計算化学を用いた革新的な触媒設計

計算化学

触媒は低エネルギーで目的となる化合物を効率的に生成する物質であり、経済発展と環境配慮の両立を可能とする非常に重要な物質です。
従来の触媒開発は、膨大な候補の触媒から反応試験を行い、評価結果を繰り返しながら実験者の知見や経験を頼りに行っていたため、多くの時間を要することが課題でした。

花王は、計算化学を用いた新しい触媒開発プロセスによって、開発期間の短縮に挑戦しました。通常の量子化学計算より10万倍以上高速な機械学習力場による計算を導入し、計算機内で仮想的に触媒反応試験を行うことにより、これまで実験と結果を繰り返していたプロセスに比べて100倍以上の速さで探索を行うことを実現しました(図1)。

触媒開発について、従来のプロセスと新しいプロセスを比較した図。従来は実験に要する時間が長いために、過去の知見や経験に頼った狭い範囲での探索しかできなかった。しかし、高速な計算手法を導入することによりコンピューターでの探索が可能になり、これまで検討ができなかった探索範囲から有望な触媒を発見することが期待できる。

図1

機械学習力場を用いた触媒のスクリーニングでは、計算で主金属に対して第2成分を加えた時の性能を予測し、候補となる添加成分種を決定することができます(図2)。

様々な金属を組み合わせた触媒の性能を計算化学で予測した結果の図。目標領域に近づくために有望な第2添加成分を見出した。

図2

計算化学による触媒設計技術を活用することで、実験に先立ち候補金属を絞り込むことが可能となります。本技術による開発期間の大幅な短縮は、環境にやさしい化合物の合成を強力に後押ししています。

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