発表資料: 2021年08月16日

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<皮脂RNAモニタリング技術>
加齢に伴い変化する皮脂RNA情報を用いて“生物学的年齢”を算出
個々人で異なる肌の老化程度を推定可能に

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)生物科学研究所は、加齢に伴って変動する皮脂RNAの発現情報と機械学習を組み合わせることで“生物学的年齢”を算出し、個々人で異なる肌老化の進行程度を推定できる可能性を見出しました。
今回の研究成果は、第21回日本抗加齢医学会総会(2021年6月25~27日、京都・オンライン開催)、第86回SCCJ(日本化粧品技術者会)研究討論会(2021年7月15日、オンライン開催)にて発表し、SCCJ研究討論会では最優秀発表賞を受賞しました。

背景

老化は、時間の経過とともに体のさまざまな機能が低下していく現象です。しかし、暦年齢(生まれてからの年数)が同じでも、老化の進行程度や症状の現れ方はさまざまです。そのような中、近年では、体の機能の低下程度から老化の進行程度を推定する“生物学的年齢”という考え方が注目されています。
花王が2019年に報告した皮脂RNAモニタリング技術は、肌を傷つけることなく、顔の皮脂から皮脂RNAを採取し解析できる技術です*1 。RNAやタンパク質などの生体分子情報は、加齢に伴い変化することから、生物学的年齢の推定に重要な役割を果たします。そこで今回は、皮脂RNAの発現情報を活用して肌の生物学的年齢を推定することができるかについて検討しました。

皮脂RNAを活用した生物学的年齢の推定

花王は、これまでに、加齢に伴って皮脂RNAの発現パターンが変化することを確認しています*2 。今回は、20~59歳の女性113名を対象に、暦年齢と関連の強い368種類のRNAについてエンリッチメント解析*3 を行ないました。その結果、加齢に伴って発現パターンが変化する皮脂RNAには、炎症や細胞死、細胞老化や表皮分化など、老化に関連する機能を担うものが多く含まれていることが明らかとなりました。花王は、これらの結果から、皮脂RNAを用いてヒトの体の老化程度を推定できるのではと考えました。
そこで、同じ対象者で、加齢に伴って変動する368種類の皮脂RNAの発現量を用いて暦年齢を予測する機械学習モデルの構築と検証を行なった*4 ところ、皮脂RNAによる予測値と暦年齢には高い相関がみられました(図1)。しかしその一方で、同じ年代の中でも予測値が高い人と低い人が存在しました。このことから、予測値は個々人の老化程度の違いが反映された生物学的年齢を示している可能性があると考えました。

  • * 2 2020年10月26日 ニュースリリース:皮脂RNAモニタリング技術で、絶えず変化している肌状態を精度高く予測することが可能に https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201026-001/
  • * 3 着目した複数の遺伝子の中に、特定の機能を共通して担う遺伝子がどの程度濃縮されているか解析する手法
  • * 4 113名を機械学習モデル作成58名と機械学習モデル検証55名に分割

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図1 暦年齢と機械学習モデルから算出された予測値の相関

皮脂RNAを活用した生物学的年齢が肌の老化指標として妥当かどうかを検証

機械学習モデルから算出された年齢を生物学的年齢と定義し、肌の老化指標として妥当性があるかの評価を行ないました。肌老化の個人差が大きいと想定される40代(14名)の中で、生物学的年齢が相対的に高い人25%と低い人25%を選抜し、肌老化と密接に関連する肌計測値の違いを検証。その結果、生物学的年齢が相対的に高い人(4名)は、目尻の肌の表面が粗く(しわが多く、深い)、目もとの肌の弾力性が低く、口もとの肌の糖化が進んでいることが確認できました(図2)。
これにより、生物学的年齢が相対的に高い人は、肌が老化している傾向にあることが示され、今回作成した皮脂RNAに基づく生物学的年齢が、肌の老化指標として妥当であると考えます。

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図2 暦年齢40代における肌計測値の比較結果

さらに、この生物学的年齢が、暦年齢と比較して、どの程度肌の老化状態を反映しているかを検証するため、同じ年代における肌老化に関連する肌計測値と、生物学的年齢、暦年齢との相関分析を実施しました。その結果、40代において、暦年齢は肌計測値と有意な相関関係が認められなかった一方で、生物学的年齢は肌計測値と有意に相関することが明らかになりました(図3)。これにより、今回、機械学習を用いて皮脂RNAから算出された生物学的年齢が、肌の老化程度をより強く反映している可能性が示されました。

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図3 暦年齢40代における肌計測値と暦年齢・生物学的年齢の相関

まとめ

ヒトの肌状態は加齢のみならず、紫外線や食事などといった一人ひとりの環境の違いに大きく影響を受けることが知られています。今回、皮脂RNAから、肌の老化程度を反映する生物学的年齢情報を取得できる可能性が示されました。暦年齢は不可逆ですが、生物学的年齢は環境因子を見直すことでよい状態に変化させることが出来る可能性があります。
今後は、さらに皮脂RNAのデータを蓄積することで、生物学的年齢の推定精度を向上させ、個々人の老化の進行程度の理解とそれに合わせた体や肌へのアプローチに向けた応用を目指します。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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