(大気汚染物質〔汚れ〕など)
身体の最外層にある肌は、常にさまざまな環境の影響を受けています。肌に外から影響を与えるという意味では、近年、日本のみならず中国、欧米において、大気汚染などに対する意識が高まっています。また昨今、世界中の多くの人々が日常的にマスクをして生活する中、マスクを着用すると肌の調子が悪いといった声も多く聞かれ、また、女性の生理や性ホルモンの影響で一般的に皮脂の分泌量が変化するなど、皮脂で悩む場面もあることが知られています。
ファインファイバー膜は、花粉やほこり、PM2.5などの大気汚染物質(汚れ)が直接肌につくことを防いだり、摩擦などの物理的刺激から肌を保護したりする機能があること、また同時に、皮脂を膜中に捕捉する機能があります。膜に付着した汚れや過剰な皮脂は、はがすことで簡単に取り除くことが可能です。
ファインファイバー膜は極細繊維が重なりあった立体構造をしており、多数の細かな隙間があります。この細かな隙間(図1に赤で表示)の大きさ(細孔径分布)をポロシメーターを用いて測定。その結果、ファインファイバー膜の細穴径は概算で1.8ミクロン(μm)程度、大気汚染物質(汚れ)の大きさと比較すると、PM2.5を捕捉可能なサイズであることが確認できました。
モデル皮膚上にファインファイバー膜をつくり、その上に、花粉、塵・ほこり、黒煙、PM2.5などの大気汚染物質(汚れ)を付着させ電子顕微鏡で観察しました。得られた画像から、これらの大気汚染物質はファインファイバー膜のすき間または膜上に保持されていることを確認しました(図3)。また、これらの微粒子(汚れ)が付着した膜をはがすと、モデル皮膚上から大気汚染物質をほとんど除去することができました(動画、図4)。このことから、肌に形成したファインファイバー膜はフィルターのように働き、さまざまな汚れ物質を捕捉して肌に付着させない役割を果たすことがわかりました。
ファインファイバー膜を形成したときの、物理的刺激(こすれや摩擦など)からの保護効果について確認しました。20~30代の男性および女性計5名を対象に、肌上に一定時間残る製剤を塗布したあと、片方の頬にのみファインファイバー膜を形成し、4時間程度マスクを着用してもらいました。マスク着用後すぐと、4時間後、肌上に残った製剤とファインファイバー膜の残存状態を両方の頬で比較し、こすれの程度を可視化、定量化しました。
その結果、ファインファイバー膜をつけていない側の頬は、製剤による塗膜の大部分がなくなっていたのに対し、ファインファイバーをつけた側の頬は、4時間経過後にマスクを外した際にも、ファインファイバー膜と製剤が肌に残っていることが確認できました(図5)。このことから、肌に形成したファインファイバー膜は、製剤を保持するだけでなく、この膜によってマスクのこすれや摩擦の影響を少なくさせることができると考えられます。
ファインファイバー膜は、多孔質の構造により強い毛管力が働いていることがこれまでの検討からわかっています。そこで、膜の内側には肌から出る皮脂が吸着されているのではないかと考え、検証を行ないました。
20~50代の女性29名の片側の頬にファインファイバー膜をのせ、4時間経過後に、両頬の素肌をシガレットペーパーで拭って皮脂を回収し、皮脂量を液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)で定量しました。その結果、4時間後には、ファインファイバーを使っていない頬に皮脂が多く、ファインファイバーを使用した側は少ないことを確認しました。一方で、肌からはがしたファインファイバー膜を同様にLC/MSで定量したところ、分泌された皮脂の約70%は、ファインファイバーの膜に移行していたことがわかりました(図6、7)。