レインボー染料を用いた酸化型ヘアカラーの性能と新しい視覚効果

ヘアカラー

ヘアカラーは見た目を美しく装うだけでなく、人々に自信や活力を与えることができることから、世界中の生活者にとって身近な存在です。ヘアカラー剤に入っている染料は、あらかじめ着色した直接染料と、染色過程で着色させる酸化染料に大別されます。直接染料は、分子サイズが大きく、染色性や堅牢性に劣る場合が多いことが特徴です。酸化染料は、浸透の過程で染料前駆体と調色剤が共有結合を形成しながら分子サイズを獲得するため、浸透と定着のバランスに優れていますが、一部の酸化染料には、皮膚にかぶれなどの症状を引き起こすケースがあります。花王では、酸化型ヘアカラー製品に使用できる直接染料の開発に着手しました。

直接染料の開発要件として、アレルギーリスクが低いこと、酸化型ヘアカラー処方系で安定なこと、アルカリ性で毛髪に浸透しやすいこと、皮膚に着色しないこと、が挙げられます。最終的に、共通してフェノール性の水酸基を有する、鮮やかな黄/赤/青の三種類の解離型アゾ染料(以後、レインボー染料)の開発に至りました(図1)。

レインボー染料と汎用直接染料による染毛性比較。レインボー染料は汎用直接染料と比べて鮮やかな発色を示している。

図1. 酸化型ヘアカラー処方系での染毛性(pH10/過酸化水素3%)

“レインボー染料”の特長は以下のとおりです。

  1. 三次元的で奥行きのある高精細な発色
    花王が毛髪研究で培った毛髪内への染料の浸透深度を精密に制御する技術と、富士フイルムが写真感光材料の研究開発で培った染料の分子設計・合成技術との融合により、毛髪内部への染料の浸透深度を自在にコントロールして奥行き感のある立体的な発色を実現
  2. 自在に色彩表現できる調色
    鮮やかな3原色(赤、青、黄)の染料の組み合わせで、幅広い色合いを自在に表現可能
  3. 非反応性と高い持続性を両立
    染料の分子サイズと電荷制御の独創的な設計により、皮膚は染まり難く、毛髪は染まり易い特性を持つと共に、高い持続性もあわせ持つ

レインボー染料を配合したヘアカラーで頭髪を処理すると、毛髪の動きや光の当たり方の違いで、見る角度に応じて髪色が鮮やかに変化して見えます(ムービング効果)。このレインボー染料テクノロジーを、サロン向けヘアカラーリング製品としてグローバルに展開しています。

動画 レインボー染料によるムービング効果

次の動画には音声がありません。動画の映像情報を書き起こしたテキストを用意しています。

動画のテキスト版はこちら

この動画は、長さ20cm程度の髪の毛の束を、レインボー染料を配合したヘアカラーで染色し、毛束を動かした際に、髪色が変化して見える様子を示したものです。棒を使い、毛束を持ち上げると、持ち上げられた凸部分には鮮やかな色ツヤが見えます。一方、凸部分の上方にできるくぼみでは凸部分とは異なった濃い青味が見えてきます。このように見る角度に応じて、色味やツヤがダイナミックに変化する効果をムービング効果と呼びます。

Page Top