花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、「サステイナブル界面活性剤-内部オレフィンスルホン酸塩の製造技術開発」に関し、公益社団法人日本化学会第72回(2023年度)「化学技術賞」を受賞しました。この賞は、日本の化学工業の技術に関して特に顕著な業績が表彰されるもので、今回、花王は4回目の受賞となります。
世界的な人口の増加や生活水準の向上に伴って、界面活性剤の需要の増加が見込まれています。このような社会背景の下、人々の清潔な生活を持続可能にするためには、界面活性剤に使用可能な原料を確保する必要があります。
そこで花王は、パーム油の中でも食用と競合しにくく、用途が限られているオレイン系油脂の固体部を原料として活用し、2019年にサステイナブル界面活性剤「バイオIOS(内部オレフィンスルホン酸塩)」を開発しました*1 。「バイオIOS」は、構造として炭素数が16~18の長いアルキル鎖を持ち、その中間部に水になじみやすい親水基を有するとてもユニークな界面活性剤です。「バイオIOS」は、オレイン系油脂から得られる天然アルコールを内部オレフィンに変換する工程と、内部オレフィンを内部オレフィンスルホン酸塩に変換する工程により製造されます。今回、「バイオIOS」の品質の向上と安定的な製造供給を両立するための工業化技術の開発に取り組みました。
次のような製造技術の開発により、高品質な「バイオIOS」の大量安定供給が可能となりました。
花王は、「バイオIOS」を衣料用濃縮液体洗剤「アタックZERO」に配合し、2019年から実用化しました。
バイオIOSが配合されている「アタックZEROシリーズ」
現在花王は、オープンイノーベーションによる協業を推進しています。「バイオIOS」についても、海外も含めた生産・販売を通して、サステイナブルな社会の実現に向けて貢献してまいります。
第41回(1992年度) 合成セラミドを主成分とする生体脂質類似皮膚化粧料の開発
第59回(2010年度) 亜臨界水を用いた界面活性剤製造法の開発と工業化
第69回(2020年度) マイクロ化学に基づく動的界面制御による革新的微細乳化技術と実用化