使用済み紙おむつ処理の課題解決とCO2排出量の削減をめざす
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、このたび、2021年から研究開発を進めてきた使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステムに関する実証実験を、徳島県上勝町で開始します。本実証実験では、開発した炭素化装置で使用済み紙おむつを半炭化物*1 に加工し、地域で活用する方法を検討します。使用済み紙おむつ処理の課題解決に加え、通常ごみとして焼却されCO2を排出する使用済み紙おむつを、化石燃料の代替燃料として利用することで、CO2排出量の削減をめざします。これは2023年に公表した、半炭化物を土壌改良資材などとして用い炭素を固定する方法*2 とは異なる、新たなアプローチです。本取り組みは2021年から愛媛県西条市で行っている実証実験に続くものです。
使用済み紙おむつは、2030年度には年間約245万~261万トンに達し、一般廃棄物に占める割合は6.6〜7.1%になる見込みです*3 。また、多くの水分を含むため焼却効率を低下させる要因ともなっており、高齢化に伴う使用量増加とともに、ごみ処理に対応する自治体の負担となっています。
花王は、使用済み紙おむつを半炭化して資源として活用するシステムを構築し、処理の課題解決とCO2排出量の削減をめざします。
その実現に向けて、使用済み紙おむつを半炭化できる炭素化装置を開発しています。花王独自の熱分解技術により、燃焼に至らない低温で水分を除去し、炭素を多く含む半炭化物に加工します。殺菌・消臭が行われ衛生的に処理できるほか、発生場所で処理ができ、体積も小さくなるため回収負担が軽減できます。
生成された半炭化物は、利用する地域の意向に応じて土壌改良資材や燃料としての活用を想定しています。これまでの半炭化物に炭素を固定する方法に加えて、化石燃料の代替燃料として利用する2つの方法で、CO2排出量削減につながる可能性を確認しています。
西条市内の保育施設に、花王が開発した炭素化装置1号機を2021年11月に設置しました。本装置により、使用済み紙おむつの体積を約20分の1にまで減らし、炭素を多く含む半炭化物の加工にも成功しています。また、生成された半炭化物は高い燃焼熱を備えており、従来の化石燃料の代替品となる燃料として活用できることがわかりました。通常ごみとして焼却されCO2を排出する使用済み紙おむつを、化石燃料の代替燃料として利用することで、結果としてCO2排出量を削減することをめざしています。
左から、開発した炭素化装置、使用済み紙おむつを投入する様子、半炭化物
徳島県上勝町で本リサイクルシステムの社会実装を見据えた実証実験を開始します。上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)*4 内のごみステーションに炭素化装置2号機を設置します。2号機は、西条市に設置した1号機と比べ、1回あたりの最大処理量が約30kgから50kgに拡大し、より多くの量を一度に処理できる仕様となっています。また、1号機よりも少ないエネルギーでの処理が可能です。
本実証実験では、住民が持ち込んだ使用済み紙おむつを炭素化装置で処理します。高齢者を含む幅広い世代が無理なく日常的に利用できるかどうかを検証します。装置で加工される半炭化物は、化石燃料の代わりに燃料として活用していきます。
なお、花王と上勝町は本実証実験の実施にあたり包括連携協定を締結しました。
左から、上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)全景と、センター内のごみステーション
本実証実験は、花王が2021年から進めてきた使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステムの取り組みを発展させるものです。これまでの半炭化物への炭素固定による活用方法に加えて、今回新たに燃料としての地域活用を打ち出しました。上勝町での実証実験では、病院等の大規模施設への設置も想定しながら社会実装に必要な要素を明らかにし、2025年以降の社会実装を見据えています。これらの取り組みを通じて、使用済み紙おむつの資源化と活用を進め、使用済み紙おむつ処理の課題解決とCO2排出量の削減をめざします。
花王グループは130年以上にわたり、「豊かな共生世界の実現」、つまり「Kirei Lifestyle」(キレイライフスタイル)の実現に取り組んでいます。日本語の「きれい」という言葉は、清潔、秩序、美、といったすべての状態を意味しています。「きれい」とは、外見だけではありません。自分のため、他の人々のため、私たちをとりまく自然界のため、美しさを創造しようとする生き方をも表します。花王グループは、生活者の持続可能な暮らしの実現をめざし、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を策定しました。2030年までに少なくとも10億人が、よりこころ豊かな暮らしを送り、100%の製品が全ライフスタイルにおいて、科学的に地球が許容できる範囲内の環境フットプリントとなることをめざしています。
詳細は、花王ウェブサイト内「サステナビリティ」をご覧ください。