ファインファイバーは、花王が開発した“繊維を肌に直接吹き付ける技術”を採用しています。「エレクトロスピニング法」の応用で、デバイスにセットした紡糸液(ポリマー溶液)が直径1μm未満(髪の毛の約100分の1の細さ)の極細繊維状に引き出され、肌表面でまたたく間に重なり合います。
紡ぎ出された糸は一本につながっており糸自身が静電気を帯びているため、空気中に繊維が漂うことはなく、すみやかに肌に付着します。
ファインファイバーの膜を拡大すると、一本の極細繊維が重なり合った立体構造をしています。この積層型の極薄膜の90%は“穴”(すきま)で、この多孔質の構造により強い「毛管力」がはたらき、併用する製剤などの液体を吸い上げて保持することができます。
また、繊維のすき間から水蒸気を通すため、肌を完全に閉塞することなく、適度な透湿性も保つことができます。
「電界紡糸法」とも呼ばれるエレクトロスピニング法は、マスクなどの不織布の製造に用いられている静電気の引力を利用した技術です。プラスの電気を帯びた高分子溶液を、マイナスの電気を帯びた対象物(ファインファイバーの場合は肌)の表面に向けて噴射することで、溶液があたかも蚕が繭を紡ぐように糸状に引き伸ばしながら繊維化され、対象物の表面で幾層にも重なり合って膜を形成します。
ファインファイバーは一般的な不織布とは異なり、肌に自然になじみ、皮膚上に吹きつけると皮膚の凹凸が見えにくくなります。この極薄膜は、軽く、やわらかく、自然で、さらにその優れた毛管力により、さまざまな製剤を、肌表面にしっかりと保持・均一化するとともに、適度な透湿性を保つことができます。
一般的な不織布の例としてマスクに使用される繊維(左)とファインファイバー(右)との比較。
肌に見立てた人工皮革との接触面を拡大して撮影。
ファインファイバー膜の方が、密着性が高く、毛管力により製剤を均一に保持することができる。
“ふち”に向かって薄くなるエッジレス構造(右図)により、膜と肌との段差が極めて少なくなっています。肌との境目が見えにくいだけでなく、はがれにくく見た目も自然です。
曲げ伸ばしの多い部位にも自然になじみ、からだの3次元形状に対応して皮膚の動きに追従します。また、表面をなめらかにみせる性質もあります。
ティッシュが水を吸い上げるよりも早く製剤を吸い込み、重力や上下左右に関係なく膜全体に均一に広がります。
A.おむつや生理用品などには、古くから不織布(繊維を織らずに絡み合わせたシート)が使用されています。花王の繊維研究の中でも繊維が細くなればなるほど、シートのやわらかさや感触、密着性というさまざまな性能が桁違いに変わることはわかっていましたが、反面、非常に薄く扱うのが難しい側面もありました。誰でも簡便に扱える方法として、「肌に直接吹き付けることができないか」という新たな発想をきっかけに、工場で使用されている大きな機器から、手のひらサイズの小型デバイスを開発し、肌の上に直接紡糸して膜を形成することを可能にしてファインファイバー技術が誕生しました。
A.ファインファイバーは、肌に適用することを想定しているため、水や汗、皮脂などに強い高分子(ポリマー)を使用しています。一般的に、この技術(エレクトロスピニング法)自体は、水に溶けやすいもの、水に溶けにくいものなど、用途に応じてさまざまな原料から繊維を作ることが可能です。
A.ファインファイバーは静電気の力で糸を紡ぐ技術(エレクトロスピニング法)を応用しています。この技術で作られた糸は、糸自身が静電気を帯びた(帯電)状態のため、電気を通しやすい対象物を選んで付着します。水分を多く持つ人体(肌)は電気を通しやすいため、肌に吸い付くように付着します。
A.これまでの観察結果からもファインファイバーは1本の糸が連続して繋がっていることが確認されています。何らかの原因により途中で切れた場合でも、繊維自身が帯電していますので、浮遊し続けることはなく、すみやかに対象物(肌)に付着します。
A.ファインファイバー膜は多孔質で、約90%が空隙(すきま)になっているため、皮膚を閉塞しすぎることはありません。また、極細繊維からできているため非常にやわらかく、肌を覆っても肌の柔軟性は損ねません。
A.ファインファイバー膜は、肌と一体化したように見えますが、剥がすことができるユニークな技術です。汗や水、皮脂など日常の生活場面では密着性を持続できるよう工夫していますが、不要な場面では膜の端から剥がすことで簡単に除去することができます。
A.複数の特許を出願済みで、そのうちのいくつかはすでに権利化されています。
A.将来的には、レーザー治療後のケアや、損傷を伴う皮膚疾患に対しての治療貢献など医療領域への応用も視野に入れています。
また、痣(あざ)や傷あとなどを隠すカバーメイクなど、生活の質(QOL:Quality of life)の向上につながるケアの分野にも貢献したいと考えています。