発表資料: 2017年06月07日

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シワ・たるみ部位で真皮ヒアルロン酸の代謝バランスがくずれていることを発見

「第11回 国際ヒアルロン酸学会」にて発表

花王株式会社(社長・澤田道隆)・生物科学研究所は、真皮にあるヒアルロン酸の合成と分解の代謝バランスがくずれることによってヒアルロン酸量が低下し、そのヒアルロン酸量の低下がシワやたるみの形成と深く関連していることを発見しました。ヒアルロン酸は皮膚組織の水分保持を担う分子として広く認識されていますが、今回の発見は、ヒアルロン酸が老化に伴う肌形状変化にも大きく関与していることを改めて示す結果となりました。このことから、ハリのある健康な肌を保つためにはヒアルロン酸の合成だけでなく、分解のバランスを整えることが非常に重要といえます。

今回の研究成果は、6月11日~15日に米国で開催される「第11回国際ヒアルロン酸学会(International Society for Hyaluronan Science・11th International Conference)」にて発表する予定です。

花王グループのヒアルロン酸代謝研究

花王グループでは、長年にわたりヒアルロン酸研究を続けてきました。皮膚でのヒアルロン酸の半減期は数日といわれ、日々合成と分解を繰り返しています。花王グループでは、1981年より(当時はカネボウ化粧品での研究*1 )、ヒアルロン酸の合成のしくみやその制御について、業界の先駆けとなる多くの知見を蓄積してきました。さらに、長年不明のままであった分解に関するメカニズムについても研究を続け、2013年、当研究チームは、皮膚真皮のヒアルロン酸分解の律速因子を発見*2 。HYBID(HYaluronan Binding protein Involved in hyaluronan Depolymerization)と名づけました。これにより、皮膚ヒアルロン酸の合成と分解の様子を同時に観察することが可能となっています。

  1. *1 2014年の化粧品研究一体化に伴い、現在ヒアルロン酸研究は花王株式会社で行なっています。
  2. *2 Proc Natl Acad Sci U S A. 110(14), 5612 (2013). ※この研究成果は、2013年3月19日発表のニュースリリースにて紹介

今回の新知見1 真皮ヒアルロン酸量がシワやたるみに関連することを発見

ヒアルロン酸は生体内で最も大きな分子として存在する高分子ポリマーです。ヒアルロン酸は、長い糖鎖からなる網目構造に水分子を取り込むことで皮膚組織の水分を保持しています。さらに、真皮ヒアルロン酸は、コラーゲン線維の剛直な壁に仕切られているため、膨潤圧を生じます(図1)。このことによりヒアルロン酸は水分を保持するだけでなく、肌の弾力性など、物性にも関与すると考えられてきました。しかしながら、これまでヒアルロン酸と皮膚形状との関連性についての詳細は、明らかになっていませんでした。

図1 ヒアルロン酸の皮膚物性への関与(モデル)

図1 ヒアルロン酸の皮膚物性への関与(モデル)

今回、目尻のシワおよびたるみとヒアルロン酸量との関連性について解析したところ、シワが深いほど、またたるみが大きいほど、真皮のヒアルロン酸量が低下していることを発見しました(図2)。このことにより、真皮ヒアルロン酸が老化に伴う皮膚形状変化に深く関与していることが明らかになりました。

図2 シワ・たるみと皮膚ヒアルロン酸量との関係

図2 シワ・たるみと皮膚ヒアルロン酸量との関係

今回の新知見2 シワ部位でヒアルロン酸の代謝バランスがくずれていることを発見

皮膚の老化は紫外線の影響により進行することが知られています(光老化)。日常的に光を浴びシワが形成されている目尻と、光を浴びない上腕内側部のヒアルロン酸量を比較したところ、目尻の皮膚真皮でヒアルロン酸の量が顕著に低下していることがわかりました(図3)。

図3 光老化による皮膚ヒアルロン酸量の減少

図3 光老化による皮膚ヒアルロン酸量の減少

ヒアルロン酸は代謝回転が速いため、その量は合成と分解のバランスにより調節されています。そこで、ヒアルロン酸量が低下する要因を解明するため、真皮ヒアルロン酸の分解律速因子HYBID遺伝子と、合成を調節するHAS2(ヒアルロン酸合成酵素2)遺伝子の発現の様子を、シワのある目尻部位と上腕内側部において比較しました。その結果、光露光部である目尻の皮膚真皮では、ヒアルロン酸分解に関与するHYBID遺伝子の発現量が亢進しており、合成に関与するHAS2遺伝子の発現量は逆に低下していることを見いだしました。これらのことから、光を浴びる顔部では、ヒアルロン酸の分解能力が合成能力を上回り、その結果、真皮のヒアルロン酸が減少することが明らかとなりました(図4)。

図4 光老化による真皮ヒアルロン酸代謝バランスのくずれ

図4 光老化による真皮ヒアルロン酸代謝バランスのくずれ

今回の研究から、ヒアルロン酸が生体内ゲルとして皮膚真皮組織の水分代謝に関わるだけでなく、シワやたるみといったエイジングに関わる皮膚形状変化にも深く関連していることが明らかになりました。さらに、皮膚形状変化が進んだ部位では、ヒアルロン酸の分解能力が高まり、一方で合成能力は低下し、その結果、分解能力が合成能力を上回ることで、ヒアルロン酸量が減少していることもわかりました。このことから、すこやかな肌を保つためには、真皮ヒアルロン酸の合成と分解のバランスを保つことが重要であると考えます。

今後、花王グループではヒアルロン酸代謝研究をさらに深めるとともに、肌の機能をすこやかに保つ技術の提案をめざしていきます。

なお、今回の研究成果は、6月11日~15日に米国で開催される「第11回国際ヒアルロン酸学会(International Society for Hyaluronan Science・11th International Conference)」にて発表する予定です。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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