トップメッセージ

強くてしなやかな新生花王への変貌を急ぐ

2022年6月
代表取締役 社長執行役員 長谷部 佳宏

中期経営計画「K25」の初年度は激動の1年

2021年度、花王は新たな中期経営計画「K25」をスタートしました。2030年を見据えた「K25」の基本構想は以下の3つです。①持続可能な社会に欠かせない企業になる、②投資して強くなる事業への変革、そして③社員活力の最大化、です。そして、この困難な事業環境の中、花王は大きく稼ぐ事業モデルの変革を成し遂げなければなりません。しかし、スタートの年から、業績においてはこれまでの成長路線から大きく外れています。もちろん、新型コロナウイルス感染症の蔓延や原材料高騰などの外的因子はあるにしても、ビジネスを順調に支えられなかった事実があります。この課題は突然起こったことではなく、改革スピードを一段と上げなければならないことを意味しています。

既存事業再生と新事業創成による両輪の改革

昨年より花王は、既存事業の再生をめざすReborn Kaoと新事業の創成をめざすAnother Kaoというコンセプトで両輪の改革を進めています。Reborn Kao は、その名の通り、メリハリある投資とブランドの強化によって今の事業を強くすることです。Another Kaoは、今までの花王がやらなかったこと、やれなかったことをテーマにしています。ただし、花王の技術が活きること、花王の人財が活かされること、花王の今の事業と最終的にシナジーを生み出すことを条件に定めています。そしてその目標は、「未来への5つの約束」です。

Reborn Kao:モノづくりとマーケティングの大改革

まず、花王が大至急進めるのがモノづくりとマーケティングの大改革です。
カテゴリーリーディングブランドを強化するためのメリハリある投資を実行していきます。そしてお客さまに長くご愛顧いただくことを重視するロイヤリティ・マーケティング、すなわち、お客さまとの強い絆を重視するリテンション型マーケティングに大きくシフトします。そのためには、特徴ある機能的価値が備わった商品が必要ですし、お客さまのこころに響き、他の人に伝えたくなるほどの伝播力のある価値も大切です。さらに、デジタル技術を活用した新たな体験、そして究極のパーソナライズを提供していきます。
同時に加速させるのが、循環型社会に貢献する「ESG視点でのよきモノづくり」です。この定義は、最小限の消費で最大限の価値 (Maximum Value with Minimum Waste)です。未来型商品においては、商品をつくるエネルギー、物質、労力が最小限ながら、お客さまのさまざまな価値が強く、長く満たされることが大事です。
次に、グローバル化に関しては、今回の課題認識を踏まえて、競合との熾烈な争いや価格競争に巻き込まれにくいオンリーワン価値の提供をめざしていきます。そして、現地での価値、コストパフォーマンス、製造を基本とした地産地消モデルへの転換を図ります。
欧米においては、ターゲットカテゴリーでNo.1をめざしていきます。すでにサロンヘアカラーでは、極めてユニークな商品を展開しており、世界での存在感が高まってきました。そして、欧米でのボディスキンケアにおいても、他社と一線を画する商品を展開しています。
ケミカル事業は、すでにユニークな商品・サービスを数多く有しており、業界トップクラスのビジネスを展開しています。「ESG視点でのよきモノづくり」を具現化する提案は、まずはケミカルから大きく花を開かせたいと考えています。

