
学生時代に学んだごみ問題や環境教育を広くアナウンスしたいという思いから、マスコミ業界に入ったという根本美緒さん。「でも、気象予報士になるとは想像していなかったので、まさかの人生です」と笑います。現在はもうじき1歳4カ月になる愛娘の子育てに奮闘しながら、健康情報番組や料理番組に出演したり、“出前授業”で子どもたちに環境問題をわかりやすく伝える活動を続けています。そんな根本さんと話をするうちにわかってきたのは、彼女のエコな視点はご近所にも注がれているということ。身近な人や物を大事にすることから始まるという、根本流エコライフについて語っていただきました。

私が環境問題に強く関心を抱いたのは大学3年生の時。ちょうど、500mlのペットボトルが出始めた頃で、「ただでさえごみの捨て場所が問題になっているのに、ペットボトルの容器までごみになったら今後のごみ処理はどうなるの?」という漠然とした不安を抱いたのが始まりです。そこで、経済学部でしたから、「この問題に経済的なインセンティブを設けたらどうなるのか?」という発想から、ペットボトルのデポジット制について考察しました。
たとえば、160円でペットボトル飲料を買い、飲み終わった空ボトルをお店に返すとした場合、返金額がいくらならリサイクル率は上がるのかとか・・・。昔、ジュースやビールはびん入りで、酒屋さんに空きびんを持っていくと1本につき10円を返してくれたりしましたよね、あれと同じです。びんは各家庭で処理しにくいから酒屋さんに返すしかなかったけれど、ペットボトルなら家庭ごみに混ぜて捨てることもできてしまう。そんなふうになってしまわないよう、ペットボトルもデポジット制にしてはどうかと考えたわけです。でも、環境問題に関心がある人なら返金額が1円でも戻すでしょうが、一方で、返金額が15円でも面倒がる人はいるかもしれない。ここで、要は、金額ではなく“意識の高さ”だと気づきました。こうした意識を培うのは教育です。それで卒論のテーマを「環境教育」にしたんです。論文の中では、私なりに考えた環境教育の具体例も提案しました。それは、ふだんの学校生活において自然とリサイクルに関心が持てるよう、校内にデポジット制の自動販売機を設置するというもので、まずは母校に設置を働きかけました。この提案は私の卒業後もゼミの後輩が引き継いでくれたんですが、学生の微力では、大きな組織を動かすことはなかなかむずかしいようでした。
私が学んだゼミの先生からは、「机上の空論ではダメだ」「理想はいくらでも言える、自分の足で歩け」ということを徹底的に叩き込まれました。在学中には古紙回収車にも乗せてもらい、私も回収業者さんと一緒にマイクでアナウンスしながら1日回り、「結構集まったね~」とのんきに達成感を感じたりしていたんです。でも、これを計算してみたら、たったの数千円で、絶句しましたね。これを生業にすることの大変さを思い知りました。その時私たちにコロッケをふるまってくださって、なんだかありがたいような、申しわけないような気持ちになった記憶があります。そういった体験があるので、今もその方がとても元気に回収の仕事を続けられていることを、とても尊敬しています。「みんなでリサイクルをしましょう」と言うのは簡単だけど、社会のしくみの中で仕事として確立するのは困難を極める。本気でリサイクルをやっていくなら、この国全体の意識を高くするように改革していかなければ、と思いました。
それで私は、環境問題を広くアナウンスできるのは、報道機関しかないと考え、報道機関の道に進みました。学校や家庭での教えきれないほどの環境問題をフォローできるのはマスコミしかない、と思ったからです。

