感染症研究
蚊は、人にとって地球上で最も危険な生き物のひとつです。蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの病気によって毎年70万人以上が亡くなり、その多くは5歳以下の子どもです。
花王では、蚊に刺されなければ守られる未来のいのちを守りたい、かつ日々の家族の時間を大切に過ごせるようにしたい、という気持ちから、毎日の暮らしに寄り添う、家族みんなで使える蚊対策製品の開発と、そのために必要な基礎研究を進めてきました。
蚊の体の表面には鱗や毛のような細かい構造があり、かつそのひとつひとつがワックスのような疎水性の成分で覆われています。そのため水をはじく性質が極めて強い一方で、化粧品や日用品に多く使われるシリコーンオイルや界面活性剤水溶液ではすばやくぬれることを見いだしました。
シリコーンオイルを塗布した表面に蚊が降り立とうとすると、脚がぬれてオイルに引き込まれるような力が生じ、蚊が即座に飛び去ることがわかりました。この知見により、従来の揮発性化合物を使った忌避剤とは異なる、新しい物理的作用による忌避が可能となりました。
また、界面活性剤水溶液をスプレーすると、蚊の翅(はね)がぬれ、蚊が翅をうまく動かすことができなくなるため、落下することがわかりました。特に表面張力の低い界面活性剤水溶液は、蚊を落とすだけでなくノックダウン状態を引き起こすこともわかりました。
本技術の実装により、従来の化学合成殺虫成分を使わなくても蚊を駆除できるようになりました。