発表資料: 2019年11月25日

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太陽光に含まれる近赤外線を防御する技術を開発
不快な灼熱感をもたらす肌表面温度の上昇を抑制

花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所、加工・プロセス開発研究所は、太陽光に含まれる近赤外線を高効率でカットする薄膜状酸化チタンを見出し、太陽光下での不快な肌表面温度の上昇・熱さ感覚を抑制できる近赤外線防御技術を開発しました。
今回の研究成果は、「第85回SCCJ研究討論会(2019/11/27・東京都)」にて発表します。
本研究で得られた知見は、今後のサンケアの研究開発に生かしていきます。

人工太陽光照射5分後の肌表面温度比較

背景

太陽光は、その波長の長さにより、紫外線、可視光線、近赤外線に大別されます(図1)。太陽光にさらされた肌への影響については、紫外線による炎症反応や光老化がよく知られていますが、近赤外線も、酸化ストレスの発生およびシワ・たるみ、さらに肌表面温度の上昇を引き起こすことが報告されています。

図1 太陽光スペクトル

花王の調査では、強い日差しの下で、日やけ止めを塗っても解決できない不快感として、49%の方が、「肌がじりじりする、ひりひりする」ことを経験していることがわかりました*1 。その原因として花王は、太陽光に含まれる近赤外線に着目しました。実験により、直射日光が肌にあたると、5分程度で肌表面温度が5~6℃上昇すること、さらに、外気温が28℃を超えるような暑熱環境下ではその表面温度は40℃以上にもなることを確認しました。肌の表面温度が約42℃になると、温度に対する感覚受容体が活性化し、痛覚を刺激することが知られています。暑熱環境下で太陽光にあたった際に肌に灼熱感を感じるのは、このような肌の表面温度の上昇によるものと考えられます。
このような課題に対して、花王は太陽光に含まれる近赤外線から肌をしっかり守ることをめざし、近赤外線防御技術の開発に取り組みました。

  • * 1 2019年 花王調べ (20~50歳の男女、1500名)

方法と結果

近赤外線を散乱してカットする素材はこれまでにも使われてきましたが、肌表面温度の上昇を抑制する効果としては、充分ではありませんでした。そこで花王は、光線の干渉の原理に着目し、近赤外線の波長を選択的にカットする素材を探索しました。その結果、化粧品原料である薄膜状酸化チタンの膜厚をコントロールすることで、高い近赤外線防御性能を発現することを見出しました。
この近赤外線防御素材と紫外線防御剤を配合した日やけ止め製剤(紫外線&近赤外線防御)と従来の日やけ止め製剤(紫外線防御)をそれぞれ前腕に塗布、人工太陽光を照射し、肌表面の温度変化を確認しました。その結果、人工太陽光の照射によって、未塗布の前腕で肌温度は5分間で6.5℃上昇。従来の日やけ止め製剤も、未塗布と同様の肌温度の上昇が認められました。一方で、新しい素材を配合した日やけ止め製剤(紫外線&近赤外線防御)では、肌温度上昇は平均5.5℃に留まり、平均で-1℃、最大で-1.6℃の肌温度の上昇抑制が認められました(図2)。

図2 人工太陽光照射時の肌表面温度変化

また、照射5分後の熱さ、じりじり感それぞれの感覚について、被験者の主観評価を行ないました。未塗布、従来の日やけ止め製剤に比較して紫外線&近赤外線を防御する新しい日やけ止め製剤では、熱さ、じりじり感の感覚スコア(VAS:visual analog scale)が有意に低下することを確認しました(図3)。

図3 熱さ、およびじりじり感のVAS法による主観評価

まとめ

今回は、近赤外線を高効率でカットし、太陽光による肌表面温度上昇を抑制できる近赤外線防御技術を開発しました。本技術を採用することにより、紫外線のみを防御する製剤では防ぎきれなかった太陽光による肌表面温度上昇・熱さ感覚を低減できることがわかりました。
本検討で得られた知見は、今後のサンケア技術開発につなげていく予定です。

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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