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お悩み相談室 Q&A

Q.デリケートゾーン(陰部)のにおいが気になります。更年期の影響?洗ってもにおいが取れないのはなぜ?

2023.12.20

50代に入ってから、デリケートゾーン(陰部)のにおいが気になるように。着替える時などに、尿のようなアンモニア臭ではなく、すえたようなイヤなにおいがします。ショーツにも移り、洗濯してもにおいが残ります。家族から、いつ指摘されるかと思うと気持ちが落ち込みます。何かの病気でしょうか?どうすれば、におわなくなりますか?(50代女性)

A.陰部の乾燥・うるおい不足で腟内の自浄作用が低下すると、イヤなにおいが。デリケートゾーンを正しくケアする習慣を。

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<回答したスペシャリスト>
女性泌尿器科医師・佐藤亜耶先生

更年期。女性ホルモンの減少は、デリケートゾーンに影響大!

40~50代といえば、閉経前後の更年期世代。うるおいホルモンともいえる女性ホルモン(エストロゲン)が著しく減少するため、女性の体はうるおい不足になりがちです。デリケートゾーンも例外ではありません。
本来、腟内はおりものなどの分泌液でうるおって、細菌などを洗い流しています。ところが、腟のうるおいが失われて乾燥すると自浄作用が低下し、細菌の繁殖や炎症が起こりやすくなります。

また、エストロゲンは腟にグリコーゲンを貯め込む働きもあるのですが、このグリコーゲンが減ってしまうと、それをエサにしている腟内の善玉菌(デーデルライン桿菌)も減少してしまいます。善玉菌は乳酸を作り出し、腟内を弱酸性に保つことで、病原菌の侵入を防いでくれる大事な菌です。
エストロゲンの減少は、腟内を細菌が増えやすい環境に変えてしまい、その結果、デリケートゾーンのかゆみ、においが現れやすくなるのです。

においの正体は、細菌の繁殖。皮膚にしみ込んだ汗なども原因に

腟内の自浄作用が低下していると、デリケートゾーンならではの汚れ(経血、おりもの、汗や皮脂)に細菌が繁殖し、においやすくなります。また、ワキガの元といえるアポクリン腺はデリケートゾーンにも多いので、汗がムレると独特のにおいが生じます。

陰部のにおいの原因はコレ!

  • 腟内のうるおいが失われ、自浄作用が低下。細菌が増えやすい
  • 腟内の善玉菌(デーデルライン桿菌)が減り、細菌が増えやすい
  • 洗いきれていない脂性の「恥垢」(経血、おりもの、汗や皮脂といった体から排出される分泌物が固まって溜まった垢)
  • デリケートゾーンに多いアポクリン腺から出た汗

におい対策の基本は、やさしく洗う&しっかり保湿

細菌の繁殖を防ぐことが「におい対策」になるのですから、デリケートゾーンを清潔に保つことは大事ですが、強い水圧や高めの湯温で洗ったり、ゴシゴシ石けんで洗ってはいけません。においが気になる方は、神経質になってゴシゴシ洗いすぎる傾向がありますが、実は逆効果。デリケートゾーンの皮膚は顔よりも薄くて敏感です。ぬるま湯でやさしく洗いましょう。また、細菌から守ってくれる善玉菌まで洗い流してしまわないように、弱酸性の専用ソープや専用オイルを使うことも忘れずに。

デリケートゾーン専用ソープを。優しい泡タイプの洗浄剤(弱酸性)が便利です。

そして、何よりも大切なのが、デリケートゾーンのバリア機能を高めるために、保湿をしっかりすること。洗った後は専用のローションやオイルでしっかり保湿を。保湿の際にマッサージも行うと、より効果的です。マッサージは、清潔な指で保湿剤を塗り込みながら、腟まわりをほぐしなでるように。こうすることで、保湿と共に血行を促すことができ、うるおいとハリがよみがえります。