Reborn Kao:高収益事業への抜本改革

もうひとつめざすことは、高収益事業へ大きく舵を切ることです。投資方針を明確にするために、昨年より、3つの領域に事業を区分けしました。安定収益領域、成長ドライバー領域、事業変革領域です。安定収益領域は、高利益率で基盤を支える事業であり、カテゴリーのリーダーとして戦略的に事業を強化していきます。成長ドライバー領域では、効果的な投資をしながら、グローバルでの成長を加速します。一方、事業変革領域は、高利益体質を維持または強化するためのビジネスモデルの変革が必要です。現在、その改革を急いでいます。
そして、コンシューマープロダクツ事業においては、パーパスドリブンのブランド管理を強化していきます。パーパスを核に、特徴あるブランド群がシナジーを生み出すように設計することで、多くのブランドを展開する花王の強みを活かしていきます。
昨年は、特にデジタルシフトしたブランドと事業が伸張しました。国内の化粧品と男性用洗顔料、欧米のサロンヘアケア、そして米州のボディスキンケアです。中国でのベビー用紙おむつでは、成長を応援する新提案を行ないました。排尿後も膨らみにくく、歩きやすい紙おむつを発売すると共に、赤ちゃんの歩行発達をスマホで手軽にモニタリングし、成長アドバイスを行なうサービスを提供しました。この提案は受け入れ性も高く、現地生産を進めています。このように、お客さまと価値を測る“ものさし”が共有化されていると、実感していただける“価値”が増大することが証明されました。

Another Kao:新事業の創成

新事業モデルをめざすAnother Kaoの具体的な取り組みが2022年から始動しました。対象の状態を精確に同定するモニタリング技術を駆使し、原因を的確に解決するソリューションを提供するビジネスモデルです。一般に、原因が明確な課題に対しては、尖った商品設計が可能ですが、多くは原因が不特定であるため、汎用性の高いソリューションになりやすく、実感できる価値も大きくありません。しかし、皮脂RNAモニタリングや歩行モニタリングなど、簡単に入手できるデータから因果関係を割り出すプラットフォームを一般化させることで、的確なソリューションの提供が可能になります。これを花王だけが独占するのではなく、多くの人々に利用していただくことで、応用性を高めることができます。
原因が特定されていなくても、相関関係を推定することで、必要とされるニーズに汎用的に応える「仮想人体生成モデル」の実用化も、今年からスタートさせました。このモデルは、本来はつながりにくいとされる多種多様な項目をインプットデータとして活用すること、さまざまなリクエストに対して推定値を返すことを可能にします。これらの特徴から、このモデルはさまざまな他業種が連携して活用できるため、今年から多くの協業をスタートさせました。このモデルの開発は、世界屈指のディープラーニング技術を有する株式会社Preferred Networksが手がけており、花王の特徴あるデータ群が活用されています。
また、産業分野においても、モニタリング技術をベースにさまざまなソリューションを展開していきます。アジュバント(農業)やインフラ(道路)などの領域において、花王の「ESG視点でのよきモノづくり」の方針に合致する新たなビジネスモデルの社会実装を急いでいます。

“人の躍動”がすべての原動力

花王の企業理念「The Kao Way」は、2004年に策定され、先人から引き継がれた花王のよき精神を社員全員に広めるためのものとして浸透してきました。そして、すべての原点となる礎として社員が実践してきました。
一方、花王が変革期にある時には、社員が常識にとらわれないことが大切です。2021年、これからの花王に必要な3つのポイントを中心に改定しました。使命(パーパス)は「豊かな共生世界の実現」としました。ビジョンは「人をよく理解し、期待の先いく企業に」とし、行動原則に「果敢に挑む」を加えました。
このアップデートは、グローバルチームのメンバーが自らの想いを込めてつくり出したものであり、花王が大切にする「正道を歩む」「よきモノづくり」「絶えざる革新」などの姿勢が変わることはありません。この改定に合わせて、高く挑戦的な目標を掲げるOKR(Objectives and Key Results)も浸透し始め、多くの社員が変革に向けて動き出しました。

最後に

昨年宣言した通り、私たちは、消費を前提としたモノづくりから、資源を循環させるモノづくりへと変革していきます。「数」と「量」の線形型経済から、「質」と「絆」の循環型経済への移行です。そのためにも、誰もが納得できる発展する循環型のビジネスモデルの構築をめざします。2022年度も、厳しい環境の中での事業改革になると予想されます。しかし、この混沌を意識改革の好機と捉え、強くてしなやかな新生花王への変貌を急ぎます。

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