酒田工場は、2021年7月に山形県や酒田市と森づくりに関する「やまがた絆の森協定」を締結しました。工場から北に約1km離れた場所にある、庄内海岸のクロマツ林3.4ha(酒田市大浜地区)を「花王の森 おおはま」と名づけ、活動の地としました。このクロマツ林は、江戸時代の商人や農民が砂飛び防止のために植林を進めたといわれており、林野庁が指定する飛砂防備保安林となっています。公益の森として歴史あるクロマツ林を未来に引き継ぐため、飛砂防備保安林としての機能維持やクロマツの育成によるCO2削減を掲げており、社員による社会貢献活動や環境意識向上などを協定締結の目的として挙げています。
2022年以降、毎年5~6月頃には、酒田工場と花王グループカスタマーマーケティング東北の社員ら約40名が「花王の森 おおはま」に集まり、雑木の撤去、下草刈り、階段にたまった砂の除去、ごみの回収、クロマツに張りついたツタの除去などを行っています。この場所には住宅地から海側に抜ける遊歩道があり、ウォーキングしている方をよくみかけます。遊歩道を安全に歩けるようにすることで健康増進ができ、綺麗に整備したことで不法投棄の防止にもつながると期待しています。
また、この豊かな森林資源を地域の子どもたちの環境学習の場としても活用し、親しんでもらうことによって、森林を維持する大切さを次世代に伝えたいと考えています。
ツタの除去作業の様子
酒田工場では、企業の森「花王の森 おおはま」の活動だけでなく、地域の生態系の保全につながる社会貢献としての活動にも、社員やその家族らが積極的に参加しています。
1995年、海の恩恵に感謝するとともに、海洋国である日本の繁栄を願うという趣旨で「海の日」が国民の祝日に制定されました。それにともない、1999年には「酒田港クリーンアップ推進協議会」主催による大浜海岸の清掃が始まりました。酒田工場もこの「酒田港クリーンアップ作戦」に参加し、毎回約500kgのごみを回収しています。
参加人数は全体で45団体・約400名と近年増加傾向にあり、なかでも酒田工場の参加者は社員とその家族を含め40名を超え、団体の中で最多となっています。
社員とその家族による酒田港大浜海岸の清掃活動
「酒田北港530作戦」は、酒田共同火力発電(株)が中心となり、港湾部の環境保全活動の一環として、1986年から実施している活動です。東北電力(株)のグループ企業や港湾関係の行政機関など約200名の規模で年2回行われ、毎回200kgほどのごみが回収されています。
2022年の春以降、春と秋の年2回、数十名の社員が参加し清掃活動を行っています。
酒田北港周辺緑地の清掃活動
酒田工場は山形県の港湾施設内にあります。工場では、周辺の臨港道路の美化活動を年2回実施。これには毎回約140名の社員が参加し、歩道部分の除草や枯れ葉の除去を行っています。
山形県港湾道路(歩道部分)の清掃活動
1980年に操業を開始した鹿島工場は、茨城県神栖市の鹿島臨海工業地帯内に位置します。ここは、もともと塩分を含む海浜の砂から成る埋立地で、マツ以外の樹木は育たないような土地でした。地元の県や市との公害防止協定、また、さまざまな法規制を背景に、鹿島工場では、初代工場長の「花王グループ内で最も緑の美しい工場にしたい」という思いのもと、地域に根ざした緑地の保全に長年取り組んでいます。
鹿島工場の全景
緑地の造成と保全のポイントは主に3つあります。
1つ目は土壌づくりです。山土を運び入れ、やせた砂地の土壌改良を行うなど、樹木が生育できる状態へとつくりなおしました。2つ目は50年後を見据えた植栽計画です。場内に設けた複数の緑地ゾーンそれぞれの特性に応じた緑化計画を推進しました。比較的大きめの緑地ゾーンでは、地域に昔から生息しているタブノキやモチノキなどの高木、ネズミモチ、サンゴジュなどの中木、アオキ、センリョウなどの低木を、階層状に育つよう選定しました。中心には高木、その脇に中木と低木を連続的に配置することにより、多様性に富んだ植栽が育ちます。3つ目は、多様な生物を呼び込める植樹をすることです。たとえば、野鳥が好む実のなる木や、蝶の食草であるクスノキやエノキなどを植樹しています。
これらの活動を通して、生物たちが安心して生息できる自然豊かな森の育成に努めてきました。
場内の植樹の様子(1983年)
2014年、鹿島工場では、地域の生物多様性に場内の緑地がどの程度貢献しているのかを把握するため、JBIB(企業と生物多様性イニシアティブ)が開発したガイドラインに基づく緑地評価を実施しました。その結果を踏まえて、土地利用のあり方や生物多様性の視点からの活動の見直しを行いました。2015年2月、工場としては全国で初のABINC認証(いきもの共生事業所®認証〔同ガイドライン認証基準・工場版〕)を取得しました。
