発表資料: 2020年07月17日

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ほこり・花粉等の微粒子の肌への付着を抑制する技術を開発

花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所・マテリアルサイエンス研究所は、微細な凹凸のある膜で肌を覆うことで、空気中に浮遊するほこりや花粉などの微粒子の肌への付着を抑制できることを見いだしました。

背景

空気中には、ほこりや花粉などの目に見えない微粒子が浮遊しています。これらの微粒子が肌に付着すると、肌がくすんで見えたり、かゆみや肌あれなどのトラブルを引き起こしたりすることがあります。また、長期的には、シミやシワなどの肌老化を助長するといった報告もあります。日本では、花粉が飛散する時期にこのような微粒子の付着が気になるという声が聞かれますが、大気汚染が深刻な中国、タイ、ベトナムでは、「微粒子大気汚染により肌の調子が悪くなる」と感じる方がいずれも8割以上いることがわかりました*1
このような課題に対して、空気中に浮遊する微粒子から肌をしっかり守ることをめざし、その付着抑制技術の開発に取り組みました。

  • * 1 2016年 花王調べ (20~49歳女性、600名)

肌に微粒子が付着する要因として、ファンデルワールス力に着目

肌と物体のような固体間には、ファンデルワールス力、静電気力、液架橋力といった3種類の引力がはたらいています。これらの引力の強さは接触する対象物の大きさによって変わり、ほこりや花粉等に相当する粒径が2.5~30㎛の微粒子では、相対的にファンデルワールス力の影響が大きくなります。そこで、今回花王は、これらの微粒子の付着制御技術の開発において、ファンデルワールス力に着目しました。
「ファンデルワールス力は物体間の距離が近いほど強くなる」という性質があることから、球状の物体(粒子)と付着面(肌)の距離を遠くすることを検討しました(図1)。付着面に粗さの異なる凹凸をつくり、ファンデルワールス力の強さをシミュレーションしたところ、粒径2.5~30㎛程度の微粒子が付着しにくくなる領域を見いだしました(図2)。

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図1 ファンデルワールス力と表面粗さの関係(イメージ)

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図2 微粒子の付着力と表面粗さのシミュレーション

肌表面の粗さを制御する技術を開発

このシミュレーションにより、微粒子の平面への付着を抑制するには、付着面に微細な凹凸があることが重要であることが示されたため、肌表面に微細な凹凸膜を形成する技術を検討しました。その結果、直径10~50nm程度の紫外線散乱剤(微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛)で微細な凹凸構造を形成することによって、微粒子の付着を高効率で抑制できることがわかりました。
しかし、紫外線散乱剤を配合しても、同時に配合する油剤の種類や配合量によっては、凹凸膜表面が油剤に埋もれ、付着抑制効果が失われてしまいます(図3左)。花王は、紫外線散乱剤を油剤に濡れにくくさせることで、表面が紫外線散乱剤で覆われた微細凹凸膜をつくることに成功しました(図3右)。

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図3 紫外線散乱剤を含む製剤の塗膜表面

この技術を用いた日やけ止めを人工皮革に塗布し、モデル花粉粒子の付着性を確認したところ、未塗布と比較し、有意な付着抑制効果があることがわかりました(図4)。

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図4 花粉の付着抑制効果

また、この技術を採用した日やけ止めと採用していない日やけ止めを顔の左右に塗布し、5時間外出した後に、それぞれの肌を不織布でふき、付着した微粒子を含む汚れを定量しました。その結果、表面を紫外線散乱剤で覆った微細な凹凸膜の日やけ止めは、そうでない日やけ止めにくらべ、肌に付着した汚れが有意に少ないことを確認しました(図5)。

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図5 不織布に付着した汚れの比較

まとめ

空気中に浮遊する微粒子の肌への付着しやすさが、肌の表面粗さに応じて変化することに着目し、紫外線散乱剤への油剤の濡れを制御した微細な凹凸膜で肌を覆うことで、気になる微粒子の肌への付着を抑制できることがわかりました。
本検討で得られた知見は、今後、サンケアをはじめとする技術開発につなげていく予定です。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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