参考資料: 2019年06月07日

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とろみをつけたカテキンの摂取により、
急性上気道炎*1 の発症低減を確認

花王株式会社(社長・澤田道隆)生物科学研究所は、静岡県立大学薬学部との共同研究にて、のど粘膜の主要成分であるムチンと結合したカテキンがインフルエンザウイルスを失活させることを明らかにしました。また、増粘物質であるキサンタンガムを加えることでとろみをつけた茶抽出物(カテキン)が、ムチンと相互作用し、のどに滞留することを確かめました。さらに、とろみをつけたカテキンを含む飲料に、急性上気道炎の発症を低減する効果があることを確認しました。

  • * 1 風邪やインフルエンザなど、ウイルスや細菌の感染が原因となる呼吸器疾患

研究背景

緑茶に含まれる主要なポリフェノールのひとつであるカテキン(代表的な成分であるエピガロカテキンガレート;EGCgを含む)には、上気道における感染症の原因となるウイルスに対し抗ウイルス作用があることが、知られています*2 。また、緑茶でうがいをすることによるインフルエンザの予防効果に関しても報告されています*3 。これらの報告から、口や鼻から侵入したウイルスが到達して感染が成立する咽頭部の粘膜にカテキンを長くとどまらせることが、ウイルスの感染予防に効果的であると考えられました。

  • * 2 Nakayama M et al. Antiviral Research, 21(1993) 289-299
  • * 3 Yamada H et al. J. Altern. Complement. Med. 12(2006) 669–67

研究内容

静岡県立大学薬学部・鈴木隆教授と花王は、感染の場となる咽頭部粘膜の主要成分であるムチンに結合したカテキン(EGCg)の抗ウイルス効果に関して、A型インフルエンザウイルスを用いて評価を行ないました。その結果、ムチンに結合したカテキンが濃度依存的にインフルエンザウイルスを失活させることを明らかにしました(図1)。

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図1 ムチン結合カテキンの抗インフルエンザウイルス効果
(%はカテキン濃度。感染した細胞を青色で染色。青色が薄いほど抗ウイルス性が高いことを示します。)

次に、咽頭部粘膜モデルを用いてカテキン(EGCg)の粘膜への吸着性を評価しました。その結果、増粘剤であるキサンタンガムの添加濃度(粘度)依存的に、カテキン(EGCg)の咽頭部粘膜への吸着量が増加することを見出しました(図2)。すなわち、とろみをつけたカテキンが、咽頭部粘膜にとどまりやすいことを示していると考えられました。

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図2 咽頭部粘膜モデルへのカテキン(EGCg)吸着量

また、静岡県立大学薬学部・山田浩教授と花王は、医療福祉施設従事男女(20歳以上75歳未満の成人255名)を対象に、増粘剤でとろみをつけたカテキンを含む飲料の3カ月間の継続摂取が、急性上気道炎(インフルエンザを含む)の発症に及ぼす影響を検証しました。具体的には、試験飲料として57mgのカテキン(EGCgとして20mg)と増粘剤であるキサンタンガムを含み、とろみをつけた40mlの飲料の1日1回飲用群(低用量群:85名)および同飲料の1日3回飲用群(高用量群:84名)、また、プラセボ飲料としてカテキンを含まずキサンタンガムを含む飲料の1日1回飲用群(プラセボ群:86名)の3群にて、3カ月間(2017年12月から2018年2月まで)の継続摂取試験を行ないました。試験期間中に受診した医療機関での診断が風邪またはインフルエンザであった者と、調査票の記載から急性上気道炎またはインフルエンザ様疾患と判断された者*4 を急性上気道炎発症者としました。

  • * 4 WHO定義に基づく

その結果、試験期間中の急性上気道炎症状の発症率は、高用量群(3回/日)が13.1%で、プラセボ群(1回/日)の27.1%と比較して有意に低下することがわかりました(図3)。

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図3. 急性上気道炎発症率(学会発表データより作図)

以上の結果から、とろみをつけたカテキンを含む飲料の摂取により、急性上気道炎の発症が抑制されることが確認されました。

このたびお知らせした内容の一部は、第73回日本栄養・食糧学会大会(2019年5月17~19日・静岡市)で発表しました。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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