女性泌尿器科医師・佐藤亜耶先生
(自由が丘ウロケアクリニック院長)
40代以上の女性の約2人に1人*が尿もれを経験… その現状に応えるように、吸水ナプキンなど、尿もれケア専用品は、近年かなり充実してきました。見た目が変わらない生理用ナプキンとの違いは何か?心配を減らしてくれる尿もれケア専用品の正しい知識をお伝えします。
*40~70代女性 1,370人(2021年5月 花王調べ)
尿もれが心配だからと、「とりあえず、おりものシートや生理用ナプキンをつけておこう」と思っていませんか? FemCareLAB読者を対象に行ったアンケートでも、尿もれ対策として、おりものシートや生理用ナプキンで代用している人は過半数を超えていました。しかし、見た目が似ていても、機能はまったく違います。
生理用ナプキンは、粘度のある経血が少しずつ出続けることを想定し、経血がデリケートゾーンへ広がってしまわないように、体にフィットして吸収する機能があります。一方、吸水ナプキンなどの尿もれケア専用品は、尿のようにさらさらした液体が一度にある程度出ても大丈夫なように、それらをしっかり受けとめて、素早く吸い込む機能があります。また、尿独特のニオイを消臭する機能が備わったものも。
このような機能の違いがあるので、尿もれ対策のつもりで生理用ナプキンを使うと、尿を吸収しきれずに横もれや逆戻りしたり、ベタベタして肌トラブルの原因になったりすることがあるのです。
尿もれには「尿もれ専用品」をおすすめします
また、ちょこっとモレには、おりものと尿もれの両方に対応可能なおりものシートもありますが、本格的な尿もれには、やはり吸水ケア専用品がおすすめです。薄さやサイズがほとんど変わらなくても、吸水力が高いので、液戻りしにくく、さらさらとした肌触りが持続するようにも設計されています。
吸水ナプキンは、吸水性が高く、液戻りしにくい構造。
※当社吸水ナプキン。おりもの専用シート比
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いざ吸水ナプキンなどの尿もれケア専用品を選ぼうと思っても、どれを選べばいいのかわからない…という女性は多いようです。商品のパッケージには、15cc、30㏄、50㏄など吸水量の目安が記載されています。
小さなシミができる程度の「ちょこっとモレ」が気になる人は、吸水量が10ccくらいまでものを。それ以上の尿もれ量がある人は、吸水量がより多いものがおすすめです。ある程度まとまった量の尿もれがある場合は、吸水量が80~100㏄前後のものを選ぶとよいでしょう。
■ 吸水量の少ないものから試す
初めて尿もれケア専用品を購入するとき、「大は小を兼ねるのだから、とにかく吸水量の多いものを選べばいいだろう」と考えるかもしれませんが、吸水量の少ないものから試してみることをおすすめします。 吸水量の多いナプキンを交換せずに長時間つけていれば、デリケートゾーンは蒸れやすくなり、細菌繁殖にもつながりかねません。1回の尿もれ量に合った吸水量のものを選び、1日に何度か交換するのが理想です。自分の1回あたりの尿もれ量に近そうな商品を試し、それで不十分であれば、1つ上の吸水量を試してみましょう。
吸水量は細かく設定されています
■ 自分の肌に合った製品を選ぶ
尿もれケア専用品はデリケートゾーンに直接触れるものなので、できるだけ肌にやさしい素材を選ぶことも大切です。むれにくいバックシートを使用し、通気性の高さにこだわった製品も出ています。自分の肌に合ったものを探してみましょう。
吸水ケア専用品に「〇cc」と記載されていますが、いったいどれくらい尿もれしているのか、自分ではわかりづらいですよね。泌尿器科の尿もれ検査では、患者さんに吸水ナプキンを一定時間つけてもらい、使用前と使用後のナプキンの重さの差(1g=1ccで計算)から尿もれ量をはかることもあります。
そこまでしなくても、おおよその目安を知りたい場合に役立つのが、製品パッケージに記載された尿もれの様子を示す表現です。例えば、「たまにある“じわ~っ”」「ときどきの“ぽたた”」「ふいな“どっ”」など。自分の尿もれ状態に近いものから試してみましょう。
吸水ケア用品を選ぶための状態の目安
ご自身の体感から、ぴったりの吸水量を
■ 交換はトイレの度に、が理想的
おりもの、経血(生理)、尿…すべてに言えることですが、ナプキンなどはトイレに行くたびなど、こまめに交換することが大切です。表面的には汚れていなくても、かなりの汗や腟の分泌物で湿っている状態なので、そのままにしておくと、ムレ・かぶれの原因になります。
尿もれケア専用品の場合、尿もれしたらアウターに影響が出ていなくても交換するのが理想的。そのまま長時間放っておくと細菌繁殖につながり、かぶれや膀胱炎を招くこともあります。
■ 必要なら毎日使っても大丈夫
生理用品は月経時しか使用しませんが、尿もれはいつ起こるかわかりません。とくに、トイレになかなか行けない仕事や、尿もれの回数や量が多いなど、不安の大きい人にとっては、尿もれケア専用品は「毎日使う必需品」となります。
メーカー側もその点を踏まえて、毎日使用しても気にならない自然なつけ心地を意識して製品開発をしていますので、必要に応じて毎日使っても構いません。ただし、1日中使用するのではなく、外出時のみ。家にいるときは使用しないなど、メリハリをつけて使いこなしましょう。
■ 体調や時期、イベントに応じて上手に使い分けを
尿もれには、腹圧がかかったときにもれてしまう「腹圧性尿失禁」、突然強い尿意が起き、トイレに行くまで我慢できずにもらしてしまう「切迫性尿失禁」、腹圧性と切迫性の両方の症状がある「混合性尿失禁」の3タイプがあります。
腹圧性尿失禁の場合、花粉症の季節にくしゃみで尿もれしやすくなる人もいます。一方、切迫性尿失禁や混合性尿失禁の場合、寒い季節になると尿もれしやすくなる人も。このように、尿もれは季節や体調などで症状が出たり治まったりすることもよくあります。花粉症の人が花粉シーズンだけ薬を飲むような感覚で、尿もれしやすい時期だけ尿もれケア専用品を使うのも、ストレスを防いで生活を楽しむコツと言えるでしょう。
また、普段は吸水量が少なめの吸水ケア品を使用していても、スポーツをするときや、旅行や仕事でトイレにこまめに行けないなど、尿もれの不安が大きいときは、吸水量の多いものを利用するなど、状況に応じて使用する製品を使い分けることもおすすめです。
吸水ナプキンは状況に応じて「吸水量」で使い分けると快適です
腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁にかかわらず、尿もれ症状を軽減するために欠かせないのが、「骨盤底筋を鍛える」ことです。
尿もれの不安解消のために吸水ナプキンを使いながら、骨盤底筋トレーニングで鍛えることも習慣に。
尿もれの対策は、骨盤底筋群を鍛えることが大切です
加齢にともない骨盤底筋群はゆるみやすくなっていきます。トレーニングによって強化することができ、人によってはトレーニング開始後1カ月後くらいで、通常は2~3カ月で効果が出てくることが多いでしょう。
尿もれ症状が治まってきたとしても、骨盤底筋トレーニングはコツコツと継続することが大事です。吸水ナプキンなどの尿もれケア専用品を賢く利用しつつ、尿もれ症状改善のために骨盤底筋を鍛えましょう!
女性泌尿器科医師
佐藤 亜耶 先生
自由が丘ウロケアクリニック院長
日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。以降、関連病院で診療経験を積み、2019年に女性泌尿器科・小児泌尿器科に特化した自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。
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