念願かなって東北放送に就職すると、「君の最初の仕事はお天気だけど、大学で環境を学んだなら、気象にも詳しいでしょ?」と言われ、さらにアナウンス部長から「低気圧を説明できますか?」と聞かれて、困ってしまいました。気象に関する知識がまったくなかったからです。その時に、ゴミも気象も同じ環境問題だということにはたと気づきました。自分の視野がいかに狭かったかを思い知り、知識を増やすべく奮起して気象予報士の資格を取得しました。おかげで、単なるキャスターではなく、気象予報ができるお天気キャスター、という道が拓けました。
でも、気象予報士として番組に出演したての頃は自分の予報に自信が持てず、気象庁の予報をただお伝えしていただけでした。そんな時、航空気象を長年やってこられた大先輩の予報士さんに、「予報士制度はそもそも予報士自身の意見を言うためにつくられたんですよ。だからどんと自分の意見を言いなさい」と言われ、吹っ切れたんです。自分の感覚を信じ、「他局ではこう言っていますが、私はこう思います」とカメラの前で言えるようになりました。ディレクターはよく心配していましたが(苦笑)、徐々にそんな私の予報に好感を持ってくださる出演者や視聴者の方も増えていったんです。
予期せず“お天気おねえさん”になり、子どもたちに顔を覚えてもらいましたから、「これはチャンス!」と、ずっとやりたかった“出前授業”も始めました。地域の小中学校に出かけて、お天気や環境の授業をするもので、教育委員会にもご協力いただき、これまでたくさんの学校にうかがいましたが、子どもたちの反応はこの数年で明らかに変化していますね。
2005年のスタート時には「3Rを知っていますか?」とたずねてもポカンとしていたのに、今では「Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)!」と元気な答えが返ってきます。エネルギー問題の意識の高まりも実感します。震災があった今だからこそ、子どもと大人が一緒になって環境問題を考えるのがいいのかもしれませんね。
私は、気象よりも先に環境問題を学んだこともあって、環境と気象を結びつけて考えることが結構あります。個人的な意見ですが、私たち人間の生活が地球温暖化の一因になっていることは間違いなくて、突発的な大雨などの異常気象を引き起こしやすくなったり、台風が強い勢力を保ったまま上陸したりすることが増えてきていますし、さまざまな動植物の生態系にも影響を及ぼしている。それなのに、過去の私たちには危機感が足りませんでした。人々の環境への意識が高まってきている今なら、人の命と生活を守るための積極的な取り組みを、日本から世界に向けて発信できるのではないかと思うんです。だからこそ、報道に関わる者として、わかりやすい情報を丁寧に発信しなければならないと思っているんです。私自身は、大したことはできないかもしれませんが、気象予報士としても何かお役に立てたらいいなと思っています。日本初の“お天気おばあちゃん”になるまで(笑)。

昨年長女を出産したんですが、子どもをもつとものの見方が変わりますね!たとえば、子どもと公園に行く時、なるべく芝生のある公園を探そうとするんです。以前は砂利の公園でもぜんぜん気にならなかったけれど、いざ自分の子どもを遊ばせるとなると、砂利では転んでケガをしやすいし、汚れるし、拾って口に入れてしまう危険性もある。芝生ならちょっとくらい転んでも平気だし、きれいなお花も咲いているし、虫もやってきて、自然を身近に見せてあげられるんです。自然があふれるきれいな公園には人も集まります。治安もよくなっていきます。これは調べてみたら、区と町民が協力して公園を美しく保つ、アダプトプログラムという制度のおかげだったんです。熱心な町会長さんがいらっしゃる地域ほど、きれいな公園が多いこともわかりました。町会長さんの呼びかけで地域のみなさんが協力するから、公園の管理もゆきとどき、たとえば、災害時にはかまどとして使える防災ベンチを設けるといった取り組みも活発です。町全体がどんどんよくなっていって、そんな町なら、みんなが子育てしたいと思いますよね。
最近よく行く公園にはハーブ畑があって、町会長さんが水やりなどの世話をされています。実はこの公園のハーブ、近所のイタリアンレストランと約束ができていて、お店の料理に使われているそうです。すごいですよね、これぞ地産地消!私も家庭菜園をやるんですが、ここのハーブ畑を娘と見に行っては、「上手に育てられているなぁ」と感心します。今後、日本の町では省エネのインフラや次世代送電網が整備されるなど、「スマートコミュニティ」づくりが進んでいくでしょうが、そのしくみは、子どもたちにもわかりやすいように見せてあげてほしいと思います。たとえば、公園には、太陽光発電で動く遊具があったり、電気自動車の充電器も設置してあったり・・・。それを地域の人々で教え合い、ふれあって、子どもたちは学んでいく。そんな町ぐるみで環境教育ができるようになれば理想的ですね!
私が子どもに一番に伝えたいのは、物を大事にすること、人を大事にすること。それは、何かを大事に思う気持ちは環境への意識も高めると思うから。手にふれられる身近な物を、いつも一緒にいる身近な人を、大事にできる、こころ豊かなエコライフを送りたいと思います。


たとえば、子育てしやすいバリアフリーな住環境を考えた時、バリアフリーって段差がないだけじゃなくて、子どもが安心して遊べる芝生の公園や、あたたかな近所づき合いだったりするんですよね。もちろん、子育てに限らずすべての人が快適に暮らすために“地元愛”はとっても大事だと思う。私が下町育ちのせいでもありますが・・・(笑)


- 1979年東京都中央区佃島出身。慶応義塾大学経済学部で環境問題を専攻し、卒論のテーマは「環境教育」。卒業後、東北放送アナウンサーとなり、気象予報士の資格を獲得。2005~2010年には東京のテレビ局の朝の人気情報番組でお天気おねえさんを担当し、人気となる。2005年から地域の小中学校に“出前授業”と称した環境問題の出張講演を開始。現在はフリーキャスターとして健康情報番組や料理番組にも出演。環境省が主催する容器包装廃棄物排出抑制推進委員(3R推進マスター)を務め、2010年1月には環境省の国民運動『チャレンジ25キャンペーン』のメッセンジャーに任命される。2009年結婚、2010年長女出産。公私ともに充実した“エコな日々”を送っている。