また、清潔に保つために医療脱毛(VIO脱毛)などでアンダーヘアを処理するのも対策のひとつです。中でもやはり医療脱毛がおすすめです。受診が難しくて自分でお手入れをする場合は、熱で毛を焼き切る専用のヒートカッターなどを使うと、毛先がチクチクせず、自然に整えることができます。ただし、ご自身で行う場合は、皮膚を傷つけて感染を起こすことも多いので、くれぐれも注意してください。 

デリケートゾーンの洗い方

洗浄ソープはしっかり泡立て、泡で包み込むように。指の腹でなでるように外陰部を洗い、最後に肛門のまわりを洗いましょう。腟の中は洗いません。

下着選びもこだわって。ムレない環境づくりも大切

におい対策には、デリケートゾーンのムレを防ぐことも大切です。ショーツは吸水性が高く(=汗を吸い取る)、通気性の良い(=ムレを防ぐ)素材のものを選びましょう。おりものが多い場合はおりものシート、尿もれがある場合は吸水ライナーや吸水ナプキンなどを利用して、こまめに取り替えることも対策になります。(たとえ汚れていなくても湿気がこもるため、こまめに交換することが大事)
また、日中、気になる場合は、デリケートゾーンの汚れを拭き取る専用シートを利用するのもいいでしょう。

おりものシートと同じくらいの超薄型の吸水ライナー。こんなに薄くても、尿もれケア専用品ならではの安心感が。

婦人科の石山尚子先生にも「におい」について伺いました!

女性ホルモンを補う、乳酸菌を増やす、といった対策もあり

40代以降の更年期世代にとって、女性ホルモンの急激な減少とデリケートゾーンのにおいは切っても切れない関係です。つまり、女性ホルモンを補う処置をすれば、エストロゲンの減少による腟まわりの乾燥や、腟の自浄作用を取り戻すことができ、においのお悩みも軽減する可能性が高いのです。

そのための選択肢として、まず挙げたいのがホルモン補充療法(HRT)です。ごく少量の女性ホルモンを補充して乱れたホルモンを安定させる治療法で、補充の方法は、飲む、貼る(シールタイプ)、腕に塗る、腟に入れる(腟剤)など、さまざま。デリケートゾーンのお悩みだけでなく、ホットフラッシュや頭痛、イライラ、うつなど更年期特有のさまざまな心身の不調にも効果が期待でき、健康保険が適用されます。

もっと気軽に!というのであれば、女性ホルモンに似た働きを持つ大豆由来の「エクオール」のサプリメントを試してみるのもいいでしょう。また、腟内の自浄作用に着目するのであれば、腟内環境に働きかける乳酸菌サプリメントや腟剤、乳酸菌を含んだ腟用保湿剤などもあります。
また、腟粘膜のコラーゲン再生を刺激する治療レーザーでうるおいを取り戻す方法も。ただし、健康保険適用外で、効果を持続させるためには、定期的に施術を受ける必要があります。

いまや、女性のセンシティブな悩みを解決してくれるフェムケア製品やフェムテック施術はバリエーション豊富です。ただし、繊細な部位なので、信頼できる製品や施術を選び、正しく利用することが大切。婦人科や女性泌尿器科外来、ウロギネ外来(泌尿器科と婦人科の境界領域を診療する外来)などで医師のアドバイスのもと、利用することをおすすめします。

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産婦人科医師
石山 尚子 先生
対馬ルリ子ライフクリニック銀座院長

日本産婦人科学会専門医。対馬ルリ子ライフクリニック銀座勤務。女性がより快適に生活するための治療や対処法、セルフケアのアドバイスをわかりやすい言葉で丁寧に、を信条にされる女性医療(ウィメンズヘルス)のスペシャリスト。

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女性ウロケアのスペシャリスト

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女性泌尿器科医師
佐藤 亜耶 先生
自由が丘ウロケアクリニック院長

日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。以降、関連病院で診療経験を積み、2019年に女性泌尿器科・小児泌尿器科に特化した自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。

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