皮膚科学
皮膚のうるおいを保ち、外からの異物の侵入を防ぐバリア機能に重要な役割を果たしている角層細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、硫酸コレステロールなどで構成されています。
花王では、肌悩みにあったスキンケア製品を提案するために、細胞間脂質の量やバランスを知り、皮膚性状を理解するための技術開発を進めています。
一般的に、極性や鎖長の異なる脂質群を一度に分析することは困難です。
花王は、微量で多様な個々の分子を高感度かつ一斉に検出するため、質量分析計のイオン化法にはエレクトロスプレーイオン化(ESI)と大気圧化学イオン化(APCI)を同時に行うマルチイオン化法を採用しました。
また、1つの脂質分子から複数の検出イオン種が無作為に生成されて感度が分散するのを抑えるため、イオン化促進剤を工夫し、検出イオンを1つに集約しました。定量については、代表的な構造のセラミドを合成して検量線を作成し、鎖長の異なるセラミドは検出感度の補正を行い、200種類を超える分子の定量を可能にしました。
これらの解析技術*1 を用いることで、たとえば、アトピー性皮膚炎において、皮膚バリア機能の指標である経皮水分蒸散量(TEWL)の上昇に応じてセラミドNSタイプに対するNPタイプの存在比率(Cer [NP]/[NS])が低下することを発見しました*2 。
今後も解析技術を通じて、深い肌悩みを抱える方に寄り添うスキンケアの提案に繋げていきます。
細胞間脂質の網羅解析
NP/NSと経皮水分蒸散量の関連性