発表資料: 2022年06月23日

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<皮脂RNAモニタリング技術>
皮脂から採取したRNAを常温で安定的に保存・輸送できる技術を構築
ヘルスケアシステムズと郵送検査サービスを共同開発

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、皮脂から採取した皮脂RNAを解析することで体や肌のさまざまな状態を把握する「皮脂RNAモニタリング」*1 を進化させ、皮脂RNAを常温で安定的に保存・輸送できる技術を構築しました。これにより、自宅を含むさまざまな場所での皮脂RNA採取が可能になり、皮脂RNAモニタリングを活用できる場面が拡大します。
花王は、この技術を用いて、株式会社ヘルスケアシステムズ(代表取締役・瀧本陽介)とともに、生活者が自宅にいながらにして健康状態の把握を可能にする郵送検査サービスの開発を進めており、2022年内のサービス提供をめざして実装に向けたテストに取り組んでいます。

  • * 1 2019年6月4日 花王ニュースリリース https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2019/20190604-001/
    皮脂中に人のRNAが存在することを発見 独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を開発
    Inoue, T., Kuwano, T., Uehara, Y., Yano, M., Oya, N., Takada, N., Tanaka, S., Ueda, Y., Hachiya, A., Takahashi, Y., Ota, N., Murase, T. Non-invasive human skin transcriptome analysis using mRNA in skin surface lipids. Commun. Biol.5, 215 (2022). https://doi.org/10.1038/s42003-022-03154-w

背景

花王は、皮脂に人のRNA(リボ核酸)が存在することを発見し、そのRNAを網羅的に分析する独自の解析技術「皮脂RNAモニタリング」を構築し、これにより体や肌のさまざまな状態を把握できる可能性があることを見いだしてきました。皮脂RNAの採取は簡便で皮膚を傷つけないというメリットがありますが、採取後の皮脂RNAは常温で放置しておくと、皮膚表面に存在し皮脂と共に採取される分解酵素により分解されてしまいます。安定した分析結果を得るには酵素の働きを阻害して皮脂RNAの分解を抑制する必要があり、これまでは採取後直ちに超低温で保存する方法を用いていましたが、この方法では、採取場所や機会が限られてしまうという課題がありました。
採取した皮脂RNAを常温で保存・輸送することが可能になれば、自宅を含むさまざまな場所での皮脂RNA採取が可能になり、多くの方に皮脂RNAモニタリングを活用した情報提供が可能になります。そこで花王は、ヒト皮膚上に存在しているRNA分解酵素に対する皮脂RNAの保存安定化技術の構築を行ないました。

皮脂RNA保存安定化技術の構築

RNAを分解する酵素は、働く際に水を必要とする加水分解酵素であることが知られています。そこで、活性阻害剤としてRNA分解酵素の立体構造を変性させるグアニジン塩酸塩と、水を短時間で吸湿する乾燥剤を選抜し、ヒト皮膚細胞由来のRNAの常温保存に対する有用性を検証しました。
成人6名(男性5名、女性1名)の顔からあぶら取りフィルムで皮脂を採取し、さらにヒト皮膚細胞由来のRNAを一定量添加して、-80℃(超低温保存)、37℃で保存安定化剤(グアジニン塩酸塩と乾燥剤)のあり、なしそれぞれの条件で3日間保存しました。RNAの残存率を定量的に評価した結果、-80℃と比較して、37℃で保存安定化剤がない場合にはRNA量が検出限界付近まで低下したのに対して、保存安定化剤がある場合には-80℃とほぼ同等にRNA量が維持されていることが明らかとなりました。この結果より、グアニジン塩酸塩と乾燥剤を用いることでRNAを常温でも-80℃と同じくらい安定して保存できることが示されました(図1)。

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図1 保存安定化剤の有無によるRNA残存率の比較

皮脂RNA保存安定化技術の検証

花王は、上記の技術を応用し、皮脂RNAを採取後、常温で保存できる容器を開発しました。これを用いて、150名の成人男女(男性76名、女性74名)を対象に、実際のサービスを想定した自宅での皮脂採取、および常温輸送のテストを行なった結果、すべてのケースにおいて皮脂RNAの分析に成功しました*2 。これらの結果より、皮脂RNAを常温で保存・輸送し、安定した分析結果を取得できる可能性が示されました。

  • * 2 次世代シーケンサーによる解析

ヘルスケアシステムズと郵送検査サービスの開発を開始

花王は、名古屋大学発ベンチャーで未病をテーマにした郵送検査キットの開発、販売を手掛けるヘルスケアシステムズと共同で、この皮脂RNAモニタリング技術を用いた郵送検査サービスの実装化に向けた開発を開始しました。すでに実装に向けたテストに取り組み、同社による、生活者が自宅にいながらにして健康状態の把握を可能にする郵送検査サービスの2022年内の提供をめざしています。

参考情報

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株式会社ヘルスケアシステムズ
【本社】 〒466-0058 愛知県名古屋市昭和区白金1丁目14−18
【事業内容】 郵送検査事業、バイオマーカーの研究開発、機能性食品の臨床試験・受託研究
【URL】 https://hc-sys.jp

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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