株主・投資家の皆さまへのトップメッセージ

「持続可能な社会」に向けて挑戦を続ける企業として

持続可能な社会とは、現在を生きる私たちが、未来の世代に引き継ぐべき環境や社会のしくみのことです。しかし、地球環境は人類の快適な生活を追求するあまり、再生可能なバランスを崩しつつあります。今こそ私たちは立ち止まり、過剰な消費や廃棄を抑えながら、持続可能な発展の道を築く必要があります。
消費財を扱う企業が「消費を最小限に」と言うと、違和感を覚えるかもしれません。しかし、まさに消費財企業だからこそ、消費のあり方に責任をもつべきです。花王は、循環型社会の実現に向けて、社会の模範となる企業をめざし挑戦しています。そのために、私たちは以下の取り組みを進めています。

  • お客さまに愛され求められる、価値の高い製品をつくること
  • お客さまの声に耳を傾け、常に製品を進化させること
  • 必要としない人に届けず、無駄な廃棄を生まないこと
  • 厳選した原料を用い、少ない資源で最大の価値を提供すること

花王は「最小限の消費で最大限の価値を提供する」という姿勢を貫き、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

本質的な価値を追求する「よきモノづくり」

花王の「よきモノづくり」は、商品開発五原則に基づいています。その五原則とは、①社会的有用性、②独自性、③コストパフォーマンス、④品質、⑤マーケティングです。

商品開発五原則

  1. 社会的有用性:時代や生活者のニーズや変化を見極めながら、より深刻な社会課題に目を向け、本質的な価値を設計します。
  2. 独自性:競争力のある技術とアイデアを活用し、他社をしのぐ独自の提供価値を志しています。
  3. コストパフォーマンス:かかったコストに対して、どれだけの価値を提供できるかを常に考え、経済合理性のある仕事を追求します。現在では、事業別ROICを導入し、きめ細かな活動に落とし込んでいます。
  4. 品質:お客さまに届ける製品が、どのような条件下でも価値を損なうことなく、常に高い品質を維持できることをめざします。結果として、高いブランドロイヤリティが確立して、顧客に長く愛される製品づくりとなります。
  5. マーケティング:製品の価値をお客さまに適切に伝え、認知される工夫を行います。花王では、科学的根拠に基づくマーケティングを基盤としています。

これらの原則に基づき、花王は信頼されるブランドとしての地位を築いています。

めざすべき未来「グローバル・シャープトップ」

私たちが「よきモノづくり」でめざすのは、「グローバル・シャープトップ」です。これは、重要度が高い深刻な社会課題に対し、エッジの効いた独自の技術で解決を図ることで事業を成長させ、サステナブルな社会にとってなくてはならない企業になることを意味します。花王は、この目標を実現するために挑戦を続けます。

コア技術の活用と共創でイノベーションを生み出す

二律背反を両立させる界面科学の力

花王のコア技術の中核をなすのは、界面科学です。水と油、無機物と有機物など、性質の異なる物質が接する界面は、地球上のあらゆるところに存在します。私たちは、この界面の性質を大きく変え、これまで両立が難しいとされていた二律背反の性質を相乗的に機能させる技術を得意としています。このコア技術は、ケミカル事業から化粧品事業まで幅広く活用され、各分野の技術開発が相互に進化を促しています。
さらに、経済合理性と環境保全の両立を実現するための重要な役割も果たしています。現在、以下のような取り組みを加速させています。

  • 使用済み容器を廃棄せず高耐久道路の材料へと再利用する事業
  • 難溶性の天然原料から高性能活性剤を生み出す事業

これらの事業を通じて、環境負荷を低減しながら、新たな価値を生み出しています。

共創によるイノベーションの加速

しかし、独自性を追求するだけでは、世の中への貢献を広く、早く実現することは困難です。自社だけですべてを完結させようとする考え方(自前主義)からの脱却が不可欠です。
私たちがめざすのは、常に革新を生み出す「イノベーション」です。そのため、花王の独自技術を活かしながら、共創を通じてグローバル化を加速させていきます。私たちには「持たざる強み」があり、ほかの企業と共創することで、開発のスピードと技術レベルを向上させることができます。実際に2024年は、大手家電企業、虫ケア企業、ASEAN大手販売グループとの新たな挑戦をスタートさせました。これからも、花王は共創を通じて革新を生み出し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

