発表資料: 2023年10月31日

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関節の動きを解析する「歩行メカニクスモニタリング技術」を確立
スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を見える化

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)パーソナルヘルスケア研究所は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(理事長・石村和彦)との共同研究により、歩行時の骨盤の3軸加速度データ*1 から、骨盤や下肢関節の動きや姿勢を可視化し、スコア化する歩行メカニクスモニタリング技術を確立しました。さらに本技術を応用し、スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を評価できる研究アプリ「Walk Coordinator」を開発しました。花王は、この技術を歩行機能が低下する原因を明らかにするツールとして研究開発に応用し、人々の心身の健康増進に貢献していきます。
今回の研究成果は、第10回日本予防理学療法学会学術大会(2023年10月28~29日・北海道)にて発表しました。

  • * 1 3次元で物体が加速、減速する際の速度の変化率。その情報は物体の位置や動きの把握に利用されます。

歩行メカニクスモニタリング技術開発への取り組み

花王は、歩きやすい紙おむつの開発や高齢者の歩行・健康支援などをめざして、10年以上にわたって歩行解析技術の開発を進めてきました。近年では、詳しい歩行の状態をより簡便に解析する技術の検討を行っています*2
私たちが日常的に利用しているスマートフォンの多くには3軸加速度センサーが搭載されており、歩数や睡眠のデータなど、健康情報をまとめてアプリに記録することができます。そこで、今回花王は、国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究チーム*3 と共同でスマートフォンを活用し、簡単に、かつ詳細に歩行時の姿勢や癖を視覚化する技術の開発と応用をめざしました。

歩行中の姿勢や動作を視覚化し、得点化する「歩行メカニクスモニタリング技術」を開発

歩行動作には骨盤や下肢関節の動きが大きく関わることから、歩行解析にはその様子を推定することが必要です。そこで、国立研究開発法人産業技術総合研究所が保有しているAIST歩行データベース*4 の20~70代(274名)の1歩行周期*5 データを用いて、骨盤の動きに関する加速度データから、骨盤および下肢関節角度データの推定を試みました。骨盤の動き(606変数/1名)と骨盤および下肢関節角度データ(2424変数/1名)をそれぞれ主成分分析*6 し、歩行動作を推定するモデル(関係式)を構築しました。この推定モデルを用いると、スマートフォンで計測された加速度データからでも、歩行時に骨盤や下肢関節が動く様子を連続的に再現し、詳細に視覚化することができました(図1)。
さらに、花王が約2万人の歩行データから作成した歩行の基準値*7 と推定結果を照らし合わせると、歩行の姿勢を得点で評価することも可能となりました。

骨盤の加速度データから歩行時の骨盤や下肢関節を連続的に再現する技術を開発

図1 骨盤加速度データから歩いている様子を
連続的に再現した時の骨盤や下肢関節の状態の例

  • * 4 専門家による取得が必要な全身の運動および力学的情報に関するデータが蓄積されているデータベース。
  • * 5 歩行時にかかとが接地して、そのかかとが再び接地するまでのサイクル。
  • * 6 多くの情報を少ない変数に要約し、データを理解しやすくする統計的な手法。
  • * 7 シート式圧力センサによる歩容理想範囲と健康指標との関連 第65回日本老年医学会学術集会(2023年6月16~18日・神奈川)

歩行メカニクスモニタリング技術を応用した研究用アプリケーションソフトウェア「Walk Coordinator」

花王と国立研究開発法人産業技術総合研究所は、歩行メカニクスモニタリング技術を応用し、スマートフォン用のアプリ「Walk Coordinator」を開発しました(図2)。「Walk Coordinator」は、スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけという簡単な方法で、歩行速度や歩幅等の計測に加え、骨盤や股関節、膝関節、足関節等の動きの視覚化・得点化ができることが特徴です。
花王は、このアプリを研究の場面で活用し、歩行時の姿勢や癖の悪化の原因を解析し、歩き方を改善する研究開発へ応用していきます。

骨盤加速度データから歩いている様子を経時的に再現した時の骨盤や下肢関節の状態の例

図2 歩行の状態を視覚化する研究アプリの開発

まとめと今後

歩行中の骨盤の加速度データから、骨盤や下肢関節の動きを精度よく推定し、得点で評価する歩行メカニクスモニタリング技術を構築しました。さらに本技術をスマートフォン用のアプリに応用することにより、お腹に抱えて8歩歩くだけという簡単な方法で、歩行の姿勢や癖を評価できるようになりました。今後は、この技術を歩行機能が低下する原因を明らかにするツールとして研究開発に応用し、歩行機能の維持・向上を支援することで、人々の心身の健康増進に貢献していきます。

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