発表資料: 2019年02月08日

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自律訓練法の心・肌・体への影響に関する調査研究
ホリスティックケアを取り入れた新しいスキンケアタイムの提案へ

花王株式会社(社長・澤田道隆)スキンケア研究所は、心身医学療法のひとつである自律訓練法のホリスティックな作用に着目し、気持ちや身体、肌への効果について、2015年より筑波大学 坂入洋右教授(日本自律訓練学会副理事長、日本マインドフルネス学会副理事長)と共同で研究を進めています。これまでの研究で、自律訓練法を日々の生活に取り入れることによる、心理状態、身体機能、さらには肌状態への影響が明らかとなってきました。
これを背景に、今般、自律訓練法の要素を取り入れた新しいスキンケア手法を考案しました。その手法で毎日のスキンケアを行なうことによる、気分の安定度(リラックス度)の増加、自律神経機能改善、疲労感軽減、肌のキメ改善への可能性を確認しました。

自律訓練法について

自律訓練法は、ドイツの精神科医のシュルツ(J.H.Schultz)博士によって1932年に体系化された、心理生理的訓練法です。「気持ちが落ち着いている」「右腕が重たい」「右脚が温かい」などの決められた公式を、心の中でゆっくり唱え、身体の感覚に意識を向けていきます。これにより、不安や緊張の緩和、自律神経系のバランスの回復、心身の安定など、心理生理的効果があるとされ、心療内科でも活用されているほか、産業界や教育機関でもストレスマネジメントの方法のひとつとして普及・推奨されています。余分な緊張がなく、ゆったりとした心身の弛緩を自身の力で得られるようになるためには、毎日実施し、練習を行なうことが重要とされています。

自律訓練法の肌と身体への影響

乾燥肌あるいは敏感肌を自覚している40-50代の閉経女性14名に、8週間毎日朝と夜の1日2回、自律訓練法の標準練習の背景公式、第1公式、第2公式の3つの公式*1 を消去(取り消し)動作*2 と合わせて実施してもらいました。実施前と実施8週間後に肌計測および身体機能計測を行ない、実施前後の変化を、自律訓練を実施しない対照グループ12名と比較しました。
その結果、肌については、自律訓練法を実施したグループは対照グループと比較して、8週間後に頬部の角層水分量が増加(図1左)、「皮膚弾力性」が増加傾向(図1右)であることを確認しました。身体機能については、心拍変動パラメータccvLF/HFの変化量に顕著な差がみられました(図2)。
両グループとも自律訓練を始める4週間前から同一のスキンケア製品を使用していることから、今回の試験により得られた角層水分量および皮膚弾力性の増加といった肌状態の変化は、スキンケア製品の効果ではなく、毎日実施した自律訓練法の影響であると考えられました。また、身体機能についても、自律訓練の実施によって、自律神経活動バランスが安定し、自律神経機能が良好になり、よりリラックスした状態になったと考えられます。

  • * 1 標準練習の公式  背景公式(安静練習):「気持ちが落ち着いている」、第1公式(四肢重感練習):「両腕・両脚が重たい」、第2公式(四肢温感練習):「両腕・両脚が温かい」
  • * 2 消去(取り消し)動作:両手の開閉・両腕の屈伸・背伸び

自律訓練法の肌への影響を客観的に検証した研究は過去にはなく、この調査研究によりはじめて明らかとなりました。また、中高年女性での身体機能(自律神経)への影響に関しても、これまで乳がん手術患者を対象とした効果は報告されていたものの、健常な閉経女性での効果については、はじめて示されました。

自律訓練法の要素を取り入れた新しいスキンケア手法の、肌、身体と気持ちへの影響

さらに花王は、自律訓練法を無理なく毎日の生活に取り入れるタイミングとして、多くの人が毎日行なっている朝と夜のスキンケアの時間に着目し、自律訓練法の要素を取り入れたスキンケア手法を開発しました。目を閉じて、肌と身体にぼんやり注意を向け、肌や身体がどのような状態なのかを感じながらスキンケアを行ない、その後、その時の肌や身体について気づいたことを記録し毎日セルフモニタリングを行なうという方法です。このとき、スキンケア製品はいつも同じように手で塗布します。この手法で毎日スキンケアを続けた場合の肌状態、身体機能および心理状態への影響について、検証しました。
乾燥肌あるいは敏感肌を自覚している40-50代の閉経女性13名に、8週間、毎晩のスキンケアの際に新しい手法を取り入れたスキンケアを行なってもらいました。事前と実施8週間後に肌計測および身体機能計測、アンケートによる心理評価を行ない、新しいスキンケア手法を行なわない対照グループ16名と比較しました。
その結果、身体機能への影響として、新スキンケア手法グループは対照グループと比較して、自律神経活動の評価法のひとつである冷水負荷による5分後の皮膚温回復率が増加している傾向(図3)、ストレスチェック*3 の「疲労感」について、疲労感が軽減していることを確認しました。また、気持ちの変化としては、二次元気分尺度*4 の「安定度」が顕著に上昇(図4)していました。肌への影響としては、期間中、対照グループではキメ形状が悪化する傾向にあったのに対して、新スキンケア手法グループではそれが抑制されていました。
さらに、新スキンケア手法グループは、自覚する肌の調子や体調が8週間後に良好になっている傾向、顔写真を用いた第3者による印象評価において「いきいき」とした印象がより強いという結果も確認できました。

  • * 3 厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムで用いられているストレスに関する検査法。質問票(選択回答)に記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを評価できる
  • * 4 二次元気分尺度:坂入洋右教授らが開発した質問紙による抑うつ・不安・活力・安心を総合的に評価する検査法。心理状態(気分)を自身がモニターし、「快適度」と「覚醒度」、その因子となる「活性度」と「安定度」を測定。「安定度」は、リラックスしているかイライラしているのか気分が落ち着いているのかを測る尺度

自律訓練法の要素を取り入れた新しいスキンケア手法は、自律神経機能の改善に伴って身体機能・皮膚機能改善を促進する可能性が示されました。参加者の継続意向も高く、試験終了時には「スキンケアの時間が生活の一部になった」「体や心の調子を自分自身で知ることが出来るのでよかった」など、自律訓練法の効果とほぼ類似した実感を得られていることも確認しました。

まとめ

毎日のスキンケア時に、自律訓練法のホリスティックでマインドフルネス的な考え方*5 を取り入れることによる心・体・肌へのポジティブな効果を確認し、このことにより、使用するスキンケア製品の効果や心地よさが高まる可能性を見出しました。
今後は、これらの知見をもとに、さらに効果的なスキンケア手法へと改良を行ない、毎日のスキンケアの時間に、内外面から美しさを引き出せるような新しいホリスティックケアを提案したいと考えます。

  • * 5 今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること

なお、この研究成果の一部は、「日本自律訓練学会第39回大会」(2016年9月16~18日開催)および「日本自律訓練学会第41回大会」(2018年10月19~21日開催)で発表し、第39回大会では、最優秀研究発表賞を受賞しました。

お問い合わせ

花王株式会社 広報部

03-3660-7041

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

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