紫外線が関与する髪のうねりに関する研究

毛髪科学

深刻な髪悩みの1つとして、髪のうねりが挙げられます。うねりは、髪のキメ(毛流れが揃った状態)を乱して見た目の印象を損なうだけでなく、触れた時の感触(ぱさつき、ごわつきなど)にも影響します。

花王では、頭髪の実態観察を進める中で、髪をめくり上げた内側に比べ、頭髪の表層で顕著にうねりが多いことを見いだしました(図1)。これは俗に、浮き毛・ハネ毛などと表現され、生活者も日常生活の中で実感する身近な悩みごとと言えます。

本研究では、髪を多面的に解析し、うねりが発生するメカニズムを調べました。
特に、頭髪表層に集中する紫外線や外力(枕とのこすれによる変形等)の複合的な要因に着目し、分光やX線構造解析を駆使して、毛髪の内部で起こる現象を詳細に解析しました。結果、紫外線によって毛髪タンパク質のジスルフィド(SS)結合が切断され、結合の一部が外力でひずんだ状態で再結合することがわかりました(図2)。
これにより、意図せずに不規則な髪の形状が記憶され、パーマと類似したしくみでうねりが発生することが示唆されました*1

本知見の情報発信を通じて、生活者の髪のUVケア意識を高めると共に、肌だけでなく髪にも効果的かつ使いやすいUVケア製品の開発へ活かしていきます。

  • * 1 Tamura, T. (2024). Hair Frizz Caused by the Combined Effect of Ultraviolet Rays and External Forces and Development of Sunscreen for Hair. SPring-8/SACLA Information, 29(1), 2-5.

頭髪の表層とめくりあげた内側から採取した毛髪を、洗髪しセットを取り除いた状態で一本一本の形状を観察した。表層では根本から毛先側の全域にわたってうねりが顕著である一方、内側ではまっすぐな形状である。

図1

うねりが発生するメカニズムのイメージ図。毛髪を構成するタンパク質にはジスルフィド(S-S)結合が含まれ、紫外線の影響で切断される。さらに外力の影響が加わると、切断された結合がひずんだ状態で再結合してしまう。

図2

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