花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所、加工プロセス研究所は、独自製法により、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸ソルビタンを含む両親媒性成分*2 からなる“紫外線防御剤内包カプセル”を配合した世界初*1 の日やけ止め処方を開発しました。
本技術により、日やけ止め剤を肌のミクロンレベル*3 の隙間までムラなく塗ることが可能となりました。
なお、本研究成果の一部は、「第1回日本フォトダーマトロジー学会・学術大会(大阪) 2018年10月26日開催」にて発表しました。
本研究で得られた知見は、今後のサンケアの研究開発に生かしていきます。
日やけ止め(当社従来品)を肌に塗り、その表面の状態を観察すると、ミクロンレベルで日やけ止め剤が肌に不均一に分布していることがわかりました。そこで、日やけ止め剤をムラなく均一に肌を覆うことをめざし検討を行ないました。
まず、独自製法により両親媒性固体脂を含む成分で紫外線防御剤を内包したカプセルを調製し、さらに、カプセルの大きさをサブミクロンレベル*4 にした日やけ止め処方の開発品を作製しました。
顔の肌表面での紫外線防御剤を含む塗膜の均一性を評価したところ、図1に示すように当社従来品と開発品に大きな差は観察されませんでした。
しかし、顕微鏡でミクロンレベルの観察を行ない、両者を比較したところ、図2に示すように当社従来品は紫外線防御剤を含む塗膜の状態にムラがあるのに対して、開発品はほとんどムラがなく均一な塗膜の状態であることがわかりました。この技術の開発により、日やけ止め剤をミクロンレベルの隙間まで均一に塗布でき、塗りムラを防ぐ性能を高めることができました。
日やけ止め処方の紫外線防御剤は油溶性の成分が多いため、O/W型(水中油型)乳化物の場合、油相部分は紫外線を防御できても、水相部分は揮発するとその部分は隙間となり紫外線が透過し易くなります(図3)。この水相部分に水溶性の紫外線防御剤を使用しても水に溶けるため、汗や水で落ち易いという課題があります。そこで、図4に示すように水にも油にも親和性を持つ両親媒性の固体脂をカプセル化剤として、油溶性の紫外線防御剤を内包した微小なカプセルを調製し水相に分散することで、水相が揮発しても紫外線防御剤で隙間を被覆することができる日やけ止め処方の開発を行ないました。
隙間のない被覆を実現するのに必要とされるカプセルの大きさを決定するため、被覆率とカプセルの大きさの関係のシミュレーションを行ないました。その結果、図5に示すようにカプセルをサブミクロンレベルまで小さくすれば被覆率が最も高くなることがわかりました。さらにサブミクロンレベルのカプセルの製法について、高圧乳化と急速冷却を組み合わせた独自プロセスを開発し、油溶性紫外線防御剤を内包したサブミクロンレベルのカプセルを得ることに成功しました(図6)。
太陽光に含まれる紫外線は日やけ、日やけによるシミ、シワ等を引き起こす原因にもなります。このようなダメージを与える紫外線を防ぐ目的で日やけ止めが使用されていますが、まだ日やけを経験する場面が少なからずあることがわかりました。(2016年 花王調べ)
このような課題に対して、花王では実際の生活場面で塗りムラをなくすことで、紫外線からしっかり肌を守ることをめざし、塗膜解析技術およびカプセル化技術、塗膜形成技術を融合したサンケア技術開発の本質研究に取り組んでまいりました。その結果、独自の製法により紫外線防御剤を内包したサブミクロンレベルのカプセルを配合した日やけ止め処方を開発し、肌の上でのミクロンレベルの塗りムラを防ぐ均一な紫外線防御膜の形成技術を実現しました。
*本資料は、重工記者クラブに配信しています。
花王株式会社 広報部
※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。