ミミズを活用した工場排水処理への挑戦

食物連鎖を利用した排水処理技術の開発

花王は、循環型工場をめざして、水の利用においても、再利用のための技術開発と排水処理における、最終廃棄物ゼロをめざした技術開発に取り組んでいます。

微生物の力を借りて、排水をきれいにする

製品の製造プロセスでは、たくさんの水が使われます。花王は、工場で使う水をできるかぎり効果的に利用し、最終的に海や川へ戻す際には、環境基準に適合したきれいな状態にして排水しています。
こうした方針のもと、これまでもさまざまな排水処理技術の研究に取り組んできましたが、このほど、和歌山工業技術センターが食品加工における排水処理のために開発した、食物連鎖を活用した工場排水技術を、化学系排水にも適用させようと、共同研究に取り組みました。

排水には、汚れのもととなる有機物が含まれていますが、有機物を分解して、排水を浄化するためには、微生物の力を借りる必要があります。しかし、一般的には、これらの微生物は浄化とともに増殖し、最終的には汚泥となってしまいます。ところが、この技術では、排水の中にイトミミズの寝床となる、和歌山特産のパイル繊維でつくられたシートを入れることで、イトミミズの増殖を促すため、イトミミズによる微生物の分解が増え、最終汚泥を大幅に削減することができるのです。

テスト機に、イトミミズが育つパイル繊維のシートを設置する研究員

工場排水の汚泥をできるかぎり減らし、環境負荷を低減

2016年に行なった和歌山工場の排水を使った実験を皮切りに国内外7工場にパイル繊維でつくられたシートを実際の排水処理設備に簡易設置し、イトミミズの発生および増殖状況の確認実験を行なってきたところ、想定以上に生物処理の水温の影響を受けることがわかったため、通常の処理条件より少し厳しい水温条件が必要であることが判明しました。
また、水温条件からイレギュラー的に外れてイトミミズの減少が発生した場合でも、条件が戻れば増殖が再開することが確認できました。
これらから、既存工場の中で数工場に適用できることがわかりました。

この技術を導入すると、最終廃棄物を少なくできることに加えて、排水処理コストの削減にもつながります。
花王では、この技術を含めた国内外の工場での活用をめざして、さらなる研究を進めてまいります。

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