発表資料: 2016年06月08日

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汗をかいた後に衣類から発生するニオイ成分とその原因菌を解明

~衣類上のマイクロコッカス菌が汗様臭を発生~

花王株式会社(社長・澤田道隆)ハウスホールド研究所・安全性科学研究所・香料開発研究所は、洗浄研究、微生物研究、ニオイ解析研究から、「清潔」を追求する本質研究に、積極的に取り組んでいます。

その一環として今般、汗をかいた後に衣類から発生する汗様のニオイ(着用汗臭)に関して、そのニオイ成分の原因物質と原因菌を解析した結果、
1)原因物質:汗様臭の不快度の高いニオイ成分として、短鎖および中鎖の複数の脂肪酸に由来することを確認しました(図1)。
2)原因菌:ニオイ発生の主な原因菌はマイクロコッカス属細菌であり、本菌は高い脂肪酸様臭生成能を有することも確認しました(図2)。

なお、本研究内容の一部は、平成28年度繊維学会年次大会(2016年6月9日、東京都)で発表します。また、今回の成果は、新しい衣料洗浄技術として、『アタックNeo抗菌EX Wパワー』の改良(2016年1月発売)に応用されています。

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研究背景

近年、生活者の衛生意識の高まりと共に家庭洗濯を取り巻く環境も変化し、汚れ落ちだけでなく、菌やニオイを気にする人が増えています。洗濯後でも気になる衣類のニオイの代表的なものとして、「生乾き臭」と「汗様のニオイ」があります。これまでに花王では、「生乾き臭」と呼ばれる雑巾様臭のキー成分が4-メチル-3-ヘキセン酸(4-Methyl-3-hexenoic acid:4M3H)であり、その発生の原因菌がモラクセラ属細菌であることを解明してきました。一方、洗濯後も気になる衣類のニオイとしては、「汗をかいた後に衣類から発生する汗様のニオイ(着用汗臭)」がありますが、そのニオイの発生メカニズムについては解明されていませんでした。

そこで今般、この着用汗臭にも「生乾き臭」と同様に微生物が大きく関わっていると考え、ニオイの成分と発生の原因菌について解析し、そのニオイ発生メカニズムを解明することを目的として研究に取り組みました。

研究結果

本研究では、洗濯後の中古衣類としてTシャツ、肌着を試験衣類(n=23着)としました。成人男性に着用して汗をかくような運動を行なってもらい、試験衣類を着用前、着用後に裁断して、ニオイならびに微生物解析用サンプルとしました。

(1)衣類のニオイ解析

衣類のニオイは、専門パネラーによる官能評価、および臭気成分を匂い嗅ぎGC(ガスクロマトグラフィー)ならびにGC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)分析装置により解析しました。
その結果、着用後に汗様のニオイと表現される悪臭の成分は、主に短鎖および中鎖の複数の脂肪酸臭に由来することを確認しました(図1)。具体的には、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸などの複数の短鎖脂肪酸や、4-メチルペンタン酸、4-メチル-3-ペンテン酸、4-メチルヘキサン酸、4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)などの複数の中鎖脂肪酸であることがわかりました。

(2)衣類上の微生物解析

着用前後の衣類に付着している微生物を抽出し、寒天培地上で分離・培養し、生菌数の測定および菌叢解析を行ないました。その結果、特にマイクロコッカス属細菌やスタフィロコッカス属細菌が、着用前後共、高頻度で検出され、多くの試験衣類で優占していました。

(3)原因菌の特定

単離した菌と汗を模した水溶液(モデル汗)を、滅菌した中古衣類片に接種して加湿培養を行ない、経時的なニオイの発生の確認を専門パネラーによる官能評価にて行ないました。また、皮脂汚れ成分を塗布した新品の布片に単離した菌とモデル汗を接種して加湿培養を行ない、着用汗臭成分の生成量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて解析しました。その結果、マイクロコッカス属細菌に高いニオイ成分生成能が確認されました。


以上の結果から、衣類の着用汗臭発生にはマイクロコッカス属細菌が深く関わっていることがわかってきました。マイクロコッカス属細菌は、自然界に広く分布しており、人の皮膚にも存在が確認されています。洗濯後(着用前)の衣類からも高頻度で菌数も多く存在していたことから、着用汗臭の抑制には、着用中に原因菌を増殖させないことに加えて、日々の洗濯において、原因菌を衣類から除去することが重要であると考えられます。

今後も花王では、”洗う”というコア技術を通じて、「清潔」を徹底的に追求する本質研究を進めていきます。


※本資料は、重工記者クラブに配信しています。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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