花王台湾の工場は、工場が立地する新竹県の政府所有の裸地に、植樹エリアを確保しています。
2018年、外部専門家の協力により、台湾に自生する樹木の苗木100株をこのエリアに植樹するイベントを行い、社員51名が参加しました。同日には、近隣の新竹高鐡駅で、台湾に自生する草木の苗1,000株を旅行客に配布するプログラムが地元NGOにより開催され、ここにも51名の社員が参加しました。
社員による植樹・保全活動の様子
2019年には、社員とその家族103名が、草木の苗計700本を植樹する活動に参加しました。この活動では、前年に植樹した樹木の保護、害虫防除、土壌や水の保全などの対策も実施しました。参加した社員は、植樹した樹木などについての知識をNGOの専門家から学ぶことにより、生物多様性に関する知識を大いに高めることができました。
植樹活動が完了したエリア
この植樹エリアでは、その後も地元の廃棄物を活用したコンポストづくりや昆虫ホテルの作成など、生物多様性に配慮したさまざまな活動を推進しました。2020年には当初の予定どおり、3年間にわたる植樹活動を完了しています。
コンポストづくりの様子
花王台湾では、工場敷地内の緑地において、生物多様性保全に関連する以下の活動も行っています。
家具などの再生木材を用いて鳥の巣箱や教育機能を兼ね備えた昆虫ホテルを製作し、工場の緑地内や水辺付近にそれぞれの生物の隠れ場所や繁殖地となるよう設置しました。近年、台湾固有の鳥類であるタイワンゴシキドリが、営巣のため定期的に樹木を訪れています。昆虫ホテルではアリ類、水辺では両生類の繁殖も確認できました。また、場内の枯れ木を伐採、加工して椅子を作成し、休憩スペースに有効利用しています。
生物モニタリング活動では、場内に生息する種として、哺乳類、爬虫類、両生類、昆虫を確認することができました。来場者や社業員への理解を促すため、緑地付近には鳥類や植物の説明板を設置しています。
場内の林に設置した鳥の巣箱
場内の水辺に設置した昆虫ホテル
場内の林に訪れたタイワンゴシキドリ(社員が撮影)
場内の緑地を利用している鳥類や植物についての説明板
花王ベトナムの工場はBien Hoa(ビエンホア)市に位置しており、主にビューティケア製品の製造を行っています。
2017年、工場内に確保した約1,600m2の裸地に、地域の生態系に配慮した樹木の植樹を社員の手で行い、生物多様性エリアとして保全活動を開始しました。ここは、森林と果樹林の2つのエリアで構成されています。それぞれのエリアは、社員の休憩やコミュニケーションなどの場として広く活用されており、生物多様性に関する社員の意識向上に寄与できると期待されています。
これらのエリアが、いずれは鹿島工場の「社員の森」のような、生物多様性豊かな森に成長することを願っています。
社員による植樹の様子(2017年)
植樹後の現在の様子(2024年)
花王ベトナムの工場が所在するビエンホア市のアマタ工業団地では、毎年6月、環境の日を祝い、工業団地内の緑地を増やす目的で植樹活動を行っています。花王ベトナムは2022年からこの活動に参加しています。
2023年の活動では、工業団地の20社から約200名が参加し、花王ベトナムからも社員8名が参加しました。
植樹エリアは毎年異なります。2023年は、団地内の敷地面積1万5,160m2の空地に、インドシナに広く自生するガージャン・バルサムという樹木を計1,250本植樹しました。活動に参加した社員からは「木を植えることは、CO2を削減し、土地を守り、美しい景観を保つこと、地球を救うことにつながるので、毎年この活動に参加したい」との声が寄せられました。
社員による植樹の様子
植樹活動へ参加した社員
植樹完了後の植樹エリア
ピリピナス花王(以下PKI)は、1979年の創業以来、フィリピンのミンダナオ島において高級アルコール、精製グリセリン、3級アミンなど高品質のケミカル製品を生産しています。
植樹したマングローブの奥に見えるピリピナス花王(PKI)
1990年頃までは、花王の主要原料はココヤシであり、現地にココヤシ農園を保有していました。フィリピン政府の協力のもと、ココヤシの品種を改良し、より収穫量が多い優良のハイブリッド種を育成する研究に取り組みました。ハイブリッド種は通常のココヤシより樹高が低いため、実の採取を行う作業者の落下事故を軽減する効果も期待されました。
植樹されたココヤシの優良種(2010年)
しかし、残念ながらハイブリッド種は一代限りしか育たず、この研究は次世代につなげる成果が得られることなく中止となりました。
PKIは将来的に研究の再開を視野に入れ、この時に採取したココヤシの優良種を事業場内に設けた保護エリアに植樹し、現在もなお大切に育てています。
現在のココヤシの優良種の様子(2024年)
PKIは、2010年に工場周辺の沿岸域などにマングローブ林を復元させる「マングローブ再生プロジェクト」を発足し、フィリピンで開催された「世界湿地デー」のイベントにおいて、環境天然資源省や地元のNGO と協働しマングローブを植樹しました。
種苗場で育成したマングローブの稚樹
以降、毎年植樹を継続してきましたが、なかなかマングローブが根づかず、生存率が低いという悩みを抱えていました。藻などの海草や海に漂っているプラスチックなどが稚樹にひっかかり葉や芽を破壊してしまうため、その成育を阻害することが大きな原因でした。
PKI沿岸のマングローブ林の様子(2019年)
その対策として、沿岸の定期的な清掃活動を実施し、個別の種苗場で稚樹を育て十分に根を成長させてから移植する、稚樹の育成方法の見直しや、夏季から雨季にかけて波が強く、藻の繁殖力が強い時期を避けて植樹する植樹時季の変更などを行ってきました。
