発表資料: 2017年10月26日

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皮膚上における紫外線防止効果の新たな評価法を開発

「第24回 IFSCC*1 Conference ソウル大会」にて発表
摩擦に強い製剤技術を用いたサンスクリーン*2 剤の開発へ

花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所は、豊橋技術科学大学工学部 中内茂樹教授との共同研究により、紫外線を使用した画像を解析することで、簡便で定量的に紫外線防止効果を評価する新たな手法(紫外線分光画像計測技術)を開発しました。
本手法により、日常的な活動では、汗よりも摩擦の方が紫外線防止効果を低下させる場合があることを可視化しました。
なお、本研究成果は、「第24回IFSCC Conferenceソウル大会(2017年10月23~25日開催)」にて発表しました。
今後、摩擦に強いサンスクリーン技術の開発を進めていきます。

  1. *1 International Federation of Societies of Cosmetic Chemistsの略。香粧品科学分野における国際連盟のひとつ。
  2. *2 紫外線の防止。日やけ予防。

現在、サンスクリーン剤の紫外線防止効果は、ISO(国際標準化機構)が定めた測定法に従って算出されています。しかし、サンスクリーン剤塗布後の活動において、汗や摩擦の影響でその効果が低下する場合があり、実使用場面での紫外線防止効果の測定が必要と考えられます。
そこで本研究では従来の指標に加えて、簡便かつ定量的で、さらに使用中における紫外線防止効果の変動を評価する新たな手法の開発を行ないました。

新たな紫外線防止効果の評価手法とは

今回構築した紫外線分光画像計測技術とは、サンスクリーン塗膜に紫外線を照射したときの紫外線反射光画像を計測する技術です。紫外線は肉眼で見ることはできませんが、紫外線(UV)カメラでは画像として紫外線を検出することが可能です。反射した紫外線を検出することで、どの程度紫外線が吸収されたかを知ることができます。すなわちサンスクリーン塗膜から反射した紫外線が少ないほど、サンスクリーン塗膜が多くの紫外線を吸収したことを示します。紫外線反射光画像においては、サンスクリーン剤を塗布した部分は紫外線を吸収するため反射光が少なく黒く(暗く)映り、塗布していない部分は紫外線が吸収されないため白く(明るく)映ります。本手法ではその原理を応用し、サンスクリーン剤塗布前後の紫外線反射光画像を比較することで、サンスクリーン剤の紫外線防止効果を推定できると考えました。また短時間で画像を計測できるため、紫外線防止効果の部分的な変動も確認できると考えました。
なお、通常では紫外線を照射した際、顔の凹凸により鏡面反射光が生じた部位では、サンスクリーン剤の有無にかかわらず画像が白く(明るく)映し出されてしまい、正確な紫外線反射光像を得ることができません。本研究では鏡面反射光の除去を可能とする偏光フィルターを加えることにより、鏡面反射光を除去し、より正確にサンスクリーン剤の塗布部位や塗布状態がわかる画像撮影が可能となりました(図1)。
紫外線防止効果はサンスクリーン塗膜の紫外線透過率で決まります。したがって、反射光像から透過率を算出する推定式を決定しました。さらに紫外線は波長ごとに日やけへの影響が異なるため、特定波長帯域を透過する干渉フィルターを複数利用し、各波長の透過率を算出、波長ごとの影響度を掛け合わせることで、正確な紫外線防止効果の評価に成功しました(図1の紫外線透過率を算出する式)。

図1 顔の向かって左半分にサンスクリーン剤を塗布し、UVカメラで撮影した顔面画像

20171026-001-01

新たな評価手法を用いた結果:実使用でのサンスクリーン剤の効果検証

実際にサンスクリーン剤を使用して紫外線防止効果がどのように変化するかを、本研究の新たな評価手法を用いて調べました。日差しの強い環境にて、サンスクリーン剤を使用し自然太陽光下でプールやゴルフなどのレジャー活動を行ない、剤を塗布した皮膚部位の紫外線防止効果を経時的に評価しました。その結果、活動時間の経過とともに紫外線防止効果が低くなり、またその低下も均一ではないことがわかりました。これはサンスクリーン剤の塗膜が活動により経時的、部分的に変化したことが原因と考えられます(図2)。同時に、同じ皮膚部位の日やけ状態も観察し(図3)、図2との比較を行ないました。各画像の中心、白い部分は銀色のシールを貼り付け、紫外線の暴露を完全に防いだ部位で、この部位との色差が日やけの程度を示しています。図2において、活動6時間後で紫外線防止効果が著しく低下している部位は、目印である銀色シール貼付部周辺に確認されますが、同一部位に明確な日やけが発生していることも示されました。

図2 同じ皮膚部位の紫外線反射光像の経時的変化

20171026-001-02

図3 同じ皮膚部位の活動6時間後の実際の皮膚のカラー画像

20171026-001-03

新たな評価手法を用いた結果:汗や摩擦の紫外線防止効果への影響

さらに、さまざまな使用シーンで紫外線防止効果の持続性を検討した結果、椅子にもたれる程度の摩擦でも、顕著に紫外線防止効果の低下が観察されました(図4)。そこで、モデル実験にて汗や摩擦が紫外線防止効果の持続に与える影響を調べました。その結果、摩擦が紫外線防止効果の低下に大きく関与することを確認しました(図5)。
この結果からサンスクリーン剤の効果を持続させるためには、摩擦に対する耐久性が大変重要であることが示されました。

図4 紫外線防止効果の低下典型例

20171026-001-04

 本実験で使用した椅子

20171026-001-05

椅子にもたれた後の背中

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椅子にもたれた後の背中の紫外線反射光像
(白い部分は紫外線防止効果が低下している)

図5 汗や摩擦が紫外線防止効果の持続に与える影響

20171026-001-07

*本資料は、重工記者クラブに配信しています。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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