40～50代の不調は更年期によるもの？症状や対策・治療法をくわしく紹介【専門医が解説】

更年期とは、「閉経前の5年間と、閉経後の5年間を合わせた10年間」を指します。つまり、更年期はすべての女性が通過する時期なのです。
そして、更年期を決める閉経年齢には個人差があります。40代で閉経する人もいれば、60歳近くに閉経する人も。そのため、更年期は人によって時期が多少異なります。ただし、日本人の閉経年齢は平均50.5歳。多くの女性は、45歳～55歳あたりに更年期を迎えるといえるでしょう。
更年期には、女性ホルモンのエストロゲンが大きくゆらぎながら急激に減るので、それに伴い、さまざまな不調が現れやすくなります。

閉経前後の10年間は、卵巣機能の低下によって女性ホルモンのエストロゲンは分泌が急激に減り始め、最終的にほぼゼロになります。じつは、このエストロゲンの分泌を指示しているのが脳です。脳は必死に「エストロゲンを出して！」と指令しているのに、老化した卵巣はそれに応えることができません。そのため、脳はパニック状態になり、自律神経をコントロールしている脳の視床下部の働きも低下して、不調が起こりやすくなります。
また、エストロゲンが担ってきた役割をきちんと果たせなくなることで起こる不調もあります。エストロゲンは、「女性の美と健康の守り神」といってよいほど、心と体のために活躍してくれるホルモン。そのホルモンが急激に減るのですから、心身にさまざまな影響が出るというわけです。

ただし、更年期に不調が現れやすいのは、女性ホルモンの減少だけが原因ではありません。
①女性ホルモンの減少、②気質・体質、③環境の3つの要因が絡み合って、不調の症状や強さに違いが出ます。

FemCareLABで行ったアンケート調査では、「これって更年期症状かも？」と感じている女性の8割強が、生活に支障を感じるほどの不調を抱えていることがわかりました。その不調の中身はじつにさまざま。しかも大半の女性が複数の症状を抱えていました。
中でも、最も多かった不調が「ホットフラッシュ、多汗、のぼせ」（95％）です。次に「イライラする、怒りやすい」（83％）、「だるい、疲れやすい」（76％）、「頭痛、めまい・耳鳴り、ふらつき」（65％）、「尿もれ、頻尿」（59％）と続きます。
以上のことから、更年期は体と心、両方の不調が起こりやすいことがわかります。

突然、カーッと顔や首が熱くなる症状を「ホットフラッシュ」と呼びます。ホットフラッシュをはじめ、多汗、のぼせの直接の原因は、自律神経の乱れです。自律神経が乱れると体温調整がうまくできなくなり、これらの症状が現れます。

女性ホルモンの減少に伴い、骨量や筋肉量も減る傾向があります。そのため、骨盤底筋もゆるみやすくなります。骨盤底筋には、膀胱などの内臓を支える、排尿・排便をコントロールするといった役目もあるため、骨盤底筋がゆるむことで尿もれや頻尿が起こりやすくなります。

「うるおいホルモン」ともいえる女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、デリケートゾーンは乾燥と萎縮が起こりやすくなります。その上、腟内の善玉菌が減少し腟内環境が悪くなることで自浄作用も弱まるので、細菌の繁殖や炎症が起こりやすい状態に。そのため、嫌なにおいがすることも。こうした変化とそれに伴う不快症状を、「GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)」と呼びます。

女性ホルモンのエストロゲンは、「幸せホルモン」ともいわれるセロトニンの生成にも関わっています。エストロゲンが減るとセロトニンも減少し、感情をコントロールしづらくなります。
また、ホルモンバランスの変化は自律神経の乱れも引き起こし、その影響で、落ち込みやうつ気分などの精神症状が現れることも。その他、家庭や仕事などの環境ストレスが原因になることもあります。

女性ホルモンが低下して体全体の機能が低下するため、「だるい」「疲れやすい」と感じる人は多いでしょう。また、動悸や息切れ、息が苦しくて深呼吸ができないなどの症状は、ホットフラッシュなどと同じく、自律神経の乱れが原因で起こることがあります。

睡眠には自律神経の働きが大きく関わっています。活動モードの交感神経から休息モードの副交感神経へのスムーズな切り替えができれば、質の良い睡眠が得られます。ところが、女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れると、その切り替えがうまくいかなくなり、なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚めるなどの症状が出ることがあります。

女性ホルモンのエストロゲンには、関節や腱の周りにある滑膜（関節の滑らかな動きを守る組織）を保護する作用があります。手指のこわばりや痛みを引き起こす原因はほかにも考えられますが、エスロトゲンの減少も要因の1つだと考えられています。手指の第一関節が変形する「ヘバーデン結節」や、手指が変形する「手根管症候群」は、更年期に比較的起こりやすい手指の疾患です。

加齢や運動不足による筋力低下が、こりや痛みを招きます。また、女性ホルモンの減少によって血行が悪くなることも原因の1つです。さらに、自律神経が不安定になることで痛みに敏感になることも関係している可能性があります。

女性ホルモンの急激な変化が影響して、血管の拡張と収縮の調節がうまくいかなくなり、片頭痛を招くことがあります。また、更年期に血行が悪くなることで、首や肩がこり、緊張型頭痛が起こることもあります。
一方、めまい、耳鳴り、ふらつきなどの症状は、自律神経の乱れが原因の可能性が高いでしょう。ただし、激しいめまいや耳鳴りは脳や内耳の異常が原因のこともあるので、まずは脳外科や耳鼻科、めまいの専門医を受診しましょう。

エクオールは女性ホルモンのエストロゲンとよく似た働きをする成分です。以前は大豆イソフラボンにエストロゲンのような効果があるといわれていましたが、それは体内で大豆イソフラボンをエクオールに変換できた場合の話。体内でエクオールを作れるか否かは、腸内に「エクオール産生菌」がいるかどうかにかかっています。そこで、活用したいのが、エクオールのサプリメントです。サプリメントは、品質が確かなものを選びましょう。

減ってしまった女性ホルモンを薬で補ってあげるのが、ホルモン補充療法です。補充するホルモンは必要最小限の量。体内で急降下する女性ホルモン量の曲線がゆるやかな下降になるよう調節するイメージです。使用する薬は飲み薬・貼り薬・塗り薬の3タイプがあり、保険適用になります。

漢方薬は一人一人の体質や体調を医師が見極めて決めます。更年期の治療によく使われるのは、加味逍遙散（かみしょうようさん）、桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）、当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）など。保険適用になり、ホルモン補充療法と併用することも可能です。

疲労回復に役立つビタミンとミネラル、骨を丈夫にしてイライラを鎮める働きもあるカルシウムは特に意識して摂取したい栄養です。

食事は就寝の3時間前に済ませる、寝る前に軽くストレッチをする、寝る前のカフェイン・アルコールを避けるなど、質の良い睡眠のための工夫をしてみましょう。

筋肉をつければ体力がつき、基礎代謝も上がります。また、適度な運動はリラックス効果も期待できます。

副交感神経を優位にするなら、38～39℃が適温。ゆっくり湯船に浸かりましょう。

心身の緊張をほぐす方法を見つけ、日頃から実践しましょう。例えば、軽いストレッチ、腹式呼吸、アロマセラピー、ヨガ、ツボ押しなど。自分に合ったものを見つけましょう。