PKIがマングローブの維持管理を行ってきたエリアでは、マングローブ林の著しい改善が観察されており、これまでの保全活動の成果と考えています。
PKI沿岸のマングローブ林の様子(2023年)
2023年には、種苗場で大切に育ててきた稚樹約1,000本のうち495本を海岸へ移植しました。特に波の影響が大きい海岸線への移植では、土壌が波で崩れないように上下に穴を空けた筒状のスチールドラムの中に植樹するテストを行いました。沿岸に3本の苗木を植えたドラムを計20個設置し、6カ月後に苗木の状態を確認しました。調査の結果、60本中45本の苗木が無事に生存しており、一定の効果があることを確認できました。
PKIでは、引き続きマングローブの生育に関する研究を、植樹活動と並行して行っていきます。
スチールドラム内に植樹したマングローブの苗木
花王ペナングループ(以下KPG)は、マレーシアにおいてケミカル製品およびビューティケア製品の製造、販売を行っています。
KPGでは、2009年以来、オリジナルの植樹プログラムである「フォスターガーデン」を継続して行っています(COVID-19の影響で中止となった2020~2021年を除く)。
環境に対する責任ある配慮の重要性を学生や人々に啓蒙することで、より生態系に優しい環境づくりを行い、社会に対する責任を果たすことを目的としています。当初はKPGの敷地周辺や同じ地区の学校を中心に実施しました。生徒に対しては、植樹活動を始める前に、清潔に関する説明を行う手指衛生プログラムも実施しました。
学校でのフォスターガーデンつくりの様子
植樹にはすべてマレーシア固有の植物種を用いています。毎年15名ほどの社員がこのプログラムに参加し、これまでにのべ11校で植樹活動を行いました。なお、本活動が評価され、CICM/FMM(化学工業協会)からRC(レスポンシブル・ケア)賞を受賞しています。
マレーシア固有のターネラを植樹する様子
2022年以降、フォスターガーデンの対象を、学校からKPGに隣接するカンプン・ジャワ村のコミュニティに変更しました。同年9月には村の関係者と協働でイベントを開催し、村の入り口へフォスターガーデンの設置などを行いました。2023年2月には村の住民を対象に「コミュニティとの対話およびESG情報共有プログラム」を開催し、KPGの会社概要、環境・安全の活動や廃棄物、危険物、公害対策について村民に説明しました。プログラムでは質疑応答が活発に行われ、好評を博するイベントとなりました。
カンプン・ジャワ村とのイベントの様子
2023年3月、ペナン国立公園で開催された環境生物多様性プログラム「ジャングル・トレッキング」に、KPGの社員とその家族を含む総勢200名が参加しました(環境省、林業・漁業省、マレーシア海軍、マレーシア消防BOMBA、NGOの政府関係者も参加)。トレッキングでは、同行した「自然観光ガイド」から、保安林の樹木や野花について、またこれらの植物がもたらす便益である生態系サービスについて説明を受けました。
トレッキングに参加する社員とその家族
90分を超えるトレッキングのあと、ケラカットビーチのウミガメ・サンクチュアリ・センターで、一部の参加者とその家族が、ウミガメの産卵に適した営巣場所を提供するメラムボンの苗木の植樹活動を実施しました。マレーシアでは、同国のカメの29%が絶滅の危機にさらされているといわれています。KPGは同センターを支援するため、4ユニットの太陽光パネルを寄付しました。
メラムボンの苗木を植樹する参加者
KPGでは、2012年から自然資源である水を節約する目的のもと、場内に降った雨水を貯留し、トイレや植栽の水やりに利用する試みを実施しています。夏場は雨量が少ないという課題はあるものの、現在、年間30kl以上の雨水をリサイクル利用しています。
雨水の貯留タンク
花王インドネシアのカラワン工場では、2021年から、敷地内の緑地において地域の生物多様性に配慮した活動を開始しています。ここは、花や果実を利用する野鳥や昆虫などの生物が多く見られるエリアとなっており、社員の憩いの場になっています。
2021年、植物、鳥類、昆虫といった生物のモニタリング結果を示した生物多様性マップを作成しました。そしてこのマップと、緑地に生息する生物について紹介した看板を、緑地内に設置しました。
カラワン工場ではまた、社員に対して敷地内の生物多様性の理解を促す教育も行っています。
カラワン工場
場内の生物多様性ゾーン
設置された生物多様性の看板と社員教育の様子
花王インドネシアは2016年以来、地域の生態系保全や地域とのコミュニケーション強化等を目的に、カラワン工場が立地している工業団地(KIIC)のテナントや地方自治体、地元の学校などと協働で、毎年植樹活動に参加しています。
今後も関係者とともに、地域生態系の保全活動を継続していく予定です。
植樹の様子(2016年)
植樹したマンゴーの苗木(2022年)
花王インドネシアのチカラン工場は、2015年から、自社緑地において地域の生物多様性に配慮した活動を実施しています。場内には現在、さまざまな国内在来種を育成している生物多様性ゾーンを2カ所設けており、その保全活動を行っています。それぞれのゾーンでは、花や果実を利用する野鳥や昆虫などの生物が多く見られ、社員の憩いの場にもなっています。
生物多様性ゾーン①
生物多様性ゾーン②
2022年には2つの生物多様性ゾーンに、植樹されている植物種について紹介する看板を新たに設置しました。工場見学者や社員の生物多様性の啓発に有効活用しています。
植樹された植物を紹介する看板