2015年10月には「第4回いきものにぎわい企業活動コンテスト」で環境大臣賞を受賞しました。鹿島工場では現在、植物193種、野鳥62種、昆虫102種の生息を確認しています(2022年調査)。
場内の現在の様子
鹿島工場には「社員の森」と呼ばれる独自の取り組みにより造成した憩いの森があります。ここでは、新入社員や転入者、工場に在籍した全社員が、工場で仕事をした証しとして、地域の在来種を含めた樹木リストから自分の好きな木を選択し、植樹を行っています。
「社員の森」
操業開始から40年以上にわたりこの活動を継続してきた結果、現在、社員900名以上による140種以上の樹種が育ち、メジロやゴマダラチョウなどのさまざまな生き物が集まる生物多様性が豊かな森に成長しました。
ゴマダラチョウ
「社員の森」には、植樹した年月と社員名が刻まれたプレートとともに、過去から現在に至るまで、歴代の社員が植えてきたさまざまな樹木を見ることができます。社員にとって、日常のなかで自分が植樹した木が成長していく過程を観察し続けていくことは、大きなモチベーションにつながっています。
また「社員の森」は、社員の環境意識の啓発や健康促進、交流の場としての機能も果たしています。工場を退職した社員にも森を開放し、自分が植樹した木の周辺の除草をする活動を通して、仲間同士や現役の社員との交流を実現しています。
「社員の森」の紹介看板
夏休みには、地域の子どもたちを対象に環境教育イベントを開催し、自然にふれあい、楽しみながら自然の大切さを学ぶ場を提供しています。「社員の森」を探索しながらのビンゴゲームや木の実や葉を使った工作活動、夜の昆虫調査体験などを行い、自然への関心を高める活動に取り組んでいます。
夏休み教育イベントに集まった地域の子どもたち
2021年には、工場の全社員を対象にした教育イベントを開催しました。講師は、毎年生態系の調査を依頼している茨城県環境管理協会から派遣していただきました。この教育イベントは、社員自らの手で植樹や育成をしてきた「社員の森」の生い立ちや、外部から得られた評価などを共有できる場となりました。リモートも含め、約100名の社員がイベントに参加し、多くの社員がこの工場で働くことに誇りや自信を持てる機会となりました。
教育イベントに出席する社員
また、ほかの企業や外部団体の方々との相互視察や情報交換を行いました。
社員たちは互いに、生物多様性保全への取り組みについての見識を高め、地域の自然環境の保全に貢献できるよう努めています。
外部団体の方々による視察
すみだ事業場は1923年に吾嬬町工場として活動を開始しました。2023年8月に操業100周年を迎え、人と社会と地球にやさしいモノづくり拠点への変革の一環として、場内の緑化整備による環境保護を進めています。
すみだ事業場
すみだ事業場敷地内の緑地面積は、多種多様な在来種中心の樹木を植栽したことにより、約28%増加し、緑地は約12,361m2になりました。樹木の構成は2023年11月現在、高木から中木が計41種類1,479本、低木が4,286本となっています。
敷地内の「すこやかガーデン」では、池を増設したことで、水辺に生息する生物の多様性にも寄与しています。また一部の緑地である「Bunka Park100」は、憩いや交流の広場として地域の皆さまに開放しています。
場内緑地として整備したすこやかガーデン
場内2カ所の緑地には「レインガーデン」を設置しました。ここでは、周辺に降った雨水を集めて一時的に貯留することが可能です。土壌に高い雨水浸透能力部を設けているため、ゲリラ豪雨などの自然災害時には、地下浸透で緩やかに排水することができます。
レインガーデン
これにより、下水道への急激な負荷を軽減し、内水氾濫による地域の災害を防止できるだけでなく、地域の水循環や植栽の生育に必要な水分保持の面でも有益だと考えています。ここには総計約545トンの雨水の貯留が可能です。
ほかにも、廃PETを有効活用したアスファルト舗装*1 の導入や、おかえりブロック*2 を建屋内のサインとして利用するなど、環境に配慮したさまざまな取り組みを行っています。
レインガーデンのしくみ
川崎工場は、川崎市の臨海工業地帯の一角に位置する工場です。2000年、近隣地を購入して新たな工場を建設する際、掘削した残土を盛り上げ、場内に点在していた樹木を移植することにより、常緑樹を中心とした約7,000m2のまとまりのある緑地(西緑地)を造成することができました。
