参考資料: 2020年10月30日

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血管画像自動抽出技術を用いて皮膚深部の血管と毛細血管の血流情報を同時に検出

花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所は、マイクロスコープ血管画像の自動抽出技術を用いて、皮膚深部の血管と毛細血管の血流情報が同時に検出できることを見いだしました。
今回の研究成果の一部は、Skin Research and Technology*1 に掲載されました。さらに、この研究成果を示す画像が掲載号のアディショナルカバー*2 に採択されました。

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背景

皮膚には、直径数十~数百μmの血管と10μmにも満たない極めて微細な毛細血管による密なネットワークが形成されています。血管を流れる血液には熱、栄養、水分や酸素などを運び、不要となったものを回収する役割があり、花王は、皮膚を美しくすこやかに保つうえで、これら血管のさまざまな機能に注目し研究を進めています。
皮膚深部の太い血管と皮膚表層に存在する毛細血管では、その主な役割や血流の作用特性が違うことが知られており、この違いは肌状態とも密接に関わっていると考えられます。しかしながら、深さの異なる血流情報を取得するには複数の機器を組み合わせる必要があり、また血流は常に変動するため、これまで同一部位の情報を同時に取得することは困難でした。そこで今回は、これらの異なる血管の血流情報を、ひとつの画像から同時に検出することに取り組みました。

皮膚全体と毛細血管の血流情報を同時に解析

花王は、2019年、皮膚の毛細血管の血流変化を特異的に抽出・定量する画像解析技術を構築し、報告しました*3 。この技術では、毛細血管を含む肌画像をヘモグロビン・メラニン・陰影の各成分に分割し、ヘモグロビン成分画像(図1・中央赤枠)にフィルタ処理やノイズ除去を施すことにより、毛細血管のみを抽出することができます。

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図1 マイクロスコープ画像から異なる深さの血管情報を抽出

しかし今回は、このヘモグロビン成分画像に、マイクロスコープで撮影可能な範囲の皮膚の血管情報がすべて含まれていることに着目。ヘモグロビン成分画像の輝度値を積算することで、画像に写る肌全体の血流量を推定できると考えました。なお、画像中に毛細血管の占める割合は数%程度であることから、ヘモグロビン成分画像は、主に深部血流量を推定していると考えられます。
この手法を加えることで、今回、ひとつの肌画像から毛細血管と皮膚全体の血流情報を同時に取得することが可能になりました。

作用特性の違う温熱と炭酸を用い、血管の画像解析技術を評価

一般に、皮膚血管の役割は大きく2つあるとされます。ひとつは体温調節のための熱の運搬で、主に深部の太い血管の血流が関わります。もうひとつは、栄養・酸素の供給や二酸化炭素の除去など物質交換で、表層の毛細血管が主な役割を担っています。そこで今回、これらの画像解析技術を評価する目的で、作用特性の違う温熱と二酸化炭素(炭酸)を利用し、深さの異なる血管の血流変化を定量化し、比較しました。
日本人男女6名の上腕内側部の皮膚に順次、温熱、二酸化炭素(炭酸)を処理し*4 、処理後の皮膚画像を取得。画像に上述の画像処理を施し、ヘモグロビン成分量と毛細血管の血流量を解析しました(図2)。
その結果、温熱を処理した場合には、ヘモグロビン成分量が増加し、撮影可能な範囲の皮膚全体の血流が増加していたものの、毛細血管にはほぼ変化が見られませんでした。一方、炭酸を処理した場合には、皮膚全体を示すヘモグロビン成分量が増加するとともに、毛細血管の血流量も増加していたことを確認しました(図3、4)。この結果は、温熱と炭酸で血管への作用特性が違うというこれまでの知見を支持するものです。

  • * 4 既報の知見に基づき、温熱と炭酸で血行促進効果がピークを示す処理時間を設定。炭酸処理(32℃、炭酸濃度1200ppm、2分間)、温熱処理(41℃、5分間)

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図2 血行促進処理後の肌画像と画像解析結果

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図3 炭酸と温熱によるヘモグロビン成分量の変化

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図4 炭酸と温熱による毛細血管スコアの変化

このことから、本画像解析は、異なる血管の血流情報をひとつの画像から同時に評価できる手法である可能性が示されました。

まとめ

非侵襲で簡便な血管の画像解析手法を発展させることで、同一部位の毛細血管血流と深部血流情報を同時に取得できる可能性が示されました。これにより、異なる深さの皮膚血流と肌性状の関係性や、さまざまなアプローチによる血行促進作用をより幅広く調べることが可能となります。
今後は、加齢や環境による血流の変化、血流の状態がさまざまな肌状態に与える影響などについて、検討していく予定です。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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