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お悩み相談室 Q&A
<回答したスペシャリスト>
産婦人科医師・石山尚子先生
おりものの量は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量と比例します。月経周期の排卵期や妊娠中におりものが増えるのも、エストロゲンの分泌量が増えるからです。
急におりものが増えたのは、エストロゲンの分泌量が増えたからかもしれません。更年期を迎える40代~50代は、女性ホルモンが乱高下しながら急激に減少する時期です。ホルモンのゆらぎによって一時的にエストロゲンの分泌が増え、おりものの量が増えることもあるでしょう。ただ、更年期全体を通してみると、エストロゲンは減少してゼロに近づいていき、おりものも減少していく傾向にあります。
一方、40代頃から骨盤底筋のゆるみなどに起因する尿もれが起こりやすいのも事実。尿もれか、おりものかを見分けるヒントは、においやショーツがぬれるタイミングにあります。
くしゃみなど腹圧をかけたときにショーツがぬれる、強い尿意が起きたときにショーツがぬれるといった場合は、尿もれの可能性が高いですが、どちらも当てはまらない場合は、おりものだと推測できます。正常なおりものは弱酸性なので、少し酸っぱいにおいがします。
おりものが、ショーツや衣類につくのが気になるようでしたら、おりものシート、おりもの用の布ナプキンなどを使用してみてはいかがでしょうか。最近ではさまざまなフェムケア用品があります。店頭で買うのが恥ずかしいようであればネットで購入することもできます。
おりものシートには、おりもの以外に軽い尿もれにも対応しているタイプもあります。自分の状態に合ったものを使用することで、衣類にしみる心配や気になるにおいも解消されるでしょう。QOL(生活の質)を下げないことが大切です。
感染症などによって腟内に炎症が起き、おりものが増えることもあります。エストロゲンの分泌が激減する更年期は、それまで腟内環境を良好に保ってくれていた乳酸菌も減少し、悪玉菌が侵入・繁殖しやすくなります。その結果、炎症が起こることも。おりものの色に変化はなく、ただ量が増えた場合、「カンジダ腟炎」や「細菌性腟症」の可能性もあります。
カンジダ腟炎や細菌性腟症が疑われる場合は、婦人科を受診して治療しましょう。
■カンジダ腟炎とは?
カンジダは真菌というカビの一種ですが、腟の中にいる常在菌で普段は悪さをしません。しかし、この菌が増殖すると炎症を起こすことがあります。カンジダ腟炎になると、かゆみをともなうことが多いのですが、かゆみはなく、ただおりものが増える場合もあります。
■細菌性腟症とは?
腟内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増えることによって起こる腟感染症です。おりものが増え、生臭いにおいがする場合もあります。
エストロゲンの分泌量がゼロに近づくにつれ、デリケートゾーンは潤いを失い、乾燥していきます。乾燥が進み、腟が萎縮して腟壁が薄くなり、荒れている状態が「GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)」です。閉経後の女性の約半数がなっているとも言われ、GSMになると、性交痛、頻尿、尿もれ、おりものの増加や異臭などの症状が出ることもあります。
GSMが疑われる場合は、婦人科を受診しましょう。内服薬や腟剤などで治療することができます。
※GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)とは?
閉経後の女性ホルモン低下に伴う、外陰部・腟の萎縮変化およびそれに伴う不快な身体症状のこと。腟の乾燥感・かゆみ・灼熱感、いやなにおいのおりもの、性交関連症状として性交時の痛み、潤いの不足のほか、排尿に関する症状としてトイレが近い、夜中に何度もトイレに行きたくて起きる、尿もれなどがある。萎縮性腟炎(老人性腟炎)と診断される場合もあり。
産婦人科医師
石山 尚子 先生
対馬ルリ子ライフクリニック銀座院長
日本産婦人科学会専門医。対馬ルリ子ライフクリニック銀座勤務。女性がより快適に生活するための治療や対処法、セルフケアのアドバイスをわかりやすい言葉で丁寧に、を信条にされる女性医療(ウィメンズヘルス)のスペシャリスト。
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