西緑地の造成直後の様子(2001年3月)
以降は手を入れることなく、20年以上にわたり自然の状態を維持してきました。その結果、高低差のある多様な樹木や草木が生い茂る自然の森に成長し、地域有数の緑地となりました。林の間に遊歩道を整備したことで都心の喧噪を忘れられる静けさを取り戻したこの森は、社員の癒しの空間となっています。
西緑地の現在の様子(2023年7月)
2000年以降、地域の生物多様性への配慮という観点から保全の内容を見直しました。たとえば、林内に陽の光が差し込むよう森を間伐し、エコスタックとよばれる生物の棲み家や社員が休める椅子などへ再利用しました。このように、野鳥たちの好む花や実がなる樹木や草木を植え、野鳥の巣箱や石積みなど生物の隠れ家になる、すき間のある構造物を設置しました。また、枯れ木や剪定・伐採後の枝や木からウッドチップをつくり、緑地内の歩道に再利用しています。
2018年、川崎工場は鹿島工場に続き、一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会(ABINC)の「いきもの共生事業所®認証」を取得しました。
緑地内の歩道
川崎工場では、環境調査等を専門とする会社に依頼して、場内の生物モニタリングを毎年行っています。2017年の第一回調査では、243種の生き物が場内で確認されました(植物176種、昆虫類56種、鳥類11種)。その後年々種類が増え、現在は472種の生き物を確認しています(植物286種、昆虫151種、鳥類23種、ほか12種)。なかでも重要種の「カワラヒワ(鳥類)」と「クズハキリバチ(昆虫類)」が確認できたことは嬉しい驚きでした。
外部講師の講義を受ける社員
2019年6月、新入社員を対象に生物モニタリングを開催し、計25人が参加しました。外部講師による生物多様性の講義のあと、身近な緑地に棲む生き物の観察やウマノスズクサの保全活動を体験しました。同年8月に開催した毎年恒例の納涼祭では、社員の親子を対象に、生き物観察会、野鳥の巣箱づくり、緑地で採取した葉を用いた版画づくりを行い、大盛況のイベントとなりました。
新設したビオトープ
2023年、西緑地の樹林と多摩運河沿いの草地の境界に人工池のビオトープを新たに設置しました。5月から6月にかけて、生物の生息・利用の状況を知るためモニタリング調査を実施し、野鳥5種、水性生物5種を確認しました。運河に生息するカニ類は確認されませんでしたが、9月には、誘致の目標対象であったアカテガニの脱皮殻を発見しました。
今後も、これらの生物が生息し、利用できる環境として質を高める活動を進めていきます。
ビオトープ内で発見されたアカテガニの脱皮殻
2017年に場内で実施した第一回生物調査では、都市部では珍しいジャコウアゲハの生息が確認されました。さらにその幼虫の食草となるウマノスズクサの群生が複数の草地で約120株も確認され、関係者一同大変驚きました。本工場が川崎市臨海部におけるジャコウアゲハの繁殖拠点のひとつになっていることを改めて認識でき、以降、社員が中心となってこれらの生物の保全に力を注いでいます。活動の主な内容は、生物多様性事務局から社員へ継続的に情報発信がされています。
場内で羽化したジャコウアゲハ
2022年までに、ウマノスズクサの群生地として管理エリアに指定された地点は、当初確認された4地点から9地点へ拡大しました。毎年春になると、数多くのジャコウアゲハが場内を羽ばたいています。
ウマノスズクサとジャコウアゲハの幼虫
川崎工場では、多くの社員が場内緑地の保全活動やさまざまな植物種を栽培する花壇づくりに取り組んでいます。生物多様性事務局では、生物多様性に関連した活動やイベントの企画・運営を担当し、活動報告として「花壇活動レビュー」を配信しています。これは主に写真を豊富に掲載したレビューで、年3~4回のペースで継続的に行い、2023年4月に100回を迎えました。
今後も事務局は生物多様性の啓発に努め、活動を継続していく予定です。
河津桜の開花情報を伝える発信
なお、このレビューでは、これまでに以下の活動を紹介してきました。
芋つくり活動の進捗状況を伝える発信
小田原事業場は、1969年にカネボウ化粧品の工場として稼働を開始し、2014年に花王グループ化粧品事業に関する研究開発と生産の機能を一体化した事業場として統合・再整備されました。小田原城の北東2.2kmに位置し、東側は富士山と丹沢山地を主な源流とする酒匂川に面しているため良質な水資源に恵まれ、多くの野鳥が飛び交う自然豊かな地域です。
小田原事業場
