発表資料: 2025年11月12日

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植物原料由来の高機能パラフィンオイルを開発

潤滑油やデータセンター冷却液など幅広い用途へ応用可能

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)テクノケミカル研究所は、さまざまな機能性を備えたパラフィンオイルを植物原料から開発することに成功しました。今回の成果は、石化由来が主流であったパラフィンオイルの原料に植物を利用するという、新たな選択肢を示すものです。
今回の研究成果は、トライボロジー会議2025 秋 函館(2025年10月8~10日・北海道)にて発表しました。

背景

パラフィンオイルは炭化水素を主成分とする油で、炭素と水素のみで構成されていることから、化学的に極めて安定した性質を持ちます。そのため、医薬品から工業用途に至るまで幅広く使用されており、用途に応じたさまざまな種類が開発されています。こうしたパラフィンオイルの多くは、石油精製もしくは石化原料を用いた化学合成により製造されており、植物原料を用いることは、化学構造の制御や精製工程の複雑さから困難とされてきました。このような中、花王は石化原料だけでなく植物原料からもパラフィンオイルをつくる選択肢を増やすことが、さまざまな産業の持続可能性にとって有益であると考え、技術の開発に取り組みました。

植物原料からパラフィンオイルを製造

植物原料を使いこなすには特別なノウハウが必要ですが、花王は、アブラヤシの実から採れる固体油脂をオレフィンに変換し、そこから洗浄用の界面活性剤「バイオIOS」を製造する技術を確立しています。今回はその技術を応用し、植物由来のオレフィンをパラフィンオイルの原料として利用できるか検討を行いました(図1)。

図1. 植物原料由来のパラフィンオイルのイメージ

中間原料であるオレフィンを単にパラフィンオイルへ変換するだけでは、引火点が低く、流動性も悪いため、実用的なパラフィンオイルとしての性能を満たせません。そのため、パラフィンオイルの分子構造を精密に設計することが必要でした。そこで花王は、長年の界面活性剤研究で培った技術を活かして、独自の触媒を開発。この触媒により、パラフィンオイルの炭素鎖の長さや形を自在に制御し、引火点や粘度、流動性のコントロールができるようになりました。さらに、触媒によって変換プロセスも制御可能になったことで、成分のばらつきが大きい植物原料でも、品質の安定化を実現しました。

花王が開発した植物原料由来のパラフィンオイルの特長

開発したパラフィンオイルは、実用化に向けて有利となる多様な機能性を有することを確認しました。

①高引火点

工業用オイルの一部は火災リスクが高く、非危険物取扱施設では使用が制限されています。一方、本パラフィンオイルは引火点が250℃以上*1 と高く、特別な対策を必要とせず安全に取り扱うことができるため、データセンターの冷却液などにも応用可能です。

  • * 1 花王の研究所にてクリーブランド開放式引火点測定試験器で測定。測定サンプルの動粘度30mm²/s(40℃)。

②優れた粘度特性

一般的なオイルは低温下で粘度が増して流動性が低下するのに対し、本パラフィンオイルは広い温度範囲にわたって低粘度を維持します。この特長は、機械や自動車エンジンの潤滑油や冷却オイルとして用いた場合、ポンプへの負荷を軽減し、燃費やエネルギー効率の低下抑制に寄与します。

③高潤滑性

本パラフィンオイルは潤滑油として用いた場合、金属表面に強固な油膜を形成し、高い潤滑性能を発揮します。この性能によって金属部品間の摩擦を減らし(図2)*2 、部品の長寿命化やメンテナンス頻度の低減が期待できます。

  • * 2 花王の研究所にて、Ball on Disk、Temp. 40℃、Ball Load 50N、SRR 50%、Speed 300mm/sの条件下でMTM(Mini-Traction Machine)で測定。

花王開発のパラフィンオイルが、一般的な潤滑油と比較して摩擦が低いことを表した図

図2. 一般的な潤滑油との摩擦の比較

今後の展望

花王は、今回開発した環境負荷低減と機能性を両立した次世代のパラフィンオイルについて、データセンター向けの冷却液や潤滑油、プロセスオイルなどへの応用をめざしていきます。また、工業用途以外への応用の可能性も探索していきます。

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