発表資料: 2016年03月16日
-VOCレス設計*3 で環境負荷を低減*4 した水性インクジェット用顔料インクを開発、産業印刷分野に新規参入-
花王株式会社(社長・澤田道隆)テクノケミカル研究所は、これまでに独自に設計した機能性ポリマーでナノサイズの顔料を被覆した(顔料ナノ分散技術)、水性のインクジェットインク用色材(顔料分散液)を開発し、高い信頼性で高速・高画質印刷を可能にするインクジェット色材技術を追求して研究開発を進めてきました。
今般、これまで花王の培ってきた「顔料ナノ分散技術」をさらに応用し、軟包装用フィルム基材への印刷に対して、VOCレス設計で環境負荷を低減した水性インクジェット用顔料インクの開発に成功いたしました。その結果、高品質で環境負荷を低減した、軟包装用フィルム印刷物を提供することが実現できました。
さらに、この水性インクジェット用顔料インクの技術は、高画質化を達成できるVOCレス設計の環境負荷を低減した水性グラビアインクに展開できることも確認しています。
花王は、本技術を用いて、産業印刷分野に新規参入いたします。さらに社会的課題の解決に貢献することをめざして、これまでに培ってきた研究知見を結集・融合した本質研究を深化させ、環境負荷低減に貢献する商品づくりおよびサービス提供を進めてまいります。
なお、今回の研究知見は、2016年度国際印刷・メディア産業展(drupa2016;ドイツ/デュッセルドルフにて、ドイツ現地時間で、2016年5月31日~6月10日開催)において、
1)プレスカンファレンス発表(ドイツ現地時間、6月1日、15:30-16:00)
2)展示ブース出展(ドイツ現地時間、5月31日~6月10日、Hall 3 E36)
を予定しております。
「顔料ナノ分散技術」を用いて、非反応型かつ非危険物で、高画質化を実現できる、VOCレス設計で環境負荷を低減した軟包装印刷向け水性インクジェット用顔料インクを開発しました。
株式会社シンク・ラボラトリーとの協業により、今般開発した水性顔料インクを用いて、ラインヘッド方式を採用した、高画質で高信頼性の軟包装用フィルム印刷を実用化できるインクジェット印刷システム技術を実現しました(図1参照)。
図1 水性インク専用インクジェットプリンター
さらに株式会社シンク・ラボラトリー、株式会社精工との協業により、この水性インクジェット用顔料インクの技術は、有機溶剤による希釈が不要で高画質化を達成できるVOCレス設計で環境負荷を低減した水性グラビア印刷システムに展開できることを確認しています。
改正大気汚染防止法(平成18年)の施行により、VOC(揮発性有機化合物)の大気への排出削減が求められています。印刷業界においても、VOCに対する自然環境、労働環境などの環境負荷低減の取り組みが進められています。
これまでの軟包装フィルム印刷では、高品質な印刷をするために、有機溶剤(VOC:揮発性有機化合物)を使用した油性インク、あるいは水性インクでもアルコールを含むものを使用していました。そのため、どうしても印刷工程の中で排出されるVOC量が高くなり、作業環境の課題への対応が必要でした。また、紫外線(UV)硬化型の反応性インクを使用する場合には、臭気が残るため、使用用途に制限がありました。
こうした社会的課題に対して、花王では、これまでに培ってきた、「顔料ナノ分散技術」に、「界面物性制御技術」の研究知見を結集・融合した本質研究を積み重ねてきました。今般、こうした研究の成果として、これまで水性インクでは高品質な印刷が難しかった、軟包装用フィルムへの環境負荷を低減した水性インクジェット用顔料インクを、世界で初めて開発しました。今後も、社会的課題の解決にも貢献する、付加価値の高い製品を生み出していくことをめざしています。
花王株式会社 広報部
※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。