場内には約9,000m2の緑地があり、植栽樹木のうち90%以上が在来種です。2018年度からは、地域の生物多様性への配慮という観点で新たな保全活動を開始しました。社員の手で在来種の花や実のなる草木を植え、場内の神社や桜並木には野鳥が営巣するための巣箱を設置しました。また、樹木の枝や石を積み上げて生物の棲み処となるエコスタックを作成し、貨物門の緑地エリアに配置しました。
間伐材を利用したビートルアパート
間伐した際に廃材となる樹木の枝や雑草・落ち葉を集めて堆肥化させ、カブトムシなどの生息場所となるビートルアパートに活用したり、テーブルや椅子などへ再利用したりと、残材は肥料化して場内で再利用しています。
間伐材を利用したテーブル
2022年には、事業場の中央に配置した緑地帯「アークスクウェアーガーデン」の東屋の横に、生物たちが生息しやすい水辺環境を整備しました。その後ヤゴなどの水生生物を確認しています。
「アークスクウェアーガーデン」
場内の間伐作業時に発生した樹木の枝を積み上げて生物の隠れ家にしたり、チップにして敷き詰めたりと、カブトムシの幼虫などが育つ環境も整備しました。
なお、2020年には、鹿島工場、川崎工場に続き、一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会(ABINC)の「いきもの共生事業所®認証」を取得しています。
東屋の横に整備した水辺環境
2018年、小田原市が取り組む酒匂川水系のメダカの里親制度に登録し、地域固有の遺伝子を持ったメダカの保護活動に参加しています。
まず、市より5匹のメダカを迎え、水槽での飼育を開始しました。2019年、卵からの孵化に成功し25匹まで増加。2020年には、場内に設けた広いベランダに、より自然に近い環境で産卵できるようメダカの池を設置しました。それ以降、この池でメダカの育成を継続し、一時期は130匹以上にまで増えましたが、ヤゴなどの外敵の影響でメダカが減少してしまいました。
酒匂川水系のメダカ
2023年には、メダカの育成を拡大するため、外部専門家のアドバイスにより、横幅1.8mの大型の水槽を設置しました。水槽の中で事業場近くを流れる酒匂川をイメージしており、流木の上部は箱根、下部にかけては小田原などの土地の起伏を砂利などで表現しています。流木は箱根に自生している植物を使用し、循環した水は箱根側の上流から下流に向かって流れ、徐々に砂利が小さくなるよう設置しています。
メダカを育成している大型水槽
現在のメダカは45匹程度ですが、今後も継続して育成し、100匹以上に増えた時点で小田原市へ返還する予定です。
メダカの水槽の設置場所をエントランスにしたため、働く仲間や見学者の方々の目に触れる機会が増えました。のびのびと過ごすメダカを見ることで、多くの方たちに生物多様性に関心を持っていただきたいと考えています。
酒匂川をイメージしたレイアウト
和歌山工場は敷地面積が約50万m2ある、花王の国内最大の研究・生産拠点です。
和歌山工場とクロマツ防潮林
国の史跡である水軒堤防に属するクロマツ防潮林は、最大幅が約100m、長さは約1kmにわたり、和歌山工場内を縦断しています。和歌山工場ではその保全活動を80年以上行っており、現在は樹齢100年を超すものを含む4,000本以上ものクロマツが場内に生育しています。
2011年、生物多様性の視点でクロマツ林の保全内容の見直しに着手しました。生物調査の結果、コゲラ、シジュウカラ、ヤマガラなど20種を超える野鳥がこのクロマツ林を利用していることが判明しました。その後もアオヒメハナムグリ、ハレヤヒメテントウ、フタイロカミキリモドキなどの比較的珍しい昆虫種が観測されています。
場内のクロマツ
有識者からのアドバイスなどを参考に、クロマツの保全を最優先とするクロマツ保全エリアと、自然遷移に極力任せた管理エリアに分け、それぞれのエリア特性に適した緑地管理手法を採り入れました。クロマツ保全エリアでは、その成長を阻害する他の樹木を可能な限り伐採し、樹間に太陽光が多く採り込めるようにした結果、以前より明るく健全な林になりました。さらに下草刈りや、落ち葉の除去を定期的に行うことで、クロマツの健康状態の向上に努めました。また社員ボランティアが、伐採の跡地の一部に抵抗性のある種の苗木を植樹したことで、クロマツが順調に生育しています。以前は松枯れ対策の薬剤散布を行っていましたが、現在は生態系への影響を考慮し最小限に減らしています。
ウォーキングコースを散歩する社員
