発表資料: 2021年11月15日

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北里大学・花王・自然科学研究機構・EME・塩野義製薬による
「次世代治療薬を目指したVHHナノ抗体薬に関する研究開発」
委託研究開発契約を締結

北里大学の設置法人である学校法人北里研究所(理事長:小林弘祐、以下北里大学)、花王株式会社(社長:長谷部佳宏)、大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構長:小森彰夫)、株式会社Epsilon Molecular Engineering(代表取締役:根本直人、以下EME)、塩野義製薬株式会社(代表取締役社長:手代木功)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(国際競争力のある次世代抗体医薬品製造技術開発)*1 、次世代抗体医薬品の製造基盤技術開発」に採択*2 された、研究開発課題名「次世代治療薬を目指したVHHナノ抗体薬に関する研究開発(以下「本研究」)」に関する委託研究開発契約を2021年8月15日に締結いたしました。

  • * 1 患者の方々のQOL(Quality of Life)向上と医療費増加抑制という医療の課題に対し、個人差を踏まえたより効能の高い治療を実現する「個別改良」の推進に向けた技術開発を支援し、医療分野の産業発展に貢献する目的で実施している経済産業省新規研究開発事業。本事業の推進にあたっては、事業成果を最大化するため、事業内で研究コンソーシアムを形成している。
  • * 2 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)公募採択情報 2021年5月21日
    https://www.amed.go.jp/koubo/11/01/1101C_00005.html

背景

北里大学、花王、EMEは、2020年に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功しています*3 。この研究では、EMEが短期間でVHH抗体候補を選抜できるスクリーニングシステム(cDNAディスプレイ)を提供。これをもとに花王が候補VHH抗体を調製し、さらに北里大学と共同で、同VHH抗体の新型コロナウイルス粒子への結合と中和活性を確認しました。
さらに2021年、新たな共同研究によりこのVHH抗体の治療における有用性検討を進め、当該抗体の経鼻投与により、動物モデルにおいて新型コロナウイルスの増殖を抑制することを報告しています*4

花王は、枯草菌を用いた衣料洗剤用酵素の研究を通し、タンパク質生産に有用な枯草菌育種技術、多様な改変枯草菌ライブラリー、30年以上にわたる酵素の商業製造実績を有します。本研究では、枯草菌がもつ特性をVHH抗体生産に展開し、日本発の国際競争力のある次世代抗体生産基盤技術の構築をめざします。さらに、北里大学、花王、自然科学研究機構、EME、塩野義製薬は共同で、当該抗体の作用メカニズムの解明を進め、変異株を含む新型コロナウイルス抗体医薬の他、呼吸器感染症に対する抗体医薬の開発に向けて取り組んでまいります。

本研究のポイント

北里大学、花王、EMEは、2020年、3つの独自技術「10の14乗種類以上の圧倒的なバラエティーに富むVHHライブラリー」「cDNAディスプレイを利用した無細胞VHH高速スクリーニングシステム」「洗剤用酵素の産業利用実績のある遺伝子改変枯草菌ライブラリーによるタンパク質発現システム」を活用することにより、世界的課題である新型コロナウイルスに対して、わずか3週間で強力な中和活性を示す人工合成VHH抗体を複数取得することに成功しました。本研究は、この実績を元に、新型コロナウイルスだけでなく、呼吸器感染症に対する次世代抗体医薬品の開発・実用化に向けて実施するものです。原薬製造、製薬企業への原薬供給、製剤化の流れを構築するため、パイロットケースとして新型コロナウイルス感染症治療薬の研究を実施します。
「次世代抗体薬生産システム構築」では、新型コロナウイルスに対して中和活性があるVHH抗体の構造改変や多価化、多量体化等の導入により高性能候補抗体の開発をめざします。具体的には、in vitro中和試験等による開発候補の選定、および選抜された開発候補体に関しては薬効薬理評価、体内動態試験、安全性試験、単回毒性試験、反復毒性試験等の基礎性能評価試験を実施。さらに、VHH抗体と新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の結合様式に関する基礎的知見を蓄積し、社会実装へ向けた製剤化も幅広く検討します。
「枯草菌を用いた抗体医薬品製造基盤の構築」については、これまでのVHH抗体生産研究で高い生産能を示している花王が保有する多様な改変枯草菌ライブラリーを利用します。枯草菌は汎用的かつ高いタンパク質生産能を有し、エンドドキシン等の不純物低減も可能なことから、次世代を担う抗体薬生産システムとして注目を集めています。VHH抗体の設計図であるcDNAの合成からVHH抗体の大量生産まで、開発期間の大幅な短縮も期待できます。
本委託研究では、次世代抗体医薬の実用化に向けた製造基盤技術を構築し、最終的に前臨床試験、臨床治験へ移行できる体制を整えることをめざします。
パイロットケースの導出後は、新型コロナウイルスに限定しない他の新興・再興感染症に対しても、次世代抗体医薬品の迅速開発が可能になるという波及効果により、この分野での日本の国際競争力の獲得にも貢献してまいります。

(1)研究開発課題名:
次世代治療薬を目指したVHHナノ抗体薬に関する研究開発

(2)研究開発体制
研究開発代表者:
北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学研究室 教授 片山和彦
分担研究者:
北里大学獣医学部 獣医伝染病学研究室 教授 高野友美
花王株式会社
大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所 特任教授 村田和義
株式会社Epsilon Molecular Engineering
塩野義製薬株式会社

(3)研究開発期間
令和3年8月15日~令和8年3月31日(5年間)

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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