳴らしているのだ。「黙っていてはいけない。何かをしてください」という切実な訴えが胸に刺さる、貴重な機会であった。

【片平 直人】
(花王株式会社 作成部門統括)

全体的に表現の違いが徐々に縮まっている印象を受けた。「この地域から、こんな表現の作品が生まれたのか」と驚くことも多く、「どこどこの地域らしい」といった既存のイメージにとらわれずにひとつひとつの作品と向き合うことが大切であると、改めて思わされた。また、シリアスなテーマの作品が少し目立ってきたようにも思う。これは昨今の環境関連のニュースの中で悲しい思いをしている子どもが増えていることを意味しているのではないか。企業として、大人として、今後も子どもたちの笑顔を増やす活動をしていく義務があることを、再確認するコンテストとなった。

第10回コンテスト表彰式

2019年12月5日(木)~7日(土)に開催された「エコプロ2019」(東京ビッグサイト)の花王ブースにおいて受賞作品を展示し、最終日の12月7日には受賞者代表を招いて表彰式を行ないました。当日は16,552点(国内446点、海外16,106点)の中から、「“いっしょにeco” 地球大賞」「“いっしょにeco” 花王賞」に選ばれた9名が参加しました。

審査委員長の益田文和先生は「とても深い意味を持った作品を描いてくださった皆さんに感謝します。私たち審査員は、何を考えて描いたのだろう? どういった意味が込められているのだろう? と、ひとつひとつの作品について議論しながら受賞作品を選んでいます。今日の感動を忘れずに、これからも環境のことを考え、表現していってください」と講評しました。続いて、社長の澤田道隆から受賞者へ、表彰盾と副賞を授与しました。

「“いっしょにeco” 地球大賞」を受賞したのは、窓ガラスに木々や動物たちの姿が映り込んだ高層ビルのある風景を描いた、Kritsakon Chaiwarinさん(10歳)。受賞者を代表して喜びの言葉を述べました。また、表彰式後のトークセッションでは「皆で協力して自然を壊さないように守っていけば、テクノロジーが発達しても自然は豊かになり、皆が幸せに暮らせるということを表しました」と、作品に込めた思いを発表。ほかの受賞者も、環境への思いを来場者に向けて語りました。

受賞者を代表しスピーチを行なう
大賞受賞のKritsakon Chaiwarinさん

花王賞受賞のBaran Karamiさんに
社長の澤田から表彰盾を授与

受賞者の皆さんのトークセッション

受賞者の皆さんと記念撮影
審査委員長の益田先生(左)、社長の澤田(右)、
ESG部門統括のデイブ・マンツ(左から2人目)

受賞作品のご紹介はこちらからご覧いただけます。

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