発表資料: 2019年04月05日

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広島大学と花王の共同研究により
酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料の単回摂取による血管内皮機能*1 への効果を検証

広島大学(学長・越智 光夫)原爆放射線医科学研究所 ゲノム障害医学研究センター ゲノム障害病理研究分野 再生医科学研究部門 東幸仁教授(広島大学病院 未来医療センター長も併任)と花王株式会社(社長・澤田 道隆)生物科学研究所の研究グループは、コーヒー豆に含まれるポリフェノール「クロロゲン酸類」の生体への機能性について研究を行なってきました。クロロゲン酸類には血圧を下げる効果があることが報告されていますが、このたび、血圧が高めの日本人成人を対象にしたヒト試験で、コーヒー豆の焙煎により生成する酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料を単回摂取した場合、食後の血管内皮機能が改善することを示唆する結果を得ました。
本研究内容はEuropean Journal of Nutrition (2018)に掲載されています。また、研究内容の一部は、第83回日本循環器学会学術集会(2019年3月29~31日、横浜市)およびAmerican Heart Association Scientific Session (米国心臓協会学術集会、2017年11月11~15日、アナハイム、カリフォルニア)で発表しています。

  • * 1 血管内皮機能:血管の最内層にある細胞、血管内皮細胞の機能のこと。血管壁の収縮・弛緩(血管の硬さ、やわらかさ)、血管壁への炎症細胞の接着、血管透過性、凝固・線溶系の調節など、健康な血管の維持に重要な役割を果たしています。動脈硬化は血管内皮機能の低下から始まるとされています。血管内皮機能の低下は高血圧症や糖尿病などの病態に加えて加齢、肥満、運動不足、喫煙、塩分の過剰摂取などの生活因子でも引き起こされることが知られています。

今回の研究結果

  1. 血圧が高めの日本人成人を対象に、コーヒー豆の焙煎により生成する酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料を食事とともに単回摂取させました。その結果、血管内皮機能の指標であるFMD(Flow-Mediated Dilation)の摂取後1時間後、2時間後の数値が摂取前より改善することを確認しました(図1 試験①(1)、試験②(3))。
  2. 酸化成分を低減していないクロロゲン酸類含有飲料、酸化成分およびクロロゲン酸類非含有飲料の単回摂取では、摂取後に血管内皮機能の改善は認められませんでした(図1 試験①(2)、試験②(4))。
  3. 酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料の単回摂取後のFMDと血中クロロゲン酸類濃度には正の相関が認められ、クロロゲン酸類の血中濃度の上昇と血管内皮機能の改善には関係性があることが示唆されました。

これらのことから、酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料の単回摂取によって血管内皮機能が改善すること、および、焙煎により生成する酸化成分がクロロゲン酸類の血管内皮機能改善効果を弱めることが示唆されました。

図1 試験飲料摂取後の血管内皮機能の変化
平均値±標準偏差 Paired t test (vs. baseline)  European Journal of Nutrition (2018).より改変、作図

研究の背景

コーヒー豆に豊富に含まれる抗酸化効果を持つポリフェノールの一種、クロロゲン酸類には血圧を下げる効果があることが報告されています。コーヒーの摂取量が多いと循環器疾患の発症リスクが低下することが知られていますが、一定の見解を得られるには至っていません。その理由の一つとして、コーヒー豆を焙煎する過程で、コーヒー豆中の多くの成分が焙煎度に応じて変化することが影響していると考えられます。焙煎の過程でコーヒー豆中の酸化成分であるヒドロキシヒドロキノンは増加し、クロロゲン酸類は減少します。ヒドロキシヒドロキノンは生体内で活性酸素を比較的多く発生させて、酸化ストレス負荷物質となることや、クロロゲン酸類の降圧効果を弱めることも報告されています。
広島大学と花王は共同研究により、酸化成分ヒドロキシヒドロキノンを低減し、クロロゲン酸類を豊富に含む飲料を用いてクロロゲン酸類の機能性について検証を重ねてきました。今回、酸化成分を低減したクロロゲン酸類含有飲料が食後の血管内皮機能に及ぼす影響について、血圧が高めの日本人成人を対象に評価しました。

研究内容

血圧が正常高値*2 またはⅠ度高血圧*3 の男女を対象に、酸化成分ヒドロキシヒドロキノンを低減したクロロゲン酸類含有飲料の単回摂取が食後の血管内皮機能に及ぼす影響を検証しました。

  • * 2 正常高値血圧者: 収縮期血圧130~139mmHgかつ/または拡張期血圧85~89mmHg
  • * 3 Ⅰ度高血圧者: 収縮期血圧140~159mmHgかつ/または拡張期血圧90~99mmHg

<対象者> 血圧が正常高値またはⅠ度高血圧の男女37名
<試験方法> プラセボ、コントロールを用いた2つのクロスオーバー試験を実施(図2)。食事と試験飲料を摂取し、摂取前/摂取1時間後/摂取2時間後に血管内皮機能(FMD)、血中クロロゲン酸類濃度を測定しました。
<試験飲料>
A: 酸化成分低減クロロゲン酸類含有飲料
B: 酸化成分非低減クロロゲン酸類含有飲料(コントロール)
C: 酸化成分およびクロロゲン酸類非含有飲料(プラセボ)

図2 試験の流れ

お問い合わせ

広島大学 原爆放射線医科学研究所
ゲノム障害医学研究センター ゲノム障害病理研究分野
再生医科学研究部門 教授
広島大学病院 未来医療センター長
東 幸仁

082-257-5831

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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