発表資料: 2020年11月04日

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「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」のベースメイクへの応用
肌の凹凸を覆ってなだらかに整え、高いシミカバー効果を発現

花王株式会社(社長・澤田道隆)メイクアップ研究所、スキンケア研究所、解析科学研究所は、直径がサブミクロンの極細繊維を肌に直接ふきつけることで、軽く、やわらかく、自然な積層型極薄膜を肌表面につくる技術「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」をベースメイクに応用すると、肌の凹凸が覆われてなだらかになり、シミを自然に美しくカバーできることを見いだしました。
なお、今回の研究成果は、第71回コロイドおよび界面化学討論会(2020月9月14~16日、オンライン開催)で発表し、オンライン優秀講演賞を受賞したほか、第25回日本顔学会大会(2020年10月3~4日、オンライン開催)にて発表しました。

背景

多くの女性にとって、メイクアップでかなえたいのは、シミや色ムラのない、なめらかな肌です。しかし、ベースメイクでシミをカバーしようとしても、「厚塗りになってしまう」「シミの部分にベースメイクがうまくのらない」などの悩みも多く聞かれます。花王は2018年に、シミ部位は、色差があるだけでなく、皮溝形状もシミのない部位と異なっており、このためベースメイク化粧料がムラづきしていることを明らかにしました*1
そこで、シミを美しくカバーするため、肌上に極細繊維が折り重なった極薄膜を形成する「ファインファイバーテクノロジー」を応用して、肌の質感や形状の違いを均一化させることに着目。この極薄膜の後に化粧製剤を使うと、膜は透明になり肌と一体化します。今回は、このファインファイバー膜にさらにベースメイク化粧料を重ねた塗膜の構造、またシミのカバー効果について詳細に検討しました。

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ファインファイバー膜の上にベースメイク化粧料を塗布したときの塗膜の特長

(1)ファインファイバー膜が粉体を均一に保持し、高いカバー力を発現
凹凸のある疑似皮膚上にファインファイバーで極薄膜をつくり、その上からベースメイク化粧料を塗布した塗膜を電子顕微鏡で観察しました。ファインファイバー膜は、極細繊維が重なりあってできた立体構造をしており、多数の細かな隙間があります。ベースメイク化粧料に含まれる粉体は、この隙間にムラなくみっちりと敷き詰められ、定着します(図1)。このことから、ファインファイバー膜があると、少量のベースメイク化粧料でも高いカバー力を発揮できると考えられます。

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図1 ファインファイバー膜にベースメイク化粧料の粉体が均一に保持されている様子

(2)肌の凹凸を覆ってなだらかに整えるなめらかな塗膜を形成
モデル皮膚上に赤く染色した極細繊維でファインファイバー膜をつくり、その上に緑に発光する粉体を含むベースメイク化粧料を塗布し、蛍光顕微鏡で観察しました。得られた画像から、この塗膜は、ファインファイバー膜の隙間に粉体を保持したまま、肌の皮溝や毛穴などの凹部に橋を架けるような状態で重なっていることが確認できました(図2)。
このことから、ファインファイバー膜の上にベースメイク化粧料を塗布すると、塗膜はまるでハンモックのように肌にやわらかくフィットしながら粉体の肌凹部への落ち込みを抑制し、肌の凹凸を覆って、なめらかな仕上がりを実現することがわかりました。

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図2 ファインファイバー膜がベースメイク化粧料の粉体を保持し、凹凸を覆っている様子

ファインファイバー膜にベースメイク化粧料を重ねたときのシミカバー効果

この塗膜を用いてシミを隠すメイクをしたところ、ベースメイク化粧料だけの場合と比較して、シミの境目が目立たなくなりました(図3)。

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図3 シミをカバーするメイクの仕上がり

さらに、素肌、ベースメイク化粧料のみ塗布、ファインファイバー膜の上にベースメイク化粧料を塗布した際の、色の明るさとキメの目立ち度を解析しました*2 (図4)。ベースメイク化粧料のみの場合は、重ねることによってシミ部位と周辺部の色の差は目立たなくなりますが、キメは素肌よりも目立つという結果になりました。シミ部位では、皮溝にベースメイク化粧料がたまったり、皮丘との付着量の差が大きくなったりして、ベースメイク化粧料がムラづきしやすいことがその理由です。
一方で、ファインファイバー膜にベースメイク化粧料を重ねた塗膜は、色の差がなく、キメも目立たないことが確認されました。これは、ファインファイバー膜がベースメイク化粧料の粉体を均一に保持することに加えて、肌の凹凸を覆って、シミ部位と周辺部との色や皮溝形状の違いをカバーできたためと考えます。

  • * 2 シミ部位と周辺部の色の差:色の明るさを算出しその差を計算
    キメの目立ち度:多重解像度解析(画像の中のムラ成分を大きさごとに分解する手法)を用いて、キメに相当するムラを抽出

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図4 シミ部位のメイクの色の明るさの差とキメの目立ち度合い

まとめ

今回の検討で、ファインファイバー膜にベースメイク化粧料を重ねることにより、膜にベースメイク化粧料中の粉体が均一に保持され、肌の凹凸をカバーしてなめらかな仕上がりを実現できることを見いだしました。これにより、従来のベースメイク化粧料ではうまく隠せなかったシミを、美しくカバーすることが可能です。花王は、今後もお客さまの理想とする仕上がりをかなえる商品の提案に取り組んでいきます。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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