事業ポートフォリオをもとに変革を加速

2022年、花王は経営マネジメントを大きく変革し、事業を安定収益領域、成長ドライバー領域及び事業変革領域の3つに区分けしました。この区分の目的は、各事業の目標と役割を明確化し、それに応じた投資配分を最適化することです。現在、中期経営計画「K27」の目標に向け、すべて順調に進んでいます。
2023年からは、さらに組織体制のグローバル変革を進めています。これまでの「日本を起点としたビジネスモデル」から、「グローバルを軸とするビジネスモデル」への転換を加速させています。

1. グローバルコンシューマーケア部門の新設

日用品事業は、グローバルでの成長体制への完全移行を見据え、「ブランド・製品」を軸とする事業ベースと、「地域・販売」を軸とするエリアベースに再編しました。これにより、意思決定の迅速化を図ります。また、ブランド・製品を横断した事業の推進、直販の強化、パートナー企業との共創を促進するため、「ビジネスコネクティッド部門」を新設しました。これにより、各ブランドの特徴を活かした限定販売の企画や、グローバル企業との連携を活発に行います。

2. 経営財務ユニットの新設

グローバル事業の優先度や投資配分を本社が主導するため、新たに「経営財務ユニット」を設立しました。資本戦略部の構想をもとに、各エリアの財務採算性を向上させ、成長のための投資を最適に配分します。本社と現場が緊密に対話しながら、冷静かつ的確な投資判断を行います。

3.デジタル戦略の強化

「情報システム部門」は「デジタル戦略部門」に統合され、グローバルでのデジタル化推進機能を一元化しました。これにより、デジタル技術を活用したビジネスの効率化と成長を加速させます。

現状不満足の社員の力を最大化

花王の中期経営計画「K27」では、基本方針のひとつとして「社員活力の最大化」を掲げています。花王では、「人財は育てるものではなく、機会を与えることで育つもの」という考えが根づいており、私自身もその環境の中で成長してきました。「グローバル・シャープトップ」戦略を支える人財を育成するためには、メリハリのある人的資本投資が不可欠です。また、社員一人ひとりが常に変革を求め、「現状に満足しない」意識をもつことが重要だと考えています。

1. 成長意欲を高める環境づくり

社員が成長するためには、「心の新陳代謝」も重要です。そのため、花王ではキャリア採用を積極的に推進し、現在では採用者の約50%が外部人財となっています。新しい人財を迎えることで、新たな視点や気づきを得ることができ、組織の活性化につながっています。また、社員が自らの興味や意欲に基づいて、経営戦略に直結するポジションに応募できる「社内公募制度」や「シニア公募制度」も拡大し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。

2. スクラム型の組織運営へ進化

意欲ある人財が最大限に活躍できるよう、組織運営を「マトリックス型」から「スクラム型」へ進化させました。これは、ラグビーのように選手(社員)がそれぞれの特徴に応じた役割を担い、個々の強みを活かして協力し合う体制です。このアプローチにより、ヘアケア事業におけるスピーディな製品開発など、すでに具体的な成果が生まれています。

3. 継続的な対話による組織活性化

花王では、社員の成長と組織の活性化のため、継続的な対話を重要視しています。その一環として、2021年からOKR(Objectives and Key Results)を導入しました。現在、全社員がシステム上でほかの社員のOKRを閲覧できるしくみを整えています。これにより、グローバルな対話や連携が促進され、組織全体での協力が強化されています。

「The Kao Way」— 花王の企業理念

「The Kao Way」は、社員一人ひとりに深く根づいている企業理念です。この理念を軸にすることで、すべての活動が一貫し、多様な資産や社員の力を結集する原動力となります。

「K27」と「グローバル・シャープトップ」戦略

「K27」では、世界の中で誰かにとって「欠かせない一番」になることを目標とし、その思いを「グローバル・シャープトップ」という戦略に込めました。
そして、何よりも重要なのは「人の力」です。社員の活力を最大限に引き出し、創造と革新を通じて、ESG視点の「よきモノづくり」を進化させていきます。
花王は、「量から質の経済」へと世界のあり方を示しながら挑戦を続け、次なる発展の道を歩み、持続可能な社会に欠かせない唯一無二の企業をめざします。

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