アメリカでの生物多様性保全・回復活動

Kao USA Inc.

ビオレパークの造成

1999年、花王USAは敷地内にビオレパークを造成しました。
森林や池を整備したこの公園では、地域に生息する野鳥などの多種多様な生物が利用している様子が見られます。ベンチもいくつか設置しているため、社員の憩いの場にもなっており、時折、この公園を舞台に社内イベントも開催しています。また、それぞれの協力会社が公園内の緑地と池を出入りし整備や管理を行っています。

ビオレパーク

また公園内では、雨水を利用したバケットガーデンの取り組みを行っています。これは、場内に降った雨水を利用した灌漑システムであり、公園でプランター栽培している植物に自動で雨水を供給しています。

バケットガーデンの様子

ビオレパーク内の生物調査

2020年には、外部調査機関に依頼して公園内の生物調査を実施しました。その結果、合計で43種の植物、2種の動物(コットンテールラビット、ウッドチャック)、2種の昆虫(イトトンボ、オオカバマダラ )が確認できました。今後の同定に役立てるため、公園内で見られたそれぞれの種が、オハイオ州ハミルトン郡地域の固有種なのか、あるいは外来種なのかを専門家が分類しました。
この日は意外なことに鳥類が観測できなかったため、2024年の早い時期に専門家に依頼し、敷地内の鳥類学的調査を行う予定です。

Kao Collins Inc.

カナダガンの営巣の見守り

花王コリンズ(Kao Collins Inc.)の建物の屋上では小石を敷き詰めています。この方法は、屋上を保護するために有効で、アメリカでは一般的です。
毎年4月頃、カナダガンが渡ってきてこの屋上で営巣を行っており、春の風物詩となっています。

花王コリンズ

この屋上では毎年、雛が孵り育っていることを確認しています。営巣場所がカナダガンに選ばれている理由として、この屋上の環境が河川敷に類似していること、企業の敷地内かつ屋上なので卵や雛を比較的外敵から守りやすい環境であることが考えられます。なお、屋上は社員の立ち入りが基本的に禁止されています。
花王コリンズは、屋上で営まれるカナダガンの生態をそっと見守っています。

建物屋上で営巣するカナダガン

バタフライ・ガーデン・プロジェクト

2019年、花王コリンズの社員が、地元の小学校とのアースデイプロジェクトの計画として、現在生息数の急減が懸念されるオオカバマダラの生息地となる庭園を造る「バタフライ・ガーデン・プロジェクト」を発案し、現在も保全活動を推進しています。
オオカバマダラは、北米で非常にポピュラーな蝶であり、渡り鳥のようにメキシコと北米との間で渡りをする蝶として有名です。

オオカバマダラ

オオカバマダラの成虫が卵を産む唯一の植物がミルクウィードですが、一般に雑草とみなされるため、庭園などでは伐採されてしまうことが多く、オオカバマダラの幼虫が生育できる場所の減少化が大きな要因と考えられています。そこで、オオカバマダラの幼虫の食草であり、種子で育つスワンプミルクウィードを含む、在来の蝶やハチが好む在来植物種を近隣の学校の一角にある庭に植え、大切に育てています。

スワンプミルクウィード

また、社員は自宅の庭でもミルクウィードを育てており、この活動は全米のオオカバマダラ保護団体より認定を受けています。2019年には社員が採取した種子を各自宅で育てたのち、苗を持参して花王コリンズの花壇に移植しました。以来社員たちは、毎年移植を行っています。ミルクウィードは成熟に数年かかるため、オオカバマダラの幼虫や成虫はまだ確認できていませんが、近い将来に期待し、生育する環境をつくれるよう社員みんなで努力しています。

社員が自宅の庭で育てたミルクウィードの苗

バラフライ・ガーデン

Kao Specialties Americas LLC

花王スペシャルティーズアメリカズ(以下KSA)は、アメリカ合衆国南東部のノースカロライナ州ハイポイント市にある、花王では最大の森林面積を有する会社です。場内には針葉樹と広葉樹の多様な樹木で構成される混交林が広がり、ノースカロライナ州が絶滅のおそれのある種に指定したモリツグミなどの希少な野鳥をはじめ、さまざまな生物が生息しています。

場内の針広混交林

混交林の中にある貯水池の周囲には非舗装の自然遊歩道を整備しており、水辺でガンの親子が暮らしている様子などを見ることができます。

場内の貯水池

生物多様性に関するアセスメント

2019年、KSA では、生物多様性に関するアセスメントとして、自社敷地を含む地域特性(地質、地形、水文循環、生態系など)、敷地内の植生(樹種、草本)、侵入外来種、生物の生息地の現状および今後の可能性、生物モニタリングなどについての検証を実施し、詳細をレポートにまとめました。また、敷地内の緑地を生態学的に区分けしたマップなども作成しています。
本アセスメントの結果を受けて、KSA では、今後の生物多様性保全活動について検討を進めています。また、社員が参画する生物多様性保全の取り組みとして、落ち葉や枯れ枝などの堆肥化についての講習会、ハイポイント市の専門家の指導による森林に生息する生き物の勉強会を兼ねた自然ウォーク、林縁における苗木の植樹活動など、新たな活動を推進しています。

在来の野生植物の植樹

2021年、KSAでは、従来の生物多様性保全活動に加え「2025年までにKSA敷地内に1,000m²(10,764平方フィート) 相当の在来種の野生植物を植える」という活動目標を設定し、その実現に向けた活動を開始しました。この活動の主な目的は以下のとおりです。

  • ミツバチや蝶などの花粉媒介者の生息地の提供
  • 従来の芝地を花の咲く草地に転換することによる芝刈りや必要燃料の削減

以降、毎年11月には、地元の種子農場から入手した米国南東部に生息する野生の花の種を、社員が場内に蒔いています。かつては4月にも野草の種を植えましたが、成長した苗木が渡り鳥のガンにほとんど食べられてしまったことから、秋のみの実施としました。さらに被覆作物を混播(こんぱ)し、問題が軽減するよう努めました。
8月から9月にかけて、これらの植物が色鮮やかに花を咲かせることで、さまざまな昆虫が集まり、社員や配達ドライバーの目を楽しませています。

敷地内の目立つ場所の景観の改善や、花粉媒介生物の食料源となるよう整備の目的を果たすため、自ら購入したノースカロライナ州原産の植物を場内に植樹する活動を、毎年恒例のプログラムとして社員が継続的に実施しています。

色鮮やかな在来の野生植物

植樹の様子

さらに2023年6月、社員の昼食や休憩のために自然の中に静かなスペースをつくるガゼボ・プロジェクトの一環として、地元の造園業者から購入した在来植物を植えた、レイズヘッドとよばれる3つの花壇を敷地内に設置しました。レイズドベッドとは土を盛り、かさ上げする地植えの手法です。これは土壌の保湿や雑草の抑制のために行われ、粘土質であるKSAの土壌づくりを一から行うことで盛り土にすることができ、誤って草刈りされないようにする、という理由から導入しています。

レイズドベッドを設置する社員

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