発表資料: 2021年05月24日

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「飛沫抑制と通気性を両立させたマスク」の開発と
感染予防効果と快適性を評価するプロジェクトを開始
― カシマスタジアムで実証試験 ―

新型コロナウイルス感染症の流行の収束が見通せない中、多数の観客を動員するJリーグでは、総合的な感染予防対策による安全な試合の開催をめざしています。効果的な感染予防には飛沫抑制が必要であり、マスク着用が最も有効な手段とされています。多くの研究結果から、飛沫抑制には不織布製マスクをすき間なく着用することが有効と啓発されていますが、現状では不織布製マスクは通気性が悪いケースも多く、不適切に着用された場合、本来の飛沫抑制効果が損なわれます。
そこで花王株式会社は、慶應義塾大学理工学部の奥田知明教授、株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーおよび産業技術総合研究所と共同で、「飛沫抑制と通気性を両立させたマスク」を開発し、マスクの感染予防効果と快適性を評価することで、大規模イベントのより安全な開催をめざす研究プロジェクトに参画することをご報告いたします。なお、本実証試験は、5月26日(水)に県立カシマサッカースタジアムで行なわれる2021明治安田生命J1リーグ第16節鹿島アントラーズ対セレッソ大阪戦から開始いたします。

1. 背景

Jリーグでは「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」を策定し、日常的に選手やクラブ職員の感染予防対策を徹底しています。試合開催時には観客動員数の制限に加えて、選手・運営スタッフや観客等スタジアムに集まる全員を対象とした手指消毒やマスクの着用徹底といった総合的な対策により、安全に試合を開催しています。
効果的な感染予防のためには飛沫抑制が必須であるとされ、マスクに求められる性能に関して多くの研究が進められています。既往研究結果からは、不織布製マスクに比べて通気性のよい布およびポリウレタン製のマスクでは飛沫抑制効果が劣ることが示されています。また、不織布製マスクでも、マスクと肌のすき間を少なくする必要がありますが、現状では通気性が悪いケースが多く、実使用場面においては快適性の観点で課題があります。特に、身体活動によって呼吸が荒くなるような場面、人と会話するような場面、また夏場のような高温多湿環境では、マスク着用時の快適性が低下します。その結果、鼻を出して着用したり、あごにマスクを掛けたりするような不適切な着用が誘発されると、マスク本来の飛沫抑制効果が低下します。
そのため、「飛沫抑制と通気性を両立させたマスク」を開発し、マスクの感染予防効果と快適性を評価することが、スタジアム等大規模施設でのより安全なイベント開催等において有用だと考えました。

2. 実施内容

本プロジェクトでは、花王がさまざまな不織布製品で展開している快適性を高める研究を応用して開発したプロトタイプマスクを含む複数の不織布製マスクを用いて、実験室で飛沫抑制効果および快適性の評価を行なうとともに、実際に県立カシマサッカースタジアムにおいてマスク着用時の快適性評価の実証試験をした上で、マスクの改良を行ないます。具体的な進め方を以下に示します。
1) プロトタイプを含む複数の不織布製マスクについて、着用者の発声時にマスクを透過する飛沫量を画像解析により可視化します(図1)。さらにパーティクルカウンター(図2)等での定量化手法を用いて、実使用場面を想定した飛沫抑制効果を慶應義塾大学理工学部の奥田知明教授が検証します。同時に着用時の快適性をアンケートにより確認します。
2) 呼吸シミュレーション(図3)、および不織布製マスクのすき間部の空気流体解析等から、呼吸時の不織布製マスクの飛沫抑制効果を花王が検証します。
3) 鹿島アントラーズと花王を中心に、県立カシマサッカースタジアムで開催される鹿島アントラーズの主催試合において、月に1回程度、プロトタイプマスクを数百人規模のスタッフや警備員等に着用いただき、さまざまな気象条件における快適性の評価および着用状況の観察を行ないます。
4) 花王は1)〜3)の結果よりプロトタイプマスクの改良を行ないます。
5) 産業技術総合研究所は、リスク評価モデルを活用して、複数の異なる不織布製マスクを対象に、1)〜3)のデータから着用時の感染リスク低減効果を評価します。

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図1 微粒子可視化システム

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図2 パーティクルカウンター

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図3 呼吸シミュレーション

将来的には観客を対象とした着用時の快適性の評価、快適性とマスク着用方法の関係を評価して、大規模イベントのより安全な開催をめざします。得られた研究成果はJリーグ等の関係団体に報告するとともに、公表します。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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