社員たちは自ら、保全活動の一環として林内を巡回できる遊歩道を整備しました。水軒堤防の説明や林内で見られる野鳥紹介の看板を入口に立て、クロマツ林と遊歩道が拡がる堤防上部に至るまでの登り坂に緩やかなスロープを造成しました。また、社員の健康増進や気分転換を兼ねたウォーキングコースをオープンし、工場見学者や地元の住民、企業等の希望者にも案内を行っています。さらに、教育委員会等と協力して、地元の小学生向けに、この林を教育の場として活用しています。
遊歩道入口に設置した看板
2023年10月、このクロマツの防潮林を主体とする緑地が、環境省が定める「自然共生サイト」の認定を受けました。これは、30by30(サーティ・バイ・サーティ)*3 達成に向けて「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する制度です。
また、2023年11月には公益財団法人都市緑化機構(会長・矢野龍)が運営する民間事業者が、所有・管理する緑地を客観的に評価する「緑の認定」制度、SEGES(Social and Environmental Green Evaluation System /シージェス: 社会・環境貢献緑地評価システム)から『緑の殿堂』に認定されました。
2023年11月、工場緑地内に生育しているウバメガシの間伐材を紀州備長炭の原料として地元で利用いただく初の試みとして、社員とその家族に炭の窯出しや風鈴製作などを体験してもらい、企業緑地の里山的管理の可能性を探るイベントを開催しました。このイベントは、地域社会との交流促進や社員のリフレッシュを目的としています。1回あたり最低1トンの間伐材を、伐採から1週間以内に準備する必要があるなど、難しい課題がいくつか見えました。それでも関係者や参加者からは大変好評だったため、今後も活動を継続していく予定です。
間伐材を原料とした紀州備長炭の窯出しの様子
2007年和歌山工場は、工業用水として利用している紀ノ川の水源地である紀美野町のみさと天文台近くの山林0.7haを、「花王の森 紀美野」として借り受け、クヌギやコナラなど9種700本を植樹しました。以降、約10年間にわたり、社員と家族による下草刈りなどの保全活動を毎年継続してきました。その結果、樹木が大きく育ち森が再生したことを確認できました。
社員による下草刈りの様子
2017年、和歌山工場は、ススキの群生で有名な県立の自然公園である生石高原の近くに、新たな活動地「花王の森 おいし」の土地0.8haを借り受けました。従来は森林組合に依頼する「地拵え」(じごしらえ:造林や天然更新のため、伐採跡地を整備すること)の段階から、社員のべ106人が参加し、放棄されウツギやカズラなどがはびこる密林に分け入り、ノコギリを使って駆除作業を実施しました。さらに、地域の多様な種の遺伝子を守る目的から、この地に自生する苗木を使った森の再生計画を検討しました。まず地権者の協力により、ウリハダカエデ、カヤ、ハナイカダなどの苗木を採取して鉢植えにしました。次にその鉢植えを複数の社員宅で大切に育て、地拵えを終えたエリアに、モミジ、コナラ、ヤマザクラなども加えた8種67本の苗木を植えました。苗木は防獣柵に守られ現在も順調に育っています。
地拵えの様子
この活動地を、苗木の植樹を行った「自生種」「針葉樹」「針広混交林」の3つの保全ゾーンに分け、それぞれのゾーンの特性に合った保全を行っています。植樹も適宜しながら、社員と家族でこの森を大切に育てています。
自宅で育てた苗木を植樹する社員とその家族
和歌山工場では、場内のクロマツ林における抵抗性クロマツの苗木の植樹活動や企業の森「花王の森 おいし・紀美野」の保全活動となる、地拵え、下草刈り、自生種の苗木の育成や植樹以外にも、社員やその家族が地域の生態系の保全活動に積極的に参加しています。
水軒川沿いの清掃活動の様子
2011年7月、和歌山事業場内に、花王の環境技術に関する最新の情報を発信する「花王エコラボミュージアム」が開館しました。ここでは気候変動、生物多様性などの地球環境問題や、花王の環境分野における技術研究を、一般の方にわかりやすく紹介しています。
花王エコラボミュージアム
2017年、水軒堤防を築いた先人の知恵と工夫や現在の保全活動を地域の子どもたちに知ってもらおうと、和歌山市の元小学校教員や和歌山市教育委員会等の協力を経て、「水軒堤防ものがたり」を完成させました。この冊子は、郷土の歴史について学べる教材になっており、花王のクロマツ林を保全する取り組みについても紹介しています。
和歌山市内のすべての小学4年生を対象とし、これまでに和歌山市に4,000部を寄贈しました。
「水軒堤防ものがたり」贈呈式