においを認識する嗅覚受容体の研究

香り・悪臭制御

ヒトの鼻には約400種類の嗅覚受容体が存在しています。嗅覚受容体が特定の種類の揮発性物質を認識し、その情報が脳に伝わると、においを認識することができます(動画)。

嗅覚受容体の解析は難しく、受容体のほとんどがどのようなにおい分子を認識する機能があるのかわかっていません。嗅覚受容体の多くが培養細胞上では不安定であるため、培養細胞の外側から香料を投与して受容体の反応を調べる実験は困難だとされてきました。

花王ではこの課題を解決するために、タンパク質工学的なアプローチを取り入れることで、嗅覚受容体を安定的な膜タンパク質として培養細胞の表面につくらせることに成功しています。一例として、ムスクの香りを持つ香料素材を認識する受容体OR5A2を特定しました。そしてOR5A2が認識した香料と認識しなかった香料の化学構造情報から機械学習モデルを構築し、ある物質がムスクの香りを感じさせるものであるかどうかを優れた精度で予測することも可能になりました*1 (図1)。

ムスク香料を網羅的に認識する嗅覚受容体の発見によって、ある物質がムスクの香りを持つかどうかを予測することができようになった。

図1. ムスク香料を網羅的に認識する嗅覚受容体の発見とムスク香料予測モデルの構築

本研究で確立した方法によって、においの感覚が嗅覚受容体を介してどのように生み出されているのかという嗅覚の本質についての理解も深まると考えられます。

嗅覚受容体での揮発性物質のセンシングから脳のにおい認識までの流れ

次の動画には音声がありません。動画の映像情報を書き起こしたテキストを用意しています。

動画のテキスト版はこちら

この動画は、においを感じる時に鼻と脳で起きていることを説明する。

0:00ベーカリーに入っていく女性が、パンのにおいを感じる様子が描かれている。
0:06場面は女性の鼻の内側に変わり、パンを由来とするにおい物質が鼻の奥の嗅神経によって認識される。
0:18嗅神経が拡大され、嗅神経が嗅覚受容体をセンサーとして用いてにおい物質を検知すると、嗅神経が興奮する
0:27鼻の嗅神経に生じた興奮が、脳に伝わっていく
0:33パンのにおい物質に対する約400嗅覚受容体の応答パターンが、脳で神経の活動パターンとして表れ、パンのにおいとして感じる

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