花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所、マテリアルサイエンス研究所、解析科学研究所は、乾燥による肌あれに悩む方に向けた研究を進める中、「高含水α-ゲル」*1 と独自のポリマー(OXP-SI)を効果的に組み合わせることで、微小鱗屑(りんせつ)*2 部位に選択的に吸着(図1)して、角層を早期になめらかな状態に改善させる新製剤を開発しました。
本研究内容は、「日本油化学会第58回年会(2019/9/24-26、東京都)」、「OKINAWA COLLOIDS f2019(2019/11/3-8、沖縄県)」にて発表する予定です。
日本人女性の多くが、肌の乾燥に悩んでおり、近年、その割合は増加傾向にあります*3。花王が乾燥悩みを持つ有職女性の肌実態・意識を調べたところ、90%以上の方の肌表面に微小な鱗屑(図2)があることを確認しました*4 。
健康的でなめらかな肌の表面は、角層の細胞が適度に接着され精緻に配列しています。しかし、角層がはがれてめくれあがった微小鱗屑がある肌では、水分蒸散が加速したり、外からの刺激を受けやすくなったりすると考えられます。
花王はこれまでに、このような乾燥による肌あれ悩みに対し、保湿ケアとして、角層細胞間脂質を模した高い含水構造から成る「高含水α-ゲル」を開発し、さまざまなスキンケアに応用してきました。このたび、「有職女性は、できるなら3日~1週間という短い期間でスキンケア効果を実感したいと思っている」*5 との調査結果もあることから、肌を短期間になめらかな状態に整える技術開発に取り組みました。
今回花王は、肌最表面のはがれかけた角層を物理的に接着するというアプローチを検討しました。着目したのは、ポリマーの持つ多点接着という性質です。数多くのポリマーのスクリーニングにより、柔軟な膜を形成し、かつ「高含水α-ゲル」との組み合わせが可能な独自のOXP-SI(Oxazoline modified silicone)ポリマーを見出しました。さらに、それらの添加方法などの検討を繰り返し、新しい製剤技術を開発しました。
この製剤の特徴を確認するため、OXP-SIポリマーに蛍光色素をつけて、顕微鏡で観察しました(図3)。従来の方法では、ポリマーは水相に分散して存在しています。しかし新製剤では、ポリマーが「α-ゲル」の周囲に集まったユニークな複合体となって、水相に分散していることが確認されました。
また、新製剤を肌に塗布した後の状態を蛍光顕微鏡で観察しました。その結果、新製剤塗布後の肌で、ポリマーと複合化した「高含水α-ゲル」が微小鱗屑部位に選択的に吸着する様子が確認されました(図1)。
さらに、7名の男女の前腕内側部位1か所にあれ肌処理*6 をした“モデルあれ肌”に、新製剤を1日2回塗布し、肌表面の状態を観察。新製剤を塗布したモデルあれ肌は、連用前に対して2日目から有意に改善していることを確認しました(図4)。
これらの様子から、吸着した複合体が鱗屑を接着し、擬似的に健常な状態を維持させることで、肌表面が早期になめらかに改善したと考えられます。
今回、「高含水α-ゲル」と独自のOXP-SIポリマーを液中で複合化して存在させる技術を開発しました。この製剤は、選択的に微小鱗屑部位に吸着することから、早期に肌表面の状態を改善させることにつながると考えられます。肌表面がなめらかになることで、乾燥だけでなく、化粧のりもよくなることも期待されます。本検討で得られた知見は、今後のスキンケア技術開発につなげていく予定です。
花王株式会社 広報部
※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。