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お悩み相談室 Q&A
<回答したスペシャリスト>
産婦人科医師・石山尚子先生
子宮筋腫は良性の腫瘍で、30代以降女性の2~3割は、子宮筋腫があると言われています。ただ、子宮筋腫があるかどうかは、超音波検査をしないとわからないので、「本人は気づいていないけど、実は子宮筋腫がある」という人も。筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなるので、閉経するまで年齢と共に増えて大きくなっていきます。50代くらいになると、女性の半数以上は子宮筋腫があるような印象です。
子宮筋腫が尿もれに影響するかどうかは、筋腫の位置と大きさによります。筋腫のできる場所や大きさは実にさまざま。また、複数個できることも多く、何十個も筋腫がある人もめずらしくありません。膀胱に近い位置に大きな筋腫があったり、複数個筋腫があったりすれば、膀胱を圧迫することになるので、尿を貯められる量も減るでしょう。そのため、頻尿や尿もれが起こる人もいるかもしれません。
子宮筋腫のできる場所は、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)など、実にさまざま。
ただし、尿もれが起こる原因は、それだけではありません。骨盤底筋のゆるみや過活動膀胱(膀胱が過剰に活動する状態)といった原因も考えられます。ご相談者のコメントには「妊娠・出産の経験もないのに」とありますが、妊娠・出産経験がなくても骨盤底筋は加齢とともにゆるみやすくなっていきます。
さらに、更年期以降は過活動膀胱になる人も増えます。原因は1つとは限らず、いくつもの体の変化が重なって、尿もれになる人もいます。
子宮筋腫の位置と大きさによっては、膀胱が圧迫されることも。
子宮筋腫はあるけれど、気になるのは尿もれだけといった場合は、子宮筋腫の治療ではなく骨盤底筋を鍛える体操をおすすめします。なぜなら、子宮筋腫が尿もれの原因とは一概に言えないし、仮に治療で筋腫が小さくなったとしても、尿もれが改善するとは限らないからです。
腟と肛門を「締める」「ゆるめる」を繰り返すのが基本型。骨盤底筋のゆるみから起こる腹圧性尿失禁の改善だけでなく、過活動膀胱による切迫性尿失禁の改善にも効果が期待できる(切迫性尿失禁の場合は、併せて薬物療法を行うこともある)。
ところで、通常は子宮筋腫が見つかっても、無症状でサイズが大きくない場合は経過観察となります。一方、日常生活に支障をきたすような症状がある場合は、治療の対象に。その治療も、女性の年齢(妊娠を希望するかどうか、閉経が近いか、など)や症状、筋腫の状態によって、さまざま。例えば、妊娠を望んでいて筋腫が不妊の原因と考えられる場合は筋腫を取り除く手術を行うことも。
また、症状が貧血だったら鉄剤を処方する対処療法だったり、過多月経だったら女性ホルモンに働きかけて月経量をコントロールする治療を行ったりすることもあります。子宮筋腫への対処法は、患者さんそれぞれの状況に応じて多数のバリエーションがあります。まずは、婦人科の主治医と相談してみてください。そのときに、尿もれについても相談してみるといいでしょう。
子宮筋腫。例えば、こんな症状は治療の対象に
「子宮筋腫が尿もれの原因だとしたら、閉経後に筋腫が小さくなれば尿もれは治まるの?」と思うかもしれませんが、決してそうとは言えません。確かに、閉経して女性ホルモンの分泌が微量になれば、子宮筋腫はある程度小さくなるので、筋腫による膀胱圧迫の可能性は減るでしょう。しかし、その一方で、加齢とともに骨盤底筋がゆるんだり、過活動膀胱になったりする率は増えていきます。
尿もれが気になりだしたら、「閉経するまで様子をみよう」なんて思わずに、ただちに骨盤底筋トレーニング(体操)を始めましょう。また、尿もれが改善するまでは、吸水ケア用品(吸水ライナーや吸水パッド、吸水ショーツなど)を利用して、不意の尿もれへの対策を講じるのもQOL(生活の質)を守るための1つの方法です。
尿もれケア専用品(吸水ライナー)を、おまもり代わりに着けておくと安心です。
骨盤底筋トレーニング(体操)を数カ月続けても尿もれ症状に変化がない、尿もれ症状が重くて日常生活に支障をきたす、強い尿意を伴う尿もれが起こるなどの場合は、一度、婦人科とともに女性泌尿器科やウロギネ外来(泌尿器科と婦人科の境界領域を診療する外来)などの専門の医療機関を受診してみることをおすすめします。
産婦人科医師
石山 尚子 先生
対馬ルリ子ライフクリニック銀座院長
日本産婦人科学会専門医。対馬ルリ子ライフクリニック銀座勤務。女性がより快適に生活するための治療や対処法、セルフケアのアドバイスをわかりやすい言葉で丁寧に、を信条にされる女性医療(ウィメンズヘルス)のスペシャリスト。
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