発表資料: 2019年08月22日

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眼の周りを温めることによる入眠への影響

~体温の放熱促進を確認~

花王株式会社(社長・澤田道隆)パーソナルヘルスケア研究所は、2017年の睡眠悩みのある方を対象とした研究で、就寝時に眼の周りを適度に温めると「寝つきがよくなる」など、睡眠の質が改善するという結果を報告しています*1 、*2 。このたび、睡眠と密接な関係がある体温に着目し、眠りに入りやすくなるメカニズムを明らかにする研究を行ないました。その結果、眼の周りを適度な温度で温めると手や足の皮膚温が上がり、体の熱が外に逃げる「放熱」が促進されることを確認しました(図1)。この生理的変化は人が眠りに入るときの体の状況と類似しており、入眠にポジティブな影響を及ぼす可能性が考えられます。

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図1 眼の周りを温めることで放熱が促進される(イメージ図)

本研究内容は、日本睡眠学会第44回定期学術集会シンポジウム20(2019年6月27~28日、名古屋)で発表いたしました。また研究結果の一部は、英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに掲載されています*3

背景

人が生きていくうえで、睡眠は欠かせません。しかし、多忙でストレスも多い現代では、約5人に1人が睡眠に悩んでいるといわれています。こうした睡眠問題は労働生産性を低下させるだけでなく、うつ病や生活習慣病など、様々な問題に繋がることがわかっています。花王はこういった問題への解決策を模索するために、睡眠と密接な関係がある体温に着目した研究を重ねてきました。
人は、覚醒している時には体の内部の温度を高く保って活動をしていますが、眠っている時は体の内部の温度を下げて体と脳を休息させます。体の内部の温度を下げる仕組みとして、手や足の皮膚温が高くなって体の熱を外へ逃がす放熱という現象があり、これにより眠くなることが知られています。赤ちゃんの手が温かいのは眠たいサインと言われるのはそのためです。また、手先や足先が冷たくなりやすい人は手や足の皮膚温が低いままで、熱が逃げにくいため寝つきが悪くなるとも言われています。

眼の周りを温めることによる入眠への影響

花王は、睡眠悩みのある方を対象とした研究で、就寝時に眼の周りを適度に温めると、「寝つきがよくなる」など自覚的・客観的な睡眠の質が改善するという結果をすでに報告しています*1 、*2 。その作用機序として、リラクゼーション効果による心理的な影響と体温変化の生理的な影響の両方が考えられます。そこで、これらを検証するために、眼を安全に適度な温度に温めることができるシートを用いて試験を行ないました。
対象としたのは健常な男性19名です。日中の時間帯に、前述のシートで眼の周りを温めながら実験室内のベッドで60分間安静と覚醒を保ち、体の内部の温度(直腸温)、手と足の皮膚温(手の甲、足の甲で測定)、体幹の皮膚温(鎖骨下で測定)、口頭での自覚的評価(温かさ、心地よさ、眠気)、脳波、心電図などを測定しました。放熱が起きていることは、体幹に対する手足の皮膚温の差(手足の皮膚温-体幹の皮膚温)が高くなることで測定できます。

その結果、眼の周りを適度に温めることで下記の影響があることを確認しました。
1.対象者は自覚的な心地よさや眠気を得た。
2.コントロール*4 と比べて、手足の皮膚温の上昇が大きかった。(図2)
3.コントロールと比べて、体幹に対する手足の皮膚温の差が大きくなり、体の熱を外へ逃がす放熱が促進された。(図3)

  • * 4 温める効果のないシートを眼周りに使用

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図2 手と足の皮膚温の変化

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図3 体幹に対する手足の皮膚温の差の変化

2と3の変化は、人が眠りに入るときの生理的な体の状況と類似しているので、眼の周りを温めることは入眠にポジティブな影響を及ぼす可能性が考えられます。以上の結果と過去の研究から、眼の周りを適度に温めることにより、リラクゼーション効果としての心理的な影響と生理的な影響の両方が睡眠に影響することが示唆されました。

本研究は日本大学医学部精神医学系 内山真教授のご指導・ご協力のもと行ないました。

花王は今後も、睡眠と体温の関係についての研究を深化・発展させ、睡眠の悩みを解決する提案への応用を検討